2017年7月22日土曜日

共働き男性のWLB,家事分担度

 昨日,共働き男性の家事・家族ケア時間の国際比較を,ツイッターで発信しました。横軸に5時間未満,縦軸に20時間以上の者の割合をとった座標上に,それぞれの国を配置したグラフです。

 日本の外れっぷりが一目瞭然。横軸の値(≒妻ワンオペ率)が飛び抜けて高く,縦軸は最も低し。見てくださる方が多いようです。

 しかるに,男性の家事・家族ケア時間だけを切り取ってみるだけでは不十分でしょう。男性の生活時間の多くを占める仕事時間(①),またパートナーとの分担度という点から,女性の家事・家族ケア時間(②)との対比もしないといけません。

 ①との対比から男性のワークライフバランス度,②との対比から妻との家事分担度が分かることになります。この点のデータも見たいという要望が多数でしたので,それを作ってみることにしましょう。

 ISSPの『家族と性役割の変化に関する意識調査』(2012年)では,各国の成人男女に対し,週間の家事・家族ケア時間と仕事時間を問うています。

 本調査のローデータを加工して,子がいる共働き男性の家事・家族ケア時間(A),仕事時間(B),同じ条件の女性の家事・家族ケア時間(C),の週間平均時間を計算しました。この3つから,以下の指標を割り出すことができます。

 男性のワークライフバランス度=A/(A+B)
 男性の家事・家族ケア分担度=A/(A+C)

 単位は%で出しましょう。下表は,37か国の結果の一覧表です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。カナダ,インド,韓国は共働き男性(女性)のサンプル数が50人に満たないので,分析対象から外したことを申し添えます。


 日本の共働き男性の家事・家族ケア時間は8.6時間で,飛び抜けて低くなっています。仕事時間は51.9時間で,中国に次いで長し。家事・育児時間が短く,仕事時間が長いので,WLB度は14.1%と低くなっています。37か国で最低です。

 同じ共働き女性の家事・家族ケア時間との対比により,妻との分担度を推し量るとわずか16.0%(6分の1)で,こちらも世界で最低です。

 日本の男性の生活構造の歪みが数字で表れていますねえ。共働きといっても,日本の女性は多くがパートで,就業時間が短いということもあるでしょうが,これはヒドイ。

 算出された,共働き男性のWLB度と家事・育児分担度の布置図を描いてみましょう。下図は,横軸に前者,縦軸に後者をとった座標上に,37の社会を配置したものです。点線は,37か国の平均値です。


 ぐうの音も出ません。日本のパパは,自身のワークライフバランス(仕事と生活の調和)が悪く,妻との家事分担もできていない。

 この要因を,日本の男性の長時間労働だけに帰すことはできますまい。日本国内の共働き男性のサンプル(63人)でみると,就業時間と家事・家族ケア時間に相関関係は認められません。長時間労働の男性ほど家事・育児時間が短い,という傾向はない。

 当人の家事スキル,妻の意識など,いろいろな要因が交じり合っていると思われますが,平均値でみた国際的な位置は上記のようになるのは事実です。これでは少子化に歯止めがかかりません。日本の「働き方改革」,待ったなしです。

2017年7月17日月曜日

ワンオペ家事

 「ワンオペ」という言葉が流布しています。人手不足のファーストフード店の夜勤を,店員1人で切り盛りする。こういう状況を問題視したフレーズです。

 しかるにワンオペは,職場だけではなく家庭でも蔓延っています。よく聞かれるのは,ワンオペ育児です。夫が育児をせず,もっぱらその負担が妻に課せられる。現在,日経デュアルでこの問題の特集が組まれており,読者の関心を集めています。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=10851

 私も同Web誌で連載を持っていますので,この問題に関するデータを提示できないかと前から思っていました。基本事項として,共働き夫婦のうち,妻のワンオペ育児の状態にある夫婦が何%くらいか。ワンオペ育児の量を可視化したい。

