2017年6月24日土曜日

結婚は否定するが,子どもは欲しい

 前回は,婚外子の国際比較をしました。日本ではごくわずかですが,諸外国はさにあらず。フランスやスウェーデンでは,生まれてくる子どもの半分以上が婚外子です。

 さらに,各国の婚外子比率は合計特殊出生率とプラスの相関関係にあることも分かりました。婚外出産という選択肢がある国ほど,出生率が高い。こんな傾向です。

 日本もこの方向に動けば,少子化にも歯止めがかかるのではないか。「旦那はいらんが,子どもはほしい」。最近では,こういう女性も増えているでしょうから。

 では実際,こういう女性は何%くらいいるのか。その量的規模を明らかにしたい。こういう思いで,いろいろな調査データを探索してみたのですが,内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年)で,目的のデータを作れることを知りました。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html

 この調査では,13~29歳の若者に対し,「結婚(事実婚含む)についてどう思うか」(Q19),「子どもは欲しいか」(Q22)と尋ねています。この2つの回答をクロスすることで,上記の考えに近い女性の数を取り出すことができます。

 以下に掲げるのは,日本の20代未婚女性のデータで作成したクロス表です。本調査の個票データから,独自に集計したものです。


 双方の設問に有効回答を寄せた,20代の未婚女性は合計で192人。回答の選択肢は多岐にわたりますが,ア)結婚を肯定するか否か,イ)子が欲しいか否かに着眼して,4つのタイプに分けることができます(点線)。

 これによると,右上(B×a)のゾーンに入るのが,「結婚は否定するが,子は欲しい」という女性であることになります。その数は,3+23+9=35人で,全体(192人)に占める割合は18.2%です。およそ6人に1人。結構いるじゃないですか。

 これは日本の20代未婚女性のデータですが,他国はどうでしょう。他の調査対象国(6か国)についても,20代の未婚女性のサンプルを取り出し,同じデータを作ってみました。

 下図は,各国の結果のモザイク図で表したものです。サンプル全体を正方形に見立て,上表と同じく,結婚観(A-B)と出産願望の有無(a-b)で区分けしました。「瑞」は,スウェーデンをさします。


 色付き(B×a)が「結婚は否定するが,子どもは欲しい」という女性です。その比重は日本は18.2%ですが,欧米はもっと高くなっています。アメリカは36.4%,フランスは46.9%,スウェーデンに至っては62.0%です。

 なるほど,欧米で婚外子が多いのも頷けますね。結婚と出産をセットで考える,日本の常識は普遍的でも何でもありません。

 横軸に注意すると,日本では4分の3が結婚を肯定していますが(A),スウェーデンでは逆に4分の3が結婚を否定しています(B)。とはいえ,結婚否定派でも6割が子を望んでいる。この国では,結婚は否定するが(望まないが),子は欲しいという女性が大半なのです。こういう女性が不利益を被らないシステムになっていることは,婚外子の割合からもうかがえます。

 しかるに日本でも,20代未婚女性のうち,このタイプの女性が18.2%います。2015年の『国勢調査』によると,20代の未婚女性は442万5071人。この数に18.2%を乗じると,80万5363人となります。結婚と出産を切り離して考えている,20代女性の推定数です。結構な数ですね。

 2015年の我が国の出生数は100万5677人ですが(『人口動態統計』),上記の80万人あまりの女性が1~2人の子を産んだ場合,出生数は一気に倍増するこことになります。70年代初頭の第2次ベビーブームに匹敵する数です。

 結婚せずとも産める社会になったら,少子化はかなり改善されるであろうという,希望的な事実です。さしあたり,心理的障壁の低い事実婚のカップルに法的保護を与える,シングルの親への経済的支援を手厚くするなどの施策が考えられますが,出生数の大幅増という恩恵がもたらされるなら,そのコストは回収されて余りあるのでしょう。

