2011年2月14日月曜日

博士号取得者

 大学院博士課程修了者には,博士号取得者と,それを取得しないで満期退学する者の2種類が含まれています。最近,文科省の政策もあってか,修了者に占める博士号取得者の比重が高まってきているようです。

 文科省『学校基本調査(高等教育機関編)』には,大学院博士課程修了者の数が計上されていますが,修了者全体から満期退学者の数を引いた数が,博士号取得者であると考えられます。この資料をもとに,1990年から2010年までの動向を5年刻みで追ってみました。


 修了者の数が5,812人から15,842人へと2.7倍に増えていることは,以前の記事でみた通りです。しかし注目されるのは,博士号取得者数の伸びで,この20年間で3.1倍に増えており,全体の増加倍率を上回っています。その結果,修了者に占める博士号取得者の比率も上昇しており,2010年では75%と,4分の3を占めるに至っています。

 ところで,これは文系も理系もひっくるめた全体の傾向ですが,変化が最もドラスティックなのは,やはり人文系でしょう。そこで,人文科学系(文学,史学,哲学等)博士課程修了者に限定して,この20年間の変化を観察してみることにしました。


 人文科学系の博士課程修了者は,1990年では631人であったのが2010年では1,393人になっています。上図は,その組成の変化をみたものですが,博士号取得者の比重の増加が明らかです。図の左上の構成比グラフをみると,1990年の16%から2010年の43%へと激増しています。人文系でも,博士号取得者が半分近くを占めるようになりつつあります。

 人文系の博士号は,かつては研究の集大成のような意味合いがありましたが,最近では,理系と同様,研究者のライセンス的なものへと変わってきています。ところが,このようにして量産された博士号取得者たちの活躍の場が限られていることは,よく指摘されるところです。せっかくの人的資源を枯れさせることがないよう,ノン・アカデミックなキャリアパスの整備などの施策が要請されます。