 こういう関心のもと,『社会生活基本調査』の統計表を細かくみたところ,ワンオペ家事の夫婦の比率を捻り出せることを知りました。2011年の同調査の生活時間統計によります。

 生活時間統計(A)の表64では,共働き世帯の数が,夫と妻の家事関連時間(1日あたり)の階級別に集計されています。家事関連時間とは,家事と買い物時間の合算です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001040666&cycode=0

 手始めに,0歳の乳児がいる共働き夫婦のクロス統計表をみてみましょう。下表は,カテゴリーを簡略化した「5×5」のクロス表です。表側(タテ)は夫,表頭(ヨコ)は妻の家事関連時間(平日1日あたり)の階級です。各セルには,該当する世帯の数(千世帯)が示されています。


 合計30.5万世帯ですが,夫の家事時間がゼロの世帯が多いですねえ(一番上の行)。夫の家事時間がゼロで,妻がそうでない「妻ワンオペ家事」世帯は,黄色マークのセルに該当します。その数13.4万世帯で,全体の43.9%に該当します。

 妻はパートないしは時短勤務という世帯が大半でしょうが,これは酷い。手のかかる赤ちゃんがいる共働き世帯の半分弱が,妻ワンオペ家事の世帯であると。せいぜい2~3割くらいかと思ってましたが,ここまで多いとは驚きです。

 これは平日のデータですが,土曜や休日になると,さすがに少しは比率が下がります。しかるに,子どもが大きくなるにつれ,事態は悪化してきます。

 私は同じやり方で,共働き世帯に占める「妻ワンオペ家事」世帯の割合を,曜日別,末子の年齢別に計算してみました。下図は,結果をグラフにしたものです。


 子どもが大きくなるにつれて,妻ワンオペ家事世帯の比率が高くなっていきます。平日でみると,末子が学齢(6歳)に達した以降は,およそ8割で推移します。土曜は6割,休日は半分ほどです。子どもが加勢するようになるからかもしれませんが。

 これは共働き世帯のデータです。夫婦ともフルタイム勤務の世帯では状況は違うでしょうが,妻が一手に家事を担っているワンオペ世帯がここまで多いとは,看過できることではありません。

 ここでみたのはワンオペ家事の世帯割合ですが,ワンオペ育児の世帯量も,同じようなものかもしれません。

 最新の2016年調査のデータでは,何%くらいになるでしょう。2016年の生活時間調査の結果は,9月に公表されます。はて,ここ数年のワークライフバランス政策の効果が実証されるかどうか…。

 その前に,国際比較もやってみたいところ。ISSPの「家族と性役割の変化に関する意識調査」(2012年)で,家事・育児時間を訊いていたような。「夫ゼロ,妻その他」のワンオペ世帯率が国によってどう違うか。日本の位置はどうか。あまりやりたくない分析ですが,避けては通れない課題です。

2017年7月15日土曜日

子どもの読書実施率の変化

 2016年の『社会生活基本調査』のデータが公表されました。本調査は,生活行動の調査と生活時間の調査の2本立てからなり,昨日公表されたのは前者のデータです。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.htm

 生活行動調査は,過去1年間に**をやった人が何%か,というものです。生活時間調査では,**の1日あたりの平均時間は何分か,という数値が示されます。後者の結果公表は,9月とのことです。

 今回は,生活行動調査のデータ分析の第一報といきましょう。テーマは,タイトルにあるように,子どもの読書実施率の変化です。学校に在学している児童・生徒・学生のうち,過去1年間に,趣味としての読書をした者は何%か。各地で子どもの読書活動推進に向けた取組がされていますが,その成果を数値で垣間見てみましょう。

 ここでみるのは,趣味としての読書ですので,自発的な意志によるものに限られます。よって,学校の朝の10分間読書のような,強制的な意味合いのものは含まれないと思われます。

 小・中・高校生とその他の在学生(≒大学生)の,趣味としての読書実施率(過去1年間)を,2006年調査と2016年調査で比べてみます。結果をシンプルなグラフでお見せしましょう。