 今回みたのは2013年の調査データですが,2020年,2030年には,先ほどの図のピンク色のゾーンがますます広がっていることは間違いありますまい。

2017年6月20日火曜日

婚外子の国際比較

 人生にはいくつかのステージがあり,それぞれを区切るイベントがあります。俗にいう「ライフ・イベント」ですが,学校卒業,就職,結婚,そして出産といったものが想起できるでしょう。

 これらは順不同でも構わないのですが,日本では寸分狂わず「①学校卒業→②就職→③結婚→④出産」というルートをたどることが期待されます。②と③が入れ替われば「定職もないのに…」と嫌味を言われ,③と④が逆さになれば「結婚してないのに…」と偏見を向けられる。

 しかしこれは日本に長く根付いた慣習によるもので,絶対ではありません。最近ではこれに囚われない人も増えているでしょうし,世界に目を転じれば,上記の①~④の順序があべこべな社会は数多くあります。

 「自国の今」を相対化する使命を負う社会学にとって,その様をデータで可視化するのは重要な仕事といえるでしょう。それをちょっとばかりやってみましょう。

 そうですねえ。では①よりも③を早く経験している人,つまり学生結婚している人の比率なんてどうでしょう。内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年)では,就学状況と配偶関係を問うています。これらをクロスすることで,目的のデータを作れます。下表は,20代前半の学生のサンプルを取り出し,結婚している者(事実婚含む)の割合を出したものです。


 日本は167人の学生サンプルのうち,結婚している人はゼロです。さもありなんですね。私も,こういう人は見たことがありません。お隣の韓国もごくわずかです。

 しかるに,ヨーロッパの諸国はさにあらず。独仏瑞では,結婚している学生の割合が2割を超えています。スウェーデンでは3人に1人です。

 多くは,法律婚とは異なる事実婚ですね。だからといって,何ら不利を被ることはありません。スウェーデンではサムボ法によって,事実婚(同棲)はれっきとした家族制度とみなされ,権利や保護が付与されます。言わずもがな,偏見が向けられることもありません。

 法律婚と違って簡単に解消できるので,言うなれば相性を見極める「お試し期間」といえましょうか。青年期は様々な試行錯誤をして,自己アイデンティティを確立する時期ですが,こういう制度もいいですね。

 このようなお国柄ですので,当然,婚外子も多くなっています。上記のイベントでいう③と④の順序がひっくり返る人なんてたくさんいます。というか,こちらのほうがマジョリティです。

 OECDの統計より,生まれてくる子どもの何%が婚外子かを国ごとに知ることができます。最新の2014年のデータをもとに,国際ランキングにすると以下のようになります。


 違うものですねえ。日本や韓国ではほんのわずかですが,中南米やヨーロッパでは半分以上という国が結構あります。

 中南米では男性が愛人を多く作ること(≒一夫多妻)や,レイプ被害といった事情もあるかと思いますが,北欧や西欧では事実婚が幅を利かせているためと思われます。フランスは56.7%,スウェーデンは54.6%が婚外子です。婚外子は何ら差別を被ることはなく,婚内子と同等の権利が保障される。

 日本でも,2013年の民法改正により,婚外子の相続分は婚内子の半分という規定は削除されましたけど,社会的な偏見はまだまだ強いのが現実でしょう。
https://twitter.com/tmaita77/status/877075583804424192

 さて,婚外子比率のグラフをツイッターで発信したところ,「婚外子が多い国は出生率が高そう。旦那はいらんが子どもは欲しいっていう女性多いんで」というコメントが寄せられました。

 なるほど。確かに,婚外子が半分以上のフランスやスウェーデンは,日本より合計特殊出生率が高くなっています。もっと多くの国を交えて,婚外子比率と出生率の相関をとったらどうなるでしょうか。


 攪乱はありますが,35か国のデータでみると,2つの指標の間にはプラスの相関関係が認められます。婚外出産という選択が開けている国ほど,出生率が高いと。

 結婚するといろいろな縛りが生じますが,それをよしとしない女性も増えているでしょう。しかし,子どもは欲しい。「旦那はいらんが子どもは欲しい」。出産期の女性のうち,こういう人が何%いるかは分かりませんが,決して少なくないように思います。

