2018年1月22日月曜日

ロスジェネの見当づけ

 「われわれはロスジェネだ,ツイてない世代だ」。こういうことを言う人がいますが,私からすれば「あなたは違うでしょ」と言いたくなることが結構あります。

 具体的に,どの世代が該当するのか。印象論やフィーリングではなく,データをもとに見当をつけてみましょう。

 ロスジェネ,ツイてない世代とは,学校卒業時が就職氷河期と重なった世代です。大学進学率が高まっている時代では,学校から社会への移行は大卒時(22歳時)がメインですので,このステージの就職率に注目しましょう。

 大学卒業者の就職率は,文科省『学校基本調査』から知ることができます。この資料に載っている計算済みの就職率は卒業生ベースのものですが,就職の意思のない大学院等進学者は分母から除いたほうがいいでしょう。また,医学部卒業生はキャリアが臨床研修医から始まることが多いので,この部分は分子に加えるべきでしょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 私は以下の計算式をもとに,各年の4年制大学卒業者の就職率を男女別に計算しました。

 ・就職率=(就職者数+臨床研修医数)/(卒業生数-進学者数)

 昨日,1990~2017年卒業者の就職率推移をツイッターで発信したところ,多くの人に関心を持っていただけました。ここでは,もうちょっと時期を遡って,1980年の卒業生からの推移を跡付けてみましょう。


 80年代前半では,性差が大きかったようです。85年に男女雇用機会均等法が制定されたこともあってか,男女差は縮まり,90年代初頭には男女とも85%を超えました。

 しかしバブル崩壊後,不況が深刻化し,就職率は急落。世紀の変わり目にボトムになります。私は99年に大学を出ましたが,,まさに「どん底」でした。08年のリーマンショックの頃が大変だったといわれますが,それよりも谷がもっと深かった。

 最近は空前の人手不足もあり,大卒者の就職率はバブル期に匹敵する水準に戻っています。女子は過去最高です。今世紀初頭のボトムを境に男女差が逆転していますが,99年に男女共同参画社会基本法が制定され,その理念に向けた計画が実施されていることと関連があるのでしょうか。

 上記のグラフから,真正の「ロスジェネ」は世紀の変わり目に大学を出た世代ということになりそうですが,正確な整理をしてみましょう。私は76年生まれですが,ストレートの場合,この世代が大学を出るのは99年春です。この年の大卒者の就職率は,男女込みでみると68.3%と,7割に達していませんでした。

 各世代の大学卒業年の就職率を,時系列の表で整理すると以下のようになります。


 藍色で塗りつぶしたのは,大卒時の就職率が70%に満たない世代です。世紀末から今世紀初頭に大学を出た,76~81年生まれ世代が該当します。私の世代も入ってしまっていますが,大卒時の就職率からうかがえる「ロスジェネ」といえそうです。

 ピンク色をつけたのは,逆にツイていた世代で,大卒時の就職率が85%を超えていました。91年卒業生では89.2%,9割近くだったのですね。名作『就職戦線異状なし』が上映された年ではないですか。バブル世代と,最近の世代が該当します。

 今後も人手不足により,売り手市場は続くでしょう。今年春に大学を出るのは95年生まれ世代ですが,02年施行のゆとり学習指導要領で育ち,シューカツも「ゆとり」ですか。いいなあ。

 それはさておき,2016年10月時点の人口ピラミッドに,上表と同じ色をつけてみましょう。下図をご覧ください。


 真正のロスジェネと見積もった,76~81年生まれ世代は,2016年10月時点では35~40歳です。人口量の合計は993万人と,1000万人近くになります。東京都の人口より少し少ないくらいです。結構な数ですね。

 生まれてくる家庭や地域はもちろん,時代も選べません。学校から社会への移行期が氷河期と重なったことで,不遇を強いられている世代。新卒至上主義が支配的なわが国では,「やり直し」も叶わず,非正規雇用に滞留している人が多い世代。正規就職・結婚・出産といったイベントを首尾よくこなせた人と,そうでない人の格差が大きい世代…。