 どの段階の読書実施率も,この10年間で下がっています。上の学校ほど減少幅が大きく,高校生はマイナス5.6ポイント,大学生はマイナス9.7ポイントです。10年前は,小中高と大学の間に落差があり,「さすがは大学生」という感じだったのですが,今では大学生と小学生が接近してしまっています。

 まあ,ネットのニュースやブログなどで知識を得る者が増えたこともあるでしょうが,それらは薄っぺらであるのがしばしば。私は4月に,プレジデント社とケンカ別れしましたが,この会社の紙の雑誌(書籍)とネットニュースの温度差があり過ぎることを,肌身で感じました。
http://tmaita77.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

 深み(厚み)のある本を読まない。お手軽なネットニュースのリード文だけみて,意見を形成してしまう。これでは,物事を深く考える習慣はつきますまい。かくいう私も,今は1日の大半をパソコンの画面に向かって過ごしており,学生時代に比して読書時間はうんと減りました。夜の8時以降は,ツイッターは止めにして本を読もうと考えているのですが,なかなかできない…。ヤバいなと思っています。

 これは全国の数値ですが,様相は地域によって違います。都道府県別にみると,全国的傾向とは裏腹に,子どもの読書実施率が上がった県もありますし,全国データよりも減少幅が大きい(残念な)県もあります。

 私は,小・中・高校生の読書実施率が,2011年と2016年でどう変わったかを,都道府県別に調べました。先ほどと同じく2006年と2016年の比較をしたいのですが,2006年の県別データを揃えるのはちょっと厄介なようですので,ここ5年間の変化を見る,ということでお許しください。

 下表は,結果の一覧です。黄色マークは47都道府県の最高値,青色は最低値です。赤字は,上位5位を意味します。


 子どもの読書実施率には,かなりの地域差があります。2016年のデータをみると,小学生は34.7%~54.7%,中学生は33.5%~59.6%,高校生は29.1%~56.7%,のレインヂです。

 小学生(10歳以上)をみると,秋田と福井は低いのですね。2016年調査に載っている,過去1年間の読書実施率は,秋田が35.4%,福井が34.7%で,ワースト2になっています。子どもの学力上位県ですが,これは意外。秋田では,「自宅学習ノート」という宿題に時間を取られているのではないか,という意見がありましたが,そうなのでしょうか。
https://twitter.com/jmx_shima/status/885977423795204096

 私が住んでいる神奈川は,読書県なのですね。赤字が多くついています。小・中・高とも,この5年間で減っているのが気になりますが。

 全国統計では,この5年間でどの段階の読書実施率も減っていますが,それとは逆の県もあります。小学校でいうと,13の県で率が上がっています。それが最も顕著なのは岡山で,44.2%から53.5%への増です。

 この県の取組をちょいと拝見すると,本を読むたびにシールを貼れる「読書手帳」を小中学生に配布するなど,ユニークな実践をしています。「読書手帳は,素敵な本との出会いを記録していくもの」。年少の児童は収集癖があるのですが,そういう心理を突いているなと思います。
http://www.pref.okayama.jp/site/16/462779.html

 上記の表は,各県の読書活動推進政策の成果を見て取る,参考資料としてご覧ください。最後に,県別の小学生の読書実施率をグラフで「見える化」しておきましょう。横軸に2011年,縦軸に2016年の実施率をとった座標上に,47都道府県を配置してみました。


 細い斜線は均等線で,この線より上にある県は,この5年間で小学生(10歳以上)の読書実施率が上がった県です。先ほどみた岡山は,このラインとの垂直距離が最も大きくなっています。

 しかるに,数としてはこの線よりも下,つまりこの5年間で読書実施率が下がった県が多くなっています。太い斜線(Y=X-10)より下の黄色ゾーンにあるのは,10ポイント以上下がってしまった県です。静岡は最も下落が大きく,61.6%から38.2%と,23.4ポイントの減なり。

