2011年1月26日水曜日

大学進学率の将来予測

 2010年春の大学進学率は51.0%です。この数値は,将来,どうなっていくのでしょうか。

 大学進学率とは,大学入学者数を18歳人口で除した値です。この2つの要素のうち,後者は,ある程度高い精度で予測することができます。国立社会保障・人口問題研究所の推計(中位推計)によると,18歳人口は,2020年には116.1万人,2030年には89.1万人,2040年には75.6万人,2050年には68.1万人となることが見込まれています。

 次に,分子となる大学入学者数ですが,2010年春の数値は61.9万人です。仮に,この数を維持しようとすると,下表のような事態になります。


 大学入学者数はそのままで,18歳人口がみるみる減っていくのですから,大学進学率は加速度的に上昇することになります。2030年には69.5%,2050年には90.9%という,とんでもない数字が出てきます。

 これから先,現在の入学者数が維持されるなんて,あり得ないだろう,といわれるかもしれません。しかし,1992年以降,18歳人口が大きく減ってきたにもかかわらず,大学入学者数を(がめつく)増やしてきたという,(悪しき?)実績があります。どうなることやら。しかし,こうなると,子どもの世界は,目を覆いたくなるような事態になるでしょう。何しろ,大学までが義務教育のようになるのですから。

 まあ,上記の予測は極端であるとして,では,もう少し現実性のあるシナリオを考えてみましょう。今度は,大学入学者が5年ごとに2.5%減っていくという仮定を立てます。2010年の大学入学者数は62万人ですから,5年後の2015年には,61.9×0.975≒60.4万人となるであろうと考えます。以下,同じです。では,シナリオ2として,下表をご覧ください。


 このシナリオによると,18歳人口減少の大波に抗うことができず,大学入学者数も減っていくことになります。2050年の入学者数は,2010年の8割ほどに落ち込みます。こうなると,学生を集めることができず,倒産する大学も多く出てくるでしょう。しかし,このシナリオでも,大学進学率のほうは,2030年に63%,2050年には74%にも達します。まだまだ,非現実的というべきでしょうか。となると,ますます廃業せざるを得ない大学が…

 以前にもいいましたが,大学の顧客を伝統的進学層(18歳人口)のみに頼れる時代は過ぎ去った,というべきでしょう。生涯学習社会といわれる今日です。社会人など,非伝統的進学層にも目を向けていくことが求められます。