 この世代は現在子育て中であり,あと少しすると,子どもが高校や大学に上がる時期になります。これまでのように,教育費負担を家計に押し付けるやり方は通用しなくなるでしょう。親世代の年収が順調に上がるという年功賃金制も崩れていますので。

 あと25~30年すれば,この世代も高齢期に入りますが,年金など納めておらず,社会保障を得られない人も続出するでしょう。現在の韓国のように,高齢者の自殺率がメチャ高の社会になっているかもしれません。
https://twitter.com/tmaita77/status/938686544650440704

 しかしピンチはチャンス。教育費の私負担型から公負担型の社会への変革,65歳の定年制社会から生涯現役社会への変革,といった社会変動を,この世代がけん引してくれる可能性もあります。

 これまでの社会の維持の仕方が通用しない,最初の世代なんですから。その意味で,「黒船」世代という別名を与えてもいいんじゃないかと思ったりします。開国の街・久里浜の「黒船商店街」を歩いていて,このネームを思いつきました。

2018年1月19日金曜日

教員と民間の労働時間差

 日本人の働き過ぎはよく知られていますが,教員はその中でもとくに酷い。

 「大変なのは教員だけではない」という声を聞きますが,データでみても,教員の労働時間は他の職業に比して格段に長くなっています。過重労働と言われる医師や自動車運転手をも凌駕しています。

 日本では,民間より教員の労働時間が(はるかに)長いのですが,他国ではどうなのでしょう。教員と民間の労働時間差の国際比較はまだやってませんでしたので,それをしてみようと思います。労働時間の絶対量だけでなく,同じ社会の一般労働者との比較を行うことで,日本の教員の特異性がもっとはっきりします。

 私は,各国の30~40代男性について,全就業者と中学校教員の就業時間を明らかにしました。働き盛りの男性に絞った比較です。以下の2つの指標を計算しました。

 1)週間の平均就業時間
 2)週60時間以上就業している者の割合

 全就業者のデータは,ISSPの「国民性調査」(2013年)から計算しました。中学校教員は,OECDの国際教員調査「TALIS 2013」より明らかにしました。両調査では,有業者に週間就業時間を答えてもらっていますが,その分布をもとに,上記の2つの指標を算出した次第です。

 日本のデータを示すと,週間の平均就業時間は全就業者が50.5時間,中学校教員が56.5時間です。週60時間以上の長時間就業者比率は,順に26.1%,54.3%です。

 年齢と性別を揃えた比較ですが,違いますねえ。週60時間超の長時間就業率は,教員は民間の倍以上です。日本の30~40代男性教員の半分以上が,週60時間以上働いていると。

 このように,日本では明らかに「民間 < 教員」なのですが,傾向は国ごとに違っています。データを計算できた,21か国の一覧表をみていただきましょう。


 日本の教員は,平均就業時間も長時間就業率もダントツでトップですが,ここでの主眼は民間との差です。

 右端の倍率をみてほしいのですが,教員が民間を上回る国(1.0以上)は,平均就業時間は3か国,長時間就業率は5か国だけです。多くの社会において,教員の労働時間はフツーの労働者より短くなっています。

 お隣の韓国は注目されますね。全就業者では,わが国と肩を並べる過労大国ですが,教員の労働時間はかなり短くなっています。週間就業時間は35.7時間,長時間労働率は11.1%です。

 韓国の生徒の教員志望率は世界で最も高いそうですが,分かるような気がします。儒教社会ゆえ,教員の社会的地位も高いですからね。前にみたところによると,教員給与の対民間比も高くなっています。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-4996.php

 上表の下段の長時間就業率をグラフにしておきましょう。横軸に全就業者,縦軸に中学校教員をとった座標上に,21か国をプロットしてみました。


 斜線は均等線で,このラインより上にあるのは,教員の長時間就業率が民間より高い国です。日本を含め5か国ですが,日本は民間との開きが格段に大きくなっています。

 日本の教員は,労働時間の絶対量が多いと共に,同じ社会の労働者全体と比しても酷いこと,そのような社会は国際的にみて稀有であること,を押さえておくべきでしょう。

 労働から離れた自由な思索・研鑽の時間を持つことは,高度専門職のメルクマールといいますが,民間より教員の労働時間が短い他国では,それが日本よりは実現されているのでしょうか。