 上記の図にすると,自県の現在の相対位置と,過去5年間の変化位置が分かりやすいかと存じます。

 ちなみに,各県の読書実施率は,県民所得や住民の階層構成といった,社会経済指標とは無相関です。これは,各県の政策によって,子どもの読書実施率を高めることができるという,希望的事実です。

 間もなく夏休みですが,子どもが本を取るように仕向けたいもの。宿題をちょっと少な目にしたっていいでしょう。8月3日に刊行される,拙著『データで見る・教育の論点』(晶文社)は,中高生にも読んでもらえたらなと思います。難しい理屈や数式を並べ立てた本ではありません。四則演算しか使ってませんので,中学校レベルの数学力で十分理解できる内容です。社会現象を数で可視化する。数学(算数)と社会の総合学習の手引きとしても使えます。どうぞ,お手に取ってください。

2017年7月13日木曜日

助教諭依存率

 人手不足がいわれて久しいですが,教員の世界までそれが及んできました。産休の代替などに,普通免許状を持つ教諭を採用できないため,助教諭を雇ってしのいでいる自治体が多いとのこと。
https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2017_0711.html

 助教諭とは,普通免許状を持つ教諭を採用できない場合に限り置くことができる職で,要件は臨時免許状を有していることです。この臨時免許状は,大学等で教職課程を終えていなくても,教育職員検定試験に合格することで得ることができます。任命権者の都道府県内でのみ,3年間有効です。

 上記の記事では,幼稚園の免許しかない女性に小学校の臨時免許状を付与して,音楽を教えさせている事例が紹介されています。全国をくまなく探せば,大学を出ていない人が教壇に立っているケースもあるかもしれません。

 しかるに戦後初期の頃は,助教諭への依存度は今よりずっと高いものでした。敗戦後の教育の民主改革により,新たな学校が雨後の竹の子のごとく次から次にできたのですが,校舎や教室だけでなく,教員も不足していました。

 その様は数字にはっきりと出ています。1950(昭和25)年の公立小学校の本務教員は30万4414人でしたが,そのうちの7万7548人が助教諭だったと記録されています(『学校基本調査』)。率にすると25.5%,全教員の4人に1人が助教諭だったわけです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 中学と高校はどうだったか,今現在はどうなのか。小・中・高の助教諭比率を,1950年と2016年で比べた表を作ってみました。


 1950年の助教諭比率は,小学校が25.5%,中学校が11.0%,高校が2.6%となっています。今とは比べものにならない高さです。

 これは全国の数値ですが,地域別にみるともっとスゴイ値が出てきます。1950年の公立小学校本務教員の助教諭比率を都道府県別に出し,高い順に並べると,以下のようです。


 マックスは埼玉の50.2%,この県では小学校教員の半分は助教諭であったと。スゴイですねえ。隣接している東京が9.8%にとどまっていたのとは,大違いです。

 群馬と茨城が40%台,岩手,青森,北海道,和歌山,秋田が30%台後半です。こういう県では,勉強ができる若者を捕まえては,じゃんじゃん臨時免許状を付与して,教壇に立たせていたのでしょう。その中には,20歳に満たない少年だっていました。当時の小学校教員の年齢ピラミッドをみると,10代の教員が1割を占めています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/02/blog-post_27.html

 今なら考えられないことですが,こういう時代もあったのですねえ。現在,地域に開かれた学校運営が志向されていますが,ある意味,昔の学校のほうが開放性が高かったといえるかもしれません。教員不足という外的な要因の故とはいえ,地域人材が教壇に立っていたのですから。

 ピンチはチャンス。教員不足になりつつある状況を逆手にとって,地域人材をどんどん学校に呼び込んでもいいのではないか。教員免許がない人でも,学があったり一芸に秀でたりしている人には,特別免許状や臨時免許状を授与することで,教壇に立たせることができます。教員の多忙化の解消にもなるでしょう。