 ちきりんさんが,「結婚は時代遅れのもの」と言われています。確かにそういう面はあるでしょう。シングルマザーへの経済的支援を手厚くするなど,結婚せずとも子どもを産める環境を整えれば,出生率は向上に向かうのではないか。そんな展望を示されていますが,私も賛成です。

 これら先,結婚という制度の重荷感はますます強まってくるでしょう。高齢化により,相手の親の介護ものしかかってくる。日本では,こういう家族ケアが外部化されていませんので。子どもは欲しいが,結婚は御免という女性が増えてきても不思議ではありません。

 少子化の元凶は未婚化である。よって若者を結婚させないといけない。こういう考えのもと,各地で婚活イベントが開かれているのですが,結婚と出産をセットで考える枠組みを見直す時期にきています。

 上記のちきりんさんの記事では,1980年代以降,ヨーロッパ諸国で婚外子率が急激に高まったことが示されています。婚前交渉ご法度のカトリック国(スペイン,イタリア…)もです。これは,希望的事実に他なりません。為せばなる,社会は変わるのです。

2017年6月16日金曜日

フリーの著述家のサバイブ率

 前回は,フリーの著述家・芸術家の数が増えていることを明らかにしました。いわゆる「フリーランス」の増加傾向ですが,この道はなかなか厳しいということも申しました。

 それを可視化したいのですが,フリーランスの場合,離職率などはありません。そもそも組織に雇われてないのですから,そういう統計は作りようがありません。しからば,この業界の淘汰の様を「見える化」できないかというと,そうではありません。世代の統計をつなぎ合わせるという手があります。

 下表は,フリーの著述家・記者・編集者(以下,著述家)の「時代×年齢」のマトリクスです。『国勢調査』の職業中分類統計より作成しました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02100104.do?tocd=00200521


 1985年の20代前半は,5年後の90年には20代後半になり,さらに5年後の95年には30代前半…となります。同一の世代(コーホート)は,このように表を右ナナメ下に進んでいくわけです。

 黄色は1961~65年生まれ世代ですが,この世代でいうと,フリーの著述家は40代前半まで増加を続けます。20代後半から30代前半,30代前半から30代後半にかけての増加幅が大きいようですね。何年か出版社などで勤め,「フリーでやるぞ!」と独立する人が出てくるのでしょう。

 しかし40代前半から後半にかけて,5768人から4650人へと2割近くも減ります。30代で気概を持って独立する人が多いが,40代になると淘汰が始まる。こんな感じでしょうか。

 まさに「恐怖の40代」ですが,より上の世代では,この時期ではまだ淘汰は始まりません。一回り上の1951~55年生まれ世代(青色)でみると,40代前半の3655人から後半の4015人へと増えています。減少が始まるのは,50代になってからです。

 最近の世代になるほど,淘汰の時期が早まっているようです。一つ下の世代(緑色)になると,30代後半から減少が始まります(4626人→4510人)。

 出版不況もあって,生き残り(サバイブ)が厳しくなっているのでしょうか。もう一度黄色の世代に目をやると,40代のステージで淘汰が始まるのですが,減り方の度合いは男女で違っています。この世代について,フリーの著述家の数の変化を性別に跡付けると,以下のようになります。


 40代での減少幅は,男性と女性ではかなり違っています。男性は2507人から2300人の減(8.3%減)ですが,女性は3261人から2350人と3割近くも減っています。

 絶対数は女性が多いですが,サバイブ率は男性の方が高い。女性の場合,育児や介護等による店仕舞いもあるでしょうが,仕事の受注で力関係が生まれることもあるのでしょうか。

 クラウドソーシングなど,フリーのクリエイターと企業を結ぶIT技術が進化してきていますが,フリーの著述家の世界はやはり甘くなく,淘汰が始まるのも早い。先に述べたように,最近の世代ほどその傾向は顕著です。