 聖職者,労働者,高度専門職…。日本では未だに,複数の教師像が並存し,こんがらがっています。

 抽象的な話はさておき,日本の教員は民間に比して労働時間は長く,給与も低い(上記リンク差のニューズウィーク記事参照)。しかも,その差は際立っている。教員の労働条件が,世界で最も悪い国といっても言い過ぎではないように思えます。

 社会全体の「働き方改革」が目指されていますが,とりわけ教員の「働き方改革」は,待ったなしです。その成果は,今年に実施される,OECDの国際教員調査「TALIS 2018」のデータで可視化されることでしょう。

2018年1月17日水曜日

『小学校学習指導要領らくらくマスター』

 実務教育出版より,『小学校学習指導要領らくらくマスター』が刊行されました。毎年出している,「らくらくマスター」シリーズの学習指導要領バージョンです。
https://jitsumu.hondana.jp/book/b329718.html


 教育課程の国家基準である学習指導要領は,教員採用試験の教職教養において大きな位置を占めています。昨年の春に小学校新学習指導要領が公示されたことを受け,新企画で出してみよう,ということになった次第です。

 小学校新学習指導要領は,総則,各教科,特別の教科・道徳,外国語活動,総合的な学習の時間,特別活動,という6つのチャプターからなります。

 新聞等でご存知かと思いますが,改訂の目玉は,1)高学年の教科に外国語を新設,2)道徳の教科化,3)中学年から外国語活動を実施,の3点です。

 本書では,上記の6つの章構成のもと,内容を43のテーマに区分けして紹介しています。各テーマの頻出度(A~C)を示し,効率のよい学習ができるよう配慮しました。また重要語句は赤字にし,フィルムで隠したドリル学習が可能です。ちょっとした空き時間や移動時間を使った学習もできます。

 この点は他の「らくらくマスター」シリーズと同じですが,本書では,冒頭に全自治体の過去5年間の出題データを掲げています。上記の43テーマの内容が,各自治体の過去5年間において何回出題されたかです。

 これをみると,自治体ごとに色が出ています。愛媛県では9教科の目標・内容が毎年もれなく出ている,広島県では外国語活動が必出…。これをもとに,自分が受ける自治体の傾向を把握し,独自のプランを立てるのもいいでしょう。

 学習指導要領の原文は,読んでいて退屈ですが,本書ではちょっとしたイントロダクションを添えたり,関連する実態データを盛り込むなど,現実感を持って生き生きと学習してもらえるよう,意を用いたつもりです。


 ほか,各章の末尾に一問一答の「ファイナル・チェック」を設け,理解度を確認できるようにしてあります。

 このように,いろいろな工夫を盛り込んだ本書を使って,小学校新学習指導要領の広範な内容を「らくらくマスター」していただければと思います。分厚い参考書のような体裁ではなく,192ページの薄手の本です。

 書店にはもう並んでいることと思います。小学校教員採用試験を受験予定の学生さん,どうぞお手に取ってください。

2018年1月11日木曜日

高齢ドライバーの数

 一昨日の朝,群馬県前橋市で,85歳の高齢者が運転する自動車に,女子高生2人が轢かれる事件が起きました。被害者は,意識不明の重体とのことです。
https://www.asahi.com/articles/ASL193FCCL19UHNB001.html

 加害者はといえば,以前から自動車を壁にこするなどの事故を頻繁に起こしていたため,「運転はしないように」と,家族から止められていたそうです。事故当日は,家族がちょっと目を離した隙にクルマで出かけてしまったそうで,被害者・加害者双方の親族にとって,やりきれない思いでしょう。

 高齢化に伴い,高齢ドライバーの絶対数は増えてきています。警察庁の『運転免許統計』によると,75歳以上の運転免許保有者は,2001年では154万人でしたが,2016年では513万人に増えています。ちょっと怖い…。
http://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/index.htm

 これは実数ですが,2016年の75歳以上人口(1691万人)に占める割合にすると,30.3%となります。後期高齢者の3人に1人が免許を持っていると。免許を持っているだけで運転しない人も多いでしょうが,高齢ドライバーの量の指標にはなります。