 歴史を振り返れば,全教員の4人に1人,地域によっては半分が急ごしらえの助教諭という時代もあったわけです。まんざら突飛な提案でないことは,歴史が証明しているように思うのですが,いかがでしょうか。

2017年7月10日月曜日

県別のアラフォー正社員男女の平均年収

 8月3日に,新刊『データでみる・教育の論点』が晶文社より刊行されます。400ページほどの厚さで,価格は1800円(税別)。何とか千円台に収まってよかった。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364

 本ブログの一部書籍化ですが,一冊の本としての筋を通すべく,記事の選定・配列に気を配っています。「子ども」「家庭」「学校」「若者」「社会」の5つの章構成です。

 いろいろなグラフを盛り込んでますが,その一葉をお見せしましょう。第4章「若者」において,未婚化を扱った個所で載せたグラフです。正社員男女の平均年収の年齢曲線を,未婚者と既婚者で分けて描いたものなり。

 2012年の『就業構造基本調査』に載っている,年収の度数分布表から,階級値の考えを適用して算出した平均年収です。


 未婚者と既婚者の差が,男女で違うことに注目。男性は「未婚者<既婚者」ですが,女性はその逆です。女性の場合,結婚するといろいろ縛りが出ますので,正社員でもガシガシ稼ぐのが難しくなるのでしょう。

 しかるに,未婚者の折れ線(青色)をみると,男女の型がほぼ同じです。未婚者では,正社員男女の年収の差はほとんどありません。

 正社員であっても年収に男女差があるのは常識となってますが,それは未婚者と既婚者をひっくるめた話で,未婚者に限るとそうではないのですね。結婚がキャリアに及ぼす影響に,残酷なまでのジェンダー差があることが知られます。

 ちなみに都道府県別にみると,未婚の正社員の平均年収が「男性<女性」の県もあります。この県別のデータは,上記の新刊には載せていません。ここで紹介する,オリジナルデータです。

 働き盛りのアラフォー(35~44歳)の正規職員を取り出し,平均年収を県別・性別・配偶関係別に計算しました。チョー複雑な作業をしてみるみたいですが,今は「e-stat」で任意の変数のクロス統計表(↓)を自前で作れますので,何のことはないです。この機能を使いこなせるようになったら強い。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001058052&requestSender=search


 以下に掲げるのは,算出された平均年収の県別一覧表です。煩雑さを避けるため,小数以下を四捨五入した整数値で示しています。


 一番下の全国値をみると,ジェンダー差は未婚者より既婚者で大きくなっています。男性が女性の何倍かを示す倍率(a/b)は,未婚者は1.10倍ですが,既婚者は1.53倍になり。

 しかるに,様相は県によって多様です。未婚正社員の年収の性差が,かなり接近している県も多し。赤字は,ジェンダー倍率(男/女)が1.10未満の県です。結構あるじゃないですか。

 それを通り越して,未婚正社員の平均年収が,男性より女性で高い県もあります。黄色マークの奈良,高知,沖縄です。年収は「男性>女性」という常識を覆すケースが出てきました。未婚者同士で比べると,こういうケースもあるのですね。

 なお,上記の表は別の見方もできます。女性の年収を,未婚者と既婚者で比べることです。全国値をみると,未婚女性は380万円,既婚女性は354万円なり。同じアラフォー正社員女性ですが,結婚の損失でしょうか。東京などは,それがデカイっすねえ。

 しかし,未婚者と既婚者の年収があまり変わらない県もあります。てか,目を凝らすと,未婚女性より既婚女性のほうが稼いでいる県もあるじゃないですか。黄色マークの3県はどれもそうですし,秋田は未婚女性が288万円,既婚女性が310万円と,「未婚<既婚」の度合いが比較的大きくなっています。

 結婚による損失がない県もあるのですね。上記の表は,他にもいろいろな見方ができるかと存じます。全国値の傾向(常識)を覆すケースを発掘し,その詳細を明らかにする。そういう作業も求められるでしょう。何かファインディングスがありましたら,お教えいただければと存じます。