 同じやり方で,職業ごとのサバイバル状況を可視化するのも面白いですね。たとえば,多くの若者が憧れる美容師はどうでしょう。この職業の「時代×年齢」マトリクスを,『国勢調査』の職業小分類統計より作ってみました。


 この職業の場合,どの世代も20代から減少がスタートします。1981~85年生まれ世代(赤字)でいうと,20代前半では81156人だったのが,20代後半になると47500人にまで減ります。4割以上の減です。これはスゴイ。

 若者の人気職業ですが,カリスマ美容師なんてほんの一握り。離職率メチャ高,40歳定年の業界…。こんなふうに言われますが,世代統計でもそれをうかがえます。

 他の職業はどうですかねえ。女性の医師,歯科医師,バーテンダー…。サバイバル状況が気になる職業はいろいろあります。若き青少年の諸君,自分が志望する職業の見通しをつけるのにもいいのではないでしょうか。高校の総合的な学習の時間などで,この手の作業を生徒にさせるのもいいかもしれません。『国勢調査』のバックナンバーは,政府統計の総合窓口(e-stat)で誰でも見れます。

2017年6月13日火曜日

フリーの著述家・芸術家

 フリーランスと呼ばれる人たちがいます。組織に属さずして,自分のスキルを売りして生計を立てている人たちで,最近,この手の働き方をしている人は増えていることでしょう。

 たとえば,フリーライターです。『国勢調査』の職業小分類でいう「著述家・記者・編集者」で,従業地位が「雇人のいない業主」という人たちが該当します。2015年の『国勢調査』の速報抽出結果によると,その数は3万3200人。30年前の1985年の2万2214人に比して,1.5倍に増えています。

 フリーランスが多い職業としては,他に美術家,デザイナー,写真家,音楽家などが挙げられます。これらも加味した,フリーの著述家・芸術家が30年間でどう推移してきたかを整理してみました。『国勢調査』は5年間隔の実施なので,データは5年刻みになっています。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02100104.do?tocd=00200521


 フリーの著述家,美術家,音楽家が増えていることが知られます。右端の合計をみると,1985年では9.1万人だったのが2000年には13.3万人になり,2015年では16.4万人になっています。この30年間で,フリーの著述家・芸術家は1.8倍に増えました(下段の指数)。

 この人たちについて,ちょっとばかり詳しくてみてみましょう。最新の2015年の『国勢調査』は抽出速報集計しか出てませんので,職業小・中分類の子細なデータは得られません。そこで,2010年のデータによることにします。上表に記載の通り,3つの職業のフリーランスの合計は,13万7070人です。以下,フリーの著述家・芸術家ということにします。

 まずは年齢構成です。2010年のフリーの著述家・芸術家13万7070人の年齢構成を,就業者全体と対比してみました。下図は,5歳刻みの構成比のカーブです。


 就業者全体のカーブは,人口全体のそれを反映しています。ご覧のように,団塊と団塊ジュニアに山がある「2こぶ」です。

 しかるに,フリーの著述家・芸術家は,30代後半から40代が膨らんだ型になっています。全体の4割がこの年齢層です。

 最初は会社勤めをして,30代後半あたりで独立。しかし淘汰が激しいので,長く続けられる人は少なく,50代あたりから減少。こんな感じでしょうか。

 なお厳しいのは,仕事上のサバイブだけではありません。結婚して家庭を持つことも,フツーの人に比して難しいようです。それは未婚率によって可視化されます。フリーの著述家・芸術家の未婚率の年齢カーブを描くと,下図のようになります。


  男女とも,フリーの著述家・芸術家の未婚率は,全人口よりも高くなっています。如何せん,収入が不安定ですからね。

 しかるに,経済力が期待される度合いが高い男性よりも,女性の未婚率が高くなっています。40代以降の女性は,全人口との落差も大きい。40代後半と50代前半の未婚率を均した生涯未婚率は,全女性は10.6%ですが,フリーの女性著述家・芸術家では39.3%にもなります。4倍近くの差です。