 この値を都道府県別に計算し,ランキングにすると,以下のようになります。2016年末の免許保有者数を,同年10月時点のベース人口で割った%値です。


 長野と群馬では,4割を超えています。後者は,一昨日,冒頭の悲劇が起きた県です。本県では,ほんの100メートルの移動にも車を使うという記事を読んだことがありますが,そこまで生活に染みついていると,高齢になっても,免許を手放すのは躊躇われるでしょう。

 一方,都市部では保有率が低くなっています(右下)。東京は,17.9%です。交通網が発達しているので,自家用車の必要性は低し。土地代が高いので,クルマの維持費もバカになりませんからね。

 上記のランク表をツイッターで発信したところ,「上位の県には住むな。老人に轢き殺されるぞ」というリプがありましたが,そういう危険のレベルを可視化する指標を計算してみましょう。

 高齢ドライバーの家族は「小さい子を轢きはしないか」と心配し,幼児の親は「この子が老人の暴走車に轢かれはしないか」と気をもんでいます。幼児の場合,危険回避もままなりませんので。

 私は,幼児人口あたりの高齢ドライバー数を県別に計算してみました。5歳未満人口100人につき,75歳以上の運転免許保有者が何人かです。危険回避ができない幼児100人につき,危険運転予備軍がどれほどいるか。

 分母は2016年10月,分子は同年末時点の数値です。


 一番下の全国値をみると,分子は分母よりちょっと多いくらいですが,県別にみると,値は大きく違っています。

 トップは秋田で,幼児100人につき危険運転予備群が186人,倍近くいます。最も低いのは東京で,こちらは幼児人口の半分ほどです。先の表でみたように,この大都市では高齢者の免許保有率が低いためです。

 赤字は150(1.5倍)を超える数値ですが,これらの県は,幼い命が危険に晒される可能性が高い県といえます。惨劇が起きぬよう,対策を講じる必要があるでしょう。

 以上は2016年の試算値ですが,これから先,全国的にこの数値は上がってきます。量的に多い団塊の世代が,後期高齢者のステージに入ってきますので。

 国立社会保障・人口問題研究所の『将来推計人口』によると,2030年の75歳以上人口は2278万人と見込まれます(中位推計)。最初の表でみた,2016年の当該年齢層の運転免許保有率(30.3%)を乗じると,691万人となります。2030年の高齢ドライバー数の推計値です。

 同じやり方で,近未来の高齢ドライバー数を都道府県別に出すこともできます。各県の75歳以上人口の推計値に,2016年の免許保有率(最初の表)をかけてです。こうして出した高齢ドライバー数を,5歳未満人口の推計値で割れば,先ほどの表と同じ危険度指標になります(幼児100人につき,高齢ドライバーが何人か?)。

 2030年の県別の幼児危険度をみると,身震いする思いがします。幼児100人に対する高齢ドライバー数が200人(2倍)を超える県がほとんどです。3つの階級で塗り分けた地図を,2016年と2030年で対比すると以下のようになります。


 現在の後期高齢者の免許保有率が変わらないと仮定した場合の事態予測ですが,恐ろしいですねえ。2030年の首位の徳島では,危険運転予備軍の量が幼児数の3倍です。超高齢化社会の恐怖を見て取れます。

 まあこの頃には,自動ブレーキを備えたクルマや,自動運転車もかなり普及しているでしょう。医学の進歩により,高齢者の認知症を予防するような特効薬も開発されているかもしれません。

 またドローン技術の発達により,地方であっても,クルマを使わないで済むような生活条件が整っている可能性もあります。

 しかし現在はまだ,そんなユートピアからほど遠い状況にあります。私も,ここに越してきて3日後,サイクリングをしていたら,後ろからきた軽トラに接触されて転倒しました。ドライバーは80くらいの高齢者で,「前をよく見ていなかった」とのこと。

 事故処理をしてもらった警察官から,「東京と違って,この辺りは高齢ドライバーが多いので,クルマを見かけたら停まってくれるとは思わないほうがいい」と言われました。それ以降,十分に注意しています。