 冒頭の新刊には,この手のデータを多く盛り込んでいます。難解な理屈や数式を並べ立てた本ではありません。夏休みの読み物として,多くの方が手に取ってくださることを希望いたします。

2017年7月7日金曜日

20~44歳(25年間)の稼ぎ総額の都道府県比較

 私は7月12日生まれで,もうすぐ41歳になります。早いもので,伝統的な意味合いでいう生産年齢期間(20~59歳)の半分を過ぎたことになります。

 まあ私は,28歳まで学生をやり,その後も定職に就いたことがない風来坊ですが,何とかこの地点まで来れました。しかるに,これまで稼いだお金といったら微々たるもの。中学の同窓会に顔を出したら,間違いなく平均額を下回っているでしょう。

 私は今,40代前半なのですが,このステージまでの稼ぎ総額の平均って,どれくらいなんでしょう。前に,1961年生まれの男性を例に,年収の累積を跡付けたことがありますが,地域による違いも気になります。ずっと東京で働いた人と,私の郷里・鹿児島で働いた人では,かなり違うでしょうから。

 総務省『就業構造基本調査』から,正社員の平均年収を年齢別・都道府県別に出すことができます。県別の統計は,1992年調査からネットで見れるようです。この年に,入職して間もないピチピチの20代前半だったのは,1968~72年生まれ世代です。量的に多い団塊ジュニアの世代じゃないですか。この世代に焦点を当てましょう。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index2.htm#kekka

 この世代は,92年に20~24歳,97年に25~29歳,02年に30~34歳,07年に35~39歳,12年に40~44歳,となります。この5つの時点の平均年収をつなぎ合わせることで,20代前半から40代前半までの収入総額の見当をつけられるでしょう。ここでの分析のミソは,都道府県別のデータをはじき出すことです。

 性別と雇用形態の影響を除くため,男性の正規職員に対象を絞ります。下表は,5つの時点における平均年収を都道府県別に計算したものです。原資料に載っている年収の度数分布表から,階級値の考えを使って割り出しました。計算の仕方の詳細は,下記のリンク先記事でもご覧ください。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/10/blog-post_3.html


 同一世代の年収変化の追跡です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。

 やはり県によって年収は違い,加齢に伴い差が開いてきます。東京と沖縄を比べると,20代前半の時点では100万円ちょっとの差だったのが,脂ののった40代前半になると283万円もの差に拡大しています。

 ここでの関心は,20代から40代前半までの稼ぎ総額を出すことですが,上記の5時点(5年間)の合算を出すと,東京は2490万円となります。これを5倍すれば,20~44歳の25年間の年収総額の近似値になるでしょう。それによると,東京は1億2450万円,沖縄は7671万円なり。

 20~44歳までの稼ぎ総額の試算値ですが,この時点で1.6倍もの差がついています。59歳までの累積総額(生涯賃金)だと,差は凄まじいものになるでしょう。40代後半から50代にかけて,年収の地域差はもっと大きくなりますので。

 このやり方で,20~44歳までの稼ぎ総額を都道府県別に出し,ランキングにすると以下のようになります。


 当然ですが,都市部で高く,地方では低くなっています。

 稼ぎの絶対額をみると,東京は1億2450万円,鹿児島は9119万円ですか。うーん,郷里の鹿児島でも,私くらいの男性の正社員は,これまでに9000万円稼いできているのだなあ。私などは,その3分の1くらいかしら…。

 59歳までの現役時の稼ぎ総額は,単純に2倍して,東京が2億4900万円,鹿児島が1億8239万円,沖縄が1億5343万円ってとこでしょうか。全国値は2億1477万円です。退職金を加味すれば,巷でいわれている額に近いと思います。