 女性の場合,家庭を持つといろいろ縛りが出てきますが,クリエイターの魂がそれを許さないのでしょうか。

 最後に,地域差をみておきましょう。フリーの著述家・芸術家は,どの県に多く住んでいるか。2010年のフリーの著述家・芸術家は,最初の表でみた通り13万7070人で,就業者全体に占める割合は0.23%です。

 以下の表は,この値を都道府県別に出し,高い順に並べたランキングです。


 東京がダントツですね。予想通りですが,やはり都市部に多く生息しているようです。文化は都市に偏在していますが,実際に会って仕事をもらったり,取材などをするには,都会に住まないといけない。

 まあ今はネットがありますので,こういう障壁は,昔に比したら低くなっているでしょう。私などは,人と会って取材をするスタイルではなく,作品を生み出すのに使う統計資料は大半がネットで見れます。よって,全国のどこに住んでもよし。この春,横須賀に越したのは,こういう理由からです,家賃が下がり部屋が広くなり,言うことなし。

 今回は,あまり知られていないフリーランスの生態について,いくつかの観点からデータを見てみました。その数は増加していますが,言わずもがな,厳しい世界です。

 ネットメディア隆盛の時代で,「ライター募集」なんていうサイトがゴロゴロありますが,そういう所に自分から応募するようでは,搾取されるだけだと思います。「2000字の記事1本の原稿料は500円。PVが少ない場合,原稿料は払いません」とかね。
https://twitter.com/tmaita77/status/707481273086836736

 イケダハヤトさんは,「ネット記事の原稿料は1本5万円から」と公言しています。ここまで強く出れないにしても,自分でブログを書いて,編集者のほうから声がかかるレベルに到達しないとダメでしょう。
 
 1年くらい成果物を発信し続けて,どこからも声がかからないレベルならば,フリーランスの道に進むなんて,考え直したほうがいい。クライアントのほうから声がかかるか。この点が,業界でやっていけるかどうかを見極めるポイントになります。

 私は現在,4つのメディアで連載を持っていますが(1つは休止中),「どうやって仕事を得たのか?」とよく聞かれます。何のことはありません。ブログをみた編集者さんから,「連載をお願いできませんか」と言ってきただけのことです。

 小学生の志望職業の上位に「ユーチューバー」が挙がっているそうですが,最初の表でいう「映像撮影者」に該当するのでしょうね。この手のフリーランスも,これからどんどん増えてくるでしょう。

2017年6月10日土曜日

食生活の洋風化

 2016年の総務省『家計調査年報』のデータが公表されました。いろいろな品目の消費支出額が分かるスグレモノです。
http://www.stat.go.jp/data/kakei/2016np/index.htm

 教育学を勉強している人間なら,家計の教育費支出額にまず関心を払うべきでしょうが,食い意地の張った私は「食」の費用に興味がいきます。どういう食材への支出が増えているか(減っているか)。これをみることで,食生活の変化を垣間見ることができます。

 「食」は大まかに和食と洋食に二分されますが,前者の主食は米,後者はパンです。おかずの代表格は,前者が魚,後者が肉でしょう。この4つの品目に,年間どれだけのおカネを使ったか。上記の資料には,世帯単位の年間平均支出額が載っています。単身世帯等も含む,総世帯の数値を拾ってみましょう。

 下のグラフは,2005年と2016年の年間支出額を比較したものです。


 米と魚が減り,パンと肉は増えています。2005年では「米>パン」,「魚>肉」でしたが,2016年では両方とも逆転しています。

 少子高齢化が進んでいますので,若年世帯が増えたためではありません。全年齢層で,和食より洋食にお金をかける傾向が強まっているようです。これは消費支出額で摂取量ではありませんが,食生活の洋風化が進んでいることをうかがわせるデータですね。