 私の郷里の叔父・叔母は,75歳でクルマの運転をピタッと止めましたが,一定年齢に達したら,こういう判断もしてほしいものです。今では,免許返納者に対する各種の特典も充実しています。

 昨日の朝日新聞に,岐阜県の山間に移住した男性が,高齢者の送迎を自家用車で行っているという記事が出ていますが,個人でも,こういう活動はできるのですね。行政は,こうした志を後押しすべきです。
https://www.asahi.com/articles/ASKDQ45GNKDQOIPE00K.html

2018年1月6日土曜日

女性の最貧国

 今から10年前の2007年,「ワーキング・プア」という言葉が流行語大賞に選ばれました。和訳すると「働く貧困層」,就労しているにもかかわらず,最低限の生活を営むだけの収入しか得られない人のことです。

 OECDの国際成人学力調査「PIAAC 2012」では,収入のある人の年収を,国民全体の中での階層に割り振っています。以下の6つの階層区分です。
http://www.oecd.org/skills/piaac/publicdataandanalysis/

 Less than 10 
 10 to less than 25
 25 to less than 50 
 50 to less than 75 
 75 to less than 90 
 90 or more

 一番下は,下位10%未満です。この最下層に属する者の割合を,性別・年齢層別にみると衝撃的な事実が分かります。下図は,男女の年齢曲線を,日本とスウェーデンで比べたものです。



 日本では,男女差がとても大きくなっています。男性の働き盛りでは,最下層のプアは1割もいませんが,女性はさにあらず。加齢と共に上昇していきます。一方,北欧のスウェーデンでは性差がほとんどありません。

 理由は明白。日本では,女性は結婚・出産すると正規雇用を辞し,家計補助のパート就労が多くなるためです。しかし,女性の社会進出が進んだスウェーデンはそうではない。出産・子育て期でも,女性の大半はフルタイム就業です。上のグラフには,そうした両国の違いが表れています。

 未婚者と既婚者に分けてみると,日本の女性にとって結婚が「厄災」であることが知られます。上記調査では,「あなたは配偶者・パートナーと同居しているか」と問うています。既婚者でも配偶者と別居しているケースはあるでしょうが,ひとまず,この問いにイエスと答えた人を既婚者とみなしましょう。

 各国の30~40代男女のサンプルを未婚と既婚に分け,上記の意味でのプア率を計算してみました。年収が,収入のある国民全体の中で下位10%未満の人の割合です。米独は年齢を訊いていないので,分析対象に含めることはできませんでした。



 25か国のデータですが,日本の特異性が際立っています。女性のプア率が高く,未婚者では36.5%,既婚者では56.5%です。働き盛りでみても,日本の既婚有業女性のプア率は半分を超えると。

 女性は結婚するといろいろ縛りが生じ,稼げなくなる国が大半かと思いきや,そうではな国も多くあります。フランス,スウェーデン,イギリスなどはそうです。女性のプア率は,未婚者より既婚者で低くなっています。

 しかし日本の女性は,未婚者と既婚者の差が大きい。女性が結婚すると稼げなくなる社会です。ゆえに結婚相手の男性に高収入を期待せざるを得ないと。男性のプア率が「未婚>既婚」であるのは,その表れです。稼げないオトコは,結婚できない。それはどの国も同じですが,日本はその度合いが高くなっています。

 上表の女性のデータを,グラフで視覚化しておきましょう。日本が女性の最貧国であることの「見える化」です。



 日本の女性のプア率が際立って高いこと,未婚者と既婚者の差が大きいこと(斜線の均等線よりずっと上),を見て取ってください。

 私はこれまで,男性の年収と未婚率の関連を何度も明らかにしましたが,「女性は高望みしてけしからん」という思いがなかったといえば,ウソになります。

 しかるに,上記のようなデータをみると「致し方ない」という気もします・

 ・女性は結婚すると稼げなくなる
 ・ゆえに,結婚相手の男性に高収入を期待せざるを得ない。
 ・今時,そういう(若い)男性は滅多にいない。
 ・よって,未婚化・少子化が進行する。