 稼げる額は,地域によって違うものだなと感じます。全国各地の男性正社員(団塊ジュニア世代)の皆さん,自分の稼ぎ額の位置の見当をつけてみてください。

 ちなみに,同じ値を女性の正社員についても出せます。同じ正社員でも,女性の場合,出産・育児などいろいろ縛りが出ますので,20~44歳までの稼ぎ総額の性差は大きくなります。しかるに,その程度は県によって異なるでしょう。

 稼ぎの総額のジェンダー差が,県によってどう違うか。気が向いたら,次回,このテーマを取り上げようと思います。

2017年7月3日月曜日

褒められ経験と自尊心

 いよいよ暑くなってきましたが,いかがお過ごしでしょうか。横須賀では,久しぶりの晴れ空が広がっています。

 さて,日本教育新聞の連載『数字が語る・日本の教育』ですが,5月22日のコラム「褒められ経験」を,宮城県大和町の教育委員会広報(2017年7月号)に転載していただきました。公的機関の広報に載せていだけるのは,うれしく思います。
https://www.town.taiwa.miyagi.jp/soshiki/syogai/4281.html

 家で褒められる頻度と自尊心が,学年を上がるにつれてどんどん低下するというデータです(資料は,国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する意識調査』2014年度)。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/107/

 そこでは,2つの指標を切り離して観察しましたが,両者を関連づけてみると,さもありなんという傾向が出てきます。家で褒められる頻度と自尊心のクロス集計結果を,小学校4年生と高校2年生の断面で比べると面白い。

 家で褒められる頻度は,「よくある」と「時々ある」をまとめて「褒められる」群とし,その他を「褒められない」群としましょう。自尊心は,「自分が好き」という項目に「とても思う」ないしは「少し思う」と答えた者を「自分が好き」群,それ以外を「自分が好きでない」群と括ります。

 小4と高2の2時点について,この「2×2」のクロス集計結果を図示すると,以下のようになります。横幅で褒められ経験,縦幅で自尊心の群分けをしたモザイク図です。


 小4では「自分が好き」という児童(白色)のほうが多いですが,高2になると逆転します。「自分が好きでない」という児童生徒(青色)の領分が広がります。全体に占める比率は,小4では37.6%ですが,高2になると65.3%に増えます。

 これには褒められ経験の減少も寄与しているようで,褒められないという者の比重も,高2になると高くなります(横軸)。

 日本の子どもも自尊心は低く,発達段階を上がるにつれてそれが顕著になっていくのはよく知られていますが,褒められ経験の減少というのも,その原因になっているのではないか。

 小さいうちは,前にできなかったことができるようになり,褒められることが多いのですが,大きくなり自我が芽生えると,親の意向と衝突する。また,成績の些細な相対水準で小言を言われることも多くなるでしょう。

 いつしか叱れることが当たり前になり,たまに褒められると戸惑う子どもも出てきます。これは,自尊心が破壊されていることの証拠で,自信をもって社会に参入できず,後々になって,ニートや引きこもりといった社会不適応にもつながりやすくなります(これらがよくないと断言はしませんが)。

 自分に対する好意的な評価,すなわち自尊心は,積極的に外部に出て行って,いろいろな経験を積もうという意欲の基盤です。生きていく上で欠かせない心性ですが,褒めることで,それを伸ばすことはできます。

 「叱るより褒めよ,叱る前に褒めよ」。多くの育児書に書いてあることですが,これは正しいのです。不自然になってはいけませんが,お子さんを褒めましょう。難しいことではなく,どの親御さんにもできることです。

 ちなみに上記のモザイク図の模様は,家庭環境によっても違っています。貧困層と富裕層の子どもの図を左右に並べると,これが結構違っている。家庭環境とリンクした,自尊心格差という現象にも注意を払わねばなりません。この点については,今月20日頃公開の日経デュアル記事で触れることにいたします。お楽しみに。

 急に暑くなってきました。もう,昼食後に歩いてコミュニティセンターに行くことはできません。夏の間は,図書館の本はファミリーマート荒崎入口店に取り寄せ,涼しくなった夕方に自転車で取りに行くことにします。

 みなさまも,熱中症などにはご注意を。