 4つの品目への支出額を使って,食の洋風化の度合いを測る指標(measure)を作ってみましょう。洋の2品目(パン+肉)が,4品目全体に占める割合というのはどうでしょう。

 洋風化率=(パン+肉類)/(米+パン+魚介類+肉類)

 先ほどのグラフの年間支出額を使って,食の洋風化率を計算すると,2005年が44.2%,2016年が53.1%となります。増えていますねえ。最近では,洋の比重が半分を超えています。

 食の洋風化のレベルを測る尺度を得ましたが,この値は都道府県別に出すことも可能です。4品目について,各県の県庁所在地の年間平均支出額を知ることができます。下表は,その一覧です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値を意味します。


 お米は新潟がマックス。さすがは「米どころ」ですね。驚くのは,魚介類の支出額が最低なのが沖縄であること。四方八方を海で囲まれた県ですが,南国の熱帯魚はあまり食向きではないのでしょうか。

 それはさておき,4つの品目の支出額から洋風化率を出すと,右端のようになります。全国値は53.1%ですが,県別にみると46.0%から59.0%のレインヂがあります。最低は新潟,最高は兵庫です。

 若者が多い都市部で洋風化率が高いかといえば,そうでもありません。首都圏の洋風化率は,九州よりも低いようですので。各県の年齢構成よりも,地域性が効いています。地図にすると分かりますけど,食の洋風化率は大よそ「西高東低」の傾向になっています。

 その様をご覧に入れますが,過去との対比もしたいですね。そこで,2005年と2016年のマップを照合してみましょう。洋風化率45%未満,45%以上50%未満,50%以上という3つの階級を儲け,47都道府県を塗り分けた地図を作りました。


 この10年間の変化は,結構ドラスティックです。2005年の地図は全体的に色が薄く,洋風化率が50%を超えるのは熊本だけでしたが,2016年では多くの県で50%を超えています(濃い赤色)。

 全国的に,食の洋風化が進行していることが知られます。地図の模様から,その傾向は西高東低であることも分かります。現在も「和>洋」なのは,北東北や中部の諸県ですが,これらの県も間もなく濃い色に染まるでしょう。

 食の洋風化が進むと生活習慣病になりやすいとか,いろいろ言われます。その一方で,「実は,和食はヘルシーではなかった」といった説が唱えられたりします。私は振り回されるのが嫌なので,この手の情報はあまり信用しないことにしていますが,バランスのとれた食生活は心がけたいものです。余談ですが,一週間分の食材をまとめて頼む生協の宅配は,それに適していると思います。

 今回は,米・パン・魚・肉の4品目に着目しましたが,生鮮野菜の消費支出額を取り上げるのもいいかも。食費全体に占める比重をとれば,食のヘルシー指数になるでしょう。複数の品目の支出額を因子分析にかけて,47都道府県をタイプ分けするのも面白いですね。「食の生態学」というのも,やってみる価値はアリです。

2017年6月8日木曜日

不登校の脱問題化?

 学校に通えない子どもを受け入れる「フリースクール」を正規の学校として認めようという案が出ましたが,反対多数のため認められませんでした。

 その代わり,昨年の12月に教育機会確保法が成立しました。正式名称は「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」で,学校以外の教育機会の重要性を認める規定になっています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1380952.htm

 不登校に対する基本スタンスは,これまでは「学校に来させる」でしたが,ようやく事態が変わってきました。インターネットの普及に伴い,学校外で独学で学べる条件も出てきていますからね。

 まあ今までも,ITを使った自宅学習,フリースクールで指導を受けた日数を,条件つきで指導要録上「出席扱い」にするなどの措置はありましたが,こうした学校外の教育機会を「仕方ない」ではなく,積極的に活用しようという規定になっているのが,上記の法律の特色です。