 こういう現実も存在するのではないでしょうか。日本の強固なジェンダー規範に依拠する,何とも馬鹿げたことです。

 この循環を断ち切ることが求められるのですが,根元の「女性は結婚すると稼げなくなる」を変えることがまずもって必要になります。夫婦二馬力で,ガシガシ稼げるようにすることです。保育所の増設は,そのための戦略です。保育士不足を解消するため,「保育士の月給3000円アップ」(昨年公表の「新しい経済政策パッケージ」)でよし,としている場合ではないのです。

 保育所不足=「女性は結婚すると稼げなくなる」現実は,少子化をもたらし,社会の維持・存続を脅かす。こういう危機感をもって,保育士の待遇改善に目的を特化した次世代育成税を導入したらどうか。日本教育新聞の新年号で,こういう主張をしました。興味ある方は,大きな図書館等でご覧ください。
https://twitter.com/tmaita77/status/948753698615828481

2018年1月2日火曜日

来なかった第3次ベビーブーム

 晴天のお正月ですが,いかがお過ごしでしょうか。

 年始ですので,やや大きなテーマを据えましょう。大晦日の朝日新聞に「来なかった第3次ベビーブーム 産まない,産めない」と題する記事が出ています。
https://www.asahi.com/articles/ASKDT6HWYKDTULZU014.html

 人口統計の素養がある人は,タイトルだけで内容は推して知るべしでしょう。戦後初期の第1次ベビーブーム,その子世代の第2次BB(70年代前半)があり,その流れでいくと第3次BBも起きたはずなのですが,現実はそうではなかったと。

 第1次BBは,1947~49年に生まれた団塊世代です。この期間中は,年間の出生数が250万人を超えていました。第2次BBは,71~74年に生まれた団塊ジュニア世代です。この期間中の年間出生数は200万人超え。ここでは,先行世代と幅を揃えるため,71~73年生まれとしましょう。

 上記の2世代のスパンは24歳なので,これを適用すると,論理上の第3次BB(団塊ジュニア・ジュニア)は95~97年生まれとなります。

 2016年10月時点の年齢統計を使って,この3世代の人口量を拾うと以下のようになります。出所は,総務省の『人口推計年報』です。
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/index.htm


 団塊世代は639万人,団塊Jrは596万人ですが,その下の団塊JrJrになると370万人とガクンと減ります。

 上記の朝日新聞記事で言われているように,第3次ベビーブームは来なかったようです。表の数値をもとにすると,団塊から団塊Jrへの人口再生産率は,5957/6394=93.2%と見積もられます。しかし,団塊JrからJrJrへのそれは,3701/5957=62.1%です。

 上の2世代の再生産はスムーズにいったが,JrからJrJrへの再生産はそうはいかなった。仮に,団塊から団塊Jrの時と同じ率で子が生まれた場合,団塊JrJrの数は,595.7×0.932=555.2万人になっているはずですが,現実は370万人。

 期待値と現実値の差は185万人です。これは,95~97年の3年間に生まれた世代でみた差分ですが,世代の幅を広げれば損失量はもっと多くなります。

 来るべくして来なかった第3次ベビーブーム…。それは,人口ピラミッドを一瞥するだけで分かります。


 想定される第3次BB(団塊JrJr)世代は,現在20歳前後ですが,グラフから分かるように,先の2世代から期待される人口量を大幅に下回っています。繰り返しますが,第3次ベビーブームは来なかったのです。

 それをもたらすはずだった団塊Jr世代は,私よりちょっと上の世代ですが,この世代は大変でした。大学を出たのは90年代初頭で,バブルが崩壊し,結婚・出産期が平成不況が深刻化する時期ともろに重なりました。当該世代が25~27歳になった98年に自殺者が3万人の大台にのったのは,よく知られています。

 それから暗黒の時期が続くのですが,当時の政権のキーワードは「格差があって何が悪い」「痛みを伴う改革」といったもので,若者の自立支援などは後回し。これでは,実家を出て結婚し,子を産むなど,そうできたものではありません。そういえば,山田昌弘教授の『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)が大ヒットしたのも,この頃でしたね。

