2011年2月1日火曜日

教員採用試験の競争率

 最近,団塊世代の大量退職により,教員採用試験の競争率がいくぶんか低くなっているといわれています。しかし,県によってかなり差があるようです。東京などの大都市では,倍率がかなり低くなっており,小学校では,3倍を下回った年もあるようです。これでは優秀な人材を確保できないということで,地方の学生を呼び寄せるべく,東京バスツアーのような企画も行っていると聞きます。その一方で,地方県ではまだまだ倍率が高い県が多いようです。

 文部科学省がホームページ上で公表している統計によると,2009年度採用試験(2008年夏実施)における,公立学校教員志願者は158,874人いたそうです。そのうち,合格したのは25,897人。よって競争率は前者を後者で除して,6.1倍となります。県別にみると,最も低いのは東京の4.2倍,最も高いのは鳥取の20.4倍です。なお,指定都市は,当該県に含めて算出しています。たとえば福岡市は,福岡県の統計と合算して,福岡県のものとして計算しています。


 47都道府県の競争率を地図化してみました。10倍を超える県が14県,12倍を超える県が7県あります。北東北のゾーンは,黒く染まっています。ところで,この地図の模様,1月18日の記事で紹介した,小学校教員の給与倍率の地図と似ていませんか。給与倍率とは,小学校教員(男性)の給与を,一般労働者(男性)の給与で除した値です。詳細は,1月18日の記事をみてください。

 何やら,民間と比した,教員の給与水準が高い県ほど,競争率が高い,という関係が潜んでいそうです。私は,1月18日の記事で作成した,47都道府県の小学校教員の相対給与水準と,今計算した採用試験倍率との相関関係を明らかにしました。下図がそれです。


 予想通り,正の相関でした。教員の相対給与水準が最も高い沖縄や秋田では,採用試験の競争率も高い水準にあります。反対に,教員の給与が民間を下回っている東京,神奈川,大阪は,採用試験の倍率が低くなっています。両変数の相関係数は0.722であり,1%水準で有意です。

 教員採用試験の倍率を決める最も大きな要因は,各県の教員の年齢構成であることに間違いはないでしょう。東京や大阪のような大都市では,団塊世代が相対的に多く,現在のところ,大量採用に踏み切っているだけだ,と言われればそれまでです。

 しかし,人間は所詮,エコノミックアニマル的な側面も持っています。あまり上品な話ではありませんが,優秀な人材を確保しようとするなら,待遇改善という面にも注目しなければならないことは事実でしょう。教育基本法第9条2項も,「教員については,その使命と職責の重要性にかんがみ,その身分は尊重され,待遇の適正が期せられる」べきことを定めています。

 回を改めて,教員の給与水準と離職率の関連を解明する作業も手掛けてみたいと思います。