 この法律の制定を待たずとも,不登校に対する人々の見方は変わってきていることが,統計からうかがえます。たとえば,児童相談所に寄せられた不登校相談の件数です。厚労省の『福祉行政報告例』という資料に,年齢別の相談件数のデータが載っていますが,前世紀末の1999年度と最新の2015年度の数値をグラフにすると,下図のようになります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/38-1.html


 不登校の相談は,13~14歳で多くなっています。思春期の只中の難しいお年頃です。小学校と中学校の落差が大きいことによる戸惑い(中1ギャップ)もあるでしょう。

 しかしその山は,最近ではかなり低くなっています。2015年度の13~14歳の相談件数は,1999年度の半分以下です。他の年齢でみても,不登校の相談件数が減っています。

 今世紀以降,不登校の児童生徒数が大きく減ったかというと,そんなことはありません。小・中学校の不登校児童生徒数は(「不登校」が理由で年間30日以上休んだ者)は,1999年度は12万8431人,2015年度は12万5991人となっています。数はちょっと減ってますが,これは少子化のためで,全児童生徒数あたりの出現率は増えています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/shidou/1267646.htm

 不登校の子どもが激減したわけではないにもかかわらず,わが子の不登校のことで相談に訪れる親の数は減っている…。この2つを照合して,不登校の相談率という指標を出してみましょう。不登校の児童生徒数に占める,不登校の相談件数の割合です。不登校の子を持つ親のうち,わが子を案じて相談に訪れた人の割合と読むことができます。

 なお不登校相談件数は年齢別になっていますが,6歳を小1,7歳を小2…,14歳を中2としていることを申し添えます。


 学校に上がったばかりの小学校低学年の子が不登校になった場合,戸惑う親が多いためか,相談率は高くなっています。1999年度では2割以上です。

 しかし,2015年度ではどの学年でも相談率が下がっています。それもそのはず。分母の不登校児数は増えていますが,分子の相談件数は大幅に減っているのですから。

 これをどう見るか。児童相談所の敷居が高くなった,ということは考えられません。虐待相談などを含む,児童相談全体の件数は増えていますので。思うに,不登校に対する見方が柔軟になったことの表れではないでしょうか。必ずしも,学校に行く必要はない。タイトルに記したような,不登校の脱問題化です。

 昨年の暮れに,教育機会確保法が成立する前のデータです。より最近では,上表のaとbの乖離がもっと大きくなっているのではないでしょうか。不登校を問題行動として捉える枠組みも,徐々に修正を迫られることになるでしょう。

 このブログで何度も書いていることですが,情報化が進んだ社会では,学校という四角い空間だけが教育の場であり続けることはできません。イヴァン・イリイチは,こういう社会では学校の領分が縮小し,代わって人々の自発的な学習網(ラーニング・ウェヴ)が台頭してくるであろうと述べています(『脱学校の社会』)。この予言が,まさに現実のものになろうとしている。そう思っているのは,私だけではありますまい。

2017年6月3日土曜日

稼ぐ人の子ども期

 成功している人は,どんな子ども期を過ごしたか? こんな特集を雑誌でよく見かけます。「こういう教育をしたら,こういう人間になる」とは,教育学の観点からしても興味深いテーマです。

 こういう主題に接近する場合,長期にわたる追跡調査をするのが望ましいのですが,費用や手間の面でそれは難しい。そこで,大人の対象者に子ども期を振り返ってもらう回顧法がよく用いられます。

 子どもの頃の記憶なんてあやふやな人が多いので,科学的でないという批判は免れませんが,全くムダというわけではありますまい。

 最近公表された公的機関の調査としては,国立青少年教育振興機構の『読書活動が及ぼす効果に関する調査』というのがあります(2013年2月公表)。20~60代の成人5000人ほどに,子ども期を振り返ってもらい,現在の地位や生活状況との関連を探ると。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/72/

 この調査のローデータを使って,冒頭の問いにアプローチできます。私は,30~40代男性の対象者を年収の水準によって分かち,子ども期の様を比較してみました。年収が成功のメジャーになるとは限りませんけど,ひとまず常識的な見方をとりましょう。