 上記のピラミッドを見て,年輩の方は「若者は結婚を面倒がるようになった」とか草食化とか言うかもしれませんが,そういうメンタルの要因を取り上げる前に,その下にある社会状況に目を向けないといけません。第3次BBが起きなかったのは,90年代後半から今世紀初頭にかけての「政策の失敗」の故であるともいえるでしょう。生まれるべくして生まれなかった命が人為的に奪われたと。

 まあ今更,過去のことを糾弾しても仕方ありません。大事なのは,同じ失敗を繰り返さないことです。若者の離家を促すべく,生活の基盤である「住」の支援を強化すること,女性が結婚相手の男性に高収入を期待しなくてもいいよう,夫婦二馬力でガシガシ稼げるようにすること,そのために保育所を増設すること(保育士の待遇改善を図ること)。その財源として,次世代育成税のような課税も辞さないこと。

 先月末の記事でみたように,子どもを持てるか否かが経済力とリンクするようになっていることにも要注意。
http://tmaita77.blogspot.jp/2017/12/blog-post_27.html

 今後,森林保護税が導入されるそうですが,自然保護と並んで少子化の克服も,社会の維持存続に関わる最優先事です。そのための費用を国民で分担することに,不合理はありますまい。上の世代は誰しも,下の世代の世話になるのですから。

 元号が変わる今年が,そういう方向に向かう元年になることを願います。

2017年12月31日日曜日

2017年の総括

 今年もあと,数時間でおしまいです。今年(2017年)の総括をしようと思います。

1)引っ越し
 3月の上旬に,東京都多摩市から神奈川県横須賀市に引っ越しました。前から,「海が見える街」に住みたいと考えていたからです。横須賀といっても,北東の横須賀中央ではなく,対極の南西の長井地区です(下記マップの色付きエリア)。


 近くにソレイユの丘や荒崎公園などがあり,とてもいい所。自宅から自転車でちょっと走れば海に出れます。三崎口駅からバスで10分,バス停から徒歩15分と,アクセスはいささか不便ですが,家賃は激安で広い部屋。勤め人ではない私には,ありがたい限りです。移住っていいなあ。

 ただ三浦半島の南西に籠りっぱなしというのはよくないので,週に1回は上京することに決めています。都内の大きな書店をぶらついて,知の肥やしを得ませんとね。

2)単著刊行
 8月の初頭に,『データで読む 教育の論点』を晶文社から刊行しました。4冊目(電子書籍を合わせれば5冊目)の単著です。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364


 本ブログの一部書籍化です。盛り込みたい内容は山ほどあり,編集者さんと相談して絞りに絞ったのですが,400ページの分量になりました。

 発売から5か月経ちましたが,新宿の紀伊国屋本店ではまだ平積みにしてくださっています。図書館ウケもしているようで,都内の60の公共図書館で所蔵されています(杉並区立図書館は5冊!)。ありがたや。

 統計の本ですが,四則演算しか使っていませんので,中高生でも十分理解できる内容です。高校の学校図書館にも結構入っているようで,うれしく思います。高校の数学には,「数学活用」という科目があると思いますが,「数字で社会現象を捉える」という単元の参考書としてでもお使いくださいませ。
 
3)裁判
 1月半ばに民事裁判を起こしました。3回の口頭弁論を経て,5月末日に判決。ちゃちな事案ですが,それでも5か月はかかるのですねえ。


 望む結果は得られませんでしたが,いい経験になりました。弁護士を立てない本人訴訟でやりましたので,訴状・書面作成,裁判所への出頭など,全部自分でやりました。法廷の原告席は座り心地がよかった…。

 私はいろいろトラブルを起こす人間ですが,問題解決のオプション(持ち駒)が増えたような気がします。「裁判ってこういうもんだ」っていうのが,肌身で分かりました。

 この体験学習に要した費用(授業料)は,1万6000円くらいです。内訳は,訴状に貼った印紙代1万3000円と,民事予納金3000円くらい。「舞田は負けたので,相手の弁護士費用も請求されて破産しているだろう」とかぬかしているアホがいますが,何も知らないのですねえ。

 裁判費用について誤解している人がいますが,負けても「訴状の印紙代と民事予納金はあなたの負担ですよ」と言われるだけです。だいたい,負けたら相手の弁護士費用も負担しないといけないとなったら,怖くて訴訟なんて起こせたものじゃありません。