 30~40代男性の年収分布を観察したところ,300万未満,300万以上750万未満,750万以上の3群に分けるのがよいと考えました。サンプル数は順に264人,604人,140人です。

 調査票をみると,子ども期をいくつかのステージに分けて,「**をどれくらいしましたか?」という設問が多く盛られています。ここでは,小学校低学年(1~3年生)のステージに注目しましょう。就学前の幼少期は記憶が定かでない危険が高く,小学校高学年以降になると塾通いなどの影響が出てくるためです。

 さて,30~40代男性の各年収グループは,小学校低学年の児童期前期をどう過ごしたか。この調査は,子ども期の読書活動如何が成人後の人生に及ぼす影響を検出することを狙っていますので,まずはこの点をみてみましょう。

 下表は,7項目の読書活動を小学校低学年の時に「何度もある」という者の割合です。無回答を除く有効回答の中での比率です。


 赤字は3群で最も高い数値ですが,項目によって違いますね。昔話,絵本,マンガはプアが最も高く,その他はリッチが最も高くなっています。

 本を読んだこと(マンガ以外)は,普通とリッチの段差が大きいですね,読書が高い教育達成につながり,高年収を得られる職業に就くことができた。こういう経路が想起されます。

 図書館の利用経験もリッチで多いようですが,その次はプアの率が高くなっています。私も,よく使ったなあ。お小遣いが少なかったので。本を買う金なら別枠でいくらでも出してくれる親御さんがいると聞きますが,私はそうじゃなかった。

 昔の図書館はカードなんですよね。借りた人の名前が記録されるアレです。私は年齢にそぐわない(変な)本ばかり借りていたので,名前が記されるのはちょっと恥ずかしかった…。

 それはさておき,読書は成人後の成功可能性と結びついているかもしれません。勉強ができるようになるとかいう,せせこましいことではなく,物事の本質が分かるようになりますからね。

 次に,自然との接触体験とお手伝い体験を比べてみましょう。先ほどと同じく,小学校低学年の頃「何度もある」と答えた者の割合です。


 こちらは,どの項目もリッチの数値が最も高くなっています(赤色)。どれも「プア<普通<リッチ」というように,現在年収とリニアな相関です。

 黄色マークはリッチの率がプアの1.5倍以上の項目で,2.0倍以はゴチの赤字にしています。一番下の掃除の手伝い経験は,プアが12.9%,普通が17.4%,リッチが26.4%ですか。差が大きいですね。

 体験が人を育てるとはよく言ったものです。稼いでいる人は子ども期は勉強三昧だったかと思いきや,データでみるとさにあらず。いろいろやっているようです。随所で言われていることですが,お子さんには,いろいろなことをさせたほうがいいのではないでしょうか。視界も広くなりますし。

 ただ,上記の差は,育った家庭環境の違いによるとも考えられます。裕福な家庭は,子どもをいろいろな所に連れて行きますので。だとしたら,家庭の経済地位とリンクした「体験格差」を介して,高い教育達成,高い職業地位というような,格差のループ(再生産)がある可能性も示唆されます。こういう問題にも,自覚的でないといけません。

 まあ楽観的な話をしますと,今はインターネットがありますので,世界の名所や美しい風景などは,自宅にいながらにして見放題です。現地に出向かないと分からないのは「匂い」くらいでしょう。

 パソコンやネットに早い段階から触れさせることには批判も多いのですが,画面の向こうに広がる世界は無尽蔵。子ども期の体験格差を埋めるツールとして,この文明の恩恵を使うというなら,大いに結構なことだと思います。むろんフィルタリングなど,有害情報の遮断はした上で。「ユーチューブ・キッズ」なんていうアプリも出ています。

 諸外国に比して,日本の幼子がこパソコンやネットを使う頻度は格段に低し。コンピュータに触れた年齢が早い子どもほど学力が高い,というデータもあります。このツールの使い方を見直す必要があるでしょう。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=9179