 私がどういう事案で訴えたかを知りたい方は,東京地裁の14階に行ってください。裁判資料(訴状・答弁書・準備書面・判決文)を閲覧できます。ただし,身分確認が行われ,氏名・住所を記した閲覧申請書も一緒にファイルされますので,個人情報が後の人に筒抜けになることにご注意を。書記官曰く,悪用を防ぐため閲覧者の情報も記録・公開するのだそうです。

4)連載打ち切り
 2016年初頭から続けていたプレジデント・オンラインの連載ですが,担当編集者のあまりのズボラさ・倫理のなさに愛想を尽かし,3月いっぱいで打ち切りました。事の詳細は,4月1日の記事で公開しています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

 この編集者ですが,肩書が「フリー編集者・ライター」に変わっています。はて,私の件で編集部をクビになったのでしょうか。

 というかこの人は正社員ではなく,形の上で編集部にぶら下がっているだけのフリーの人だったんでしょう。上記の記事を読んだ上司が怒り,「もう編集部員を名乗るな」と言われたのだと思います。この男に会社のロゴ入りの名刺を持たせるのは危険と判断したと。

 2015年末に,養護教諭向けの雑誌を作っている出版社から連載を打診されました。小さいけど真面目そうな出版社です。プレジデントの連載を引き受けた直後だったので,丁重にお断りしましたが,こっちを受ければよかったと,心底後悔しています。

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 次に,ブログについてです。2010年末に開設してから,7年が経ちました。その間に執筆した記事数は,本記事を合わせて1370本です。7年=2555日ですので,2日に1本,隔日のペースで記事をアップしてきたことになります。

 このブログも,だいぶ知名度が上がってきました。自分の思うがままの情報を発信できるメディアを持てることを,うれしく思います。今後も,精魂込めて育てていこうと考えております。

 1370本の記事のうち,どの記事が読まれているか。全期間(通算)でみたPV数ベスト10は以下です。


 トップは,2014年2月9日に書いた「職業別の生涯未婚率」。こういうデータはあまり見かけないのか,多くに方に関心を持っていただけました。県別の大学進学率の記事もウケていますね。博士論文以来のテーマですので,今後も毎年,『学校基本調査』のデータで明らかにしていこうと思います。

 今年(2017年)にアップした記事で,通算上位10位の殿堂入りしたものはありませんでした。ちょっと残念です。

 2017年は,本記事を合わせて130本の記事を書きました。この中で,よく読まれた記事のベスト10を挙げると以下のようになります。


 トップは,奨学金の記事です。給付型奨学金の創設など,奨学金改革の時流があったためか,この記事が注目されました。先週の水曜に書いた「年収と子あり率の関連」もランクイン。藤田孝典さんがいう「結婚・出産なんてぜいたくだ」の可視化です。

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 あとはそうですねえ。今年になって,病院通いがとみに増えました。CTも3回撮りました(胸部,脳,歯茎)。歯茎を切開する歯根端切除手術も2回受けました。41になりましたが,体にガタがきているのでしょうか。

 私が出入りしていた大学で社会心理学を教えておられたH先生は,40代半ばの若さで急逝されましたが,私もそんなふうになりそうな予感がします。それならそれでもいいかな…。

 しからば,いつ逝っても悔いがないよう,やりたいことを思う存分したい。願わくは,大きな創作物(作品)を残したい。こういう気持ちでいます。来年の目標(抱負)なんてありません。これまで通り,適当に食い扶持を稼ぎながら,気ままに生きていくだけです。

 私は森高千里さんのファンなんですが,春先にでも,渡良瀬橋の聖地巡礼をしたいな。調べたら,最寄りの三崎口からたった2本で行けます。京急の直通で浅草,そこから東武線の特急で足利市までです。

 来年も,本ブログをよろしくお願い申し上げます。連載の記事(日本教育新聞,日経DUAL,ニューズウィーク)もお読みいただけますと幸いです。それでは皆様,よいお年をお迎えください。

                             2017年大晦日
                               舞田 敏彦