2011年9月5日月曜日

職業別の就業時間

 学校の教員の仕事は,キツイといわれます。過労による精神疾患の問題なども,よく取り沙汰されます。しかるに,世の中には,いろいろな職業があります。その中には,教員よりも大変な仕事だってあるでしょう。今回は,就業時間という観点から,学校教員を,全職業の中に位置づけてみようと思います。

 総務省の『国勢調査』は,就業者の1週間の就業時間を調査しています。一部の世帯のみを抽出した抽出詳細結果から,272の職業のデータを得ることが可能です。私は,週60時間以上就業した者の比率と,週間の就業時間の平均値を,それぞれの職業について調べました。2005年調査のもので,同年の9月24日から30日の1週間の数字です。出所は,下記サイトの表11です。常勤の男女雇用者のデータであることを申し添えます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001015844&cycleCode=0&requestSender=search


 まずは,学校教員の数字を,全体の平均値や他の目ぼしい専門職と比較してみましょう。週60時間以上働いた,過労状態の者の比率は,小学校教員では10.6%です。この値は,全体の平均値と同じです。中学校では,23.7%と倍増します。放課後や休日における部活の指導などがあるのでしょう。右欄の平均週間就業時間でみても,教員の中では,中学校が最も長くなっています。

 ですが,中学校教員の値とて,医師や法曹といった専門職よりは小さくなっています。医師では,およそ4割の者が週に60時間以上働いています。昨今,医師不足の問題がよくいわれますが,さもありなんという感じです。

 学校教員の就業時間は,全体的な平均よりは長いようですが,上には上がいそうです。では,272の職業の全体図の中に,学校教員の値を位置づけてみましょう。下図は,横軸に週60時間以上就業者率,縦軸に平均週間就業時間をとった座標上に,272の職業をプロットしたものです。点線は,272の全職業の平均値です。


 座標の右上に位置する職業ほど,「キツイ」職業ということになります。そこには,先ほどみた医師のほか,理容師,飲食店主,および小売店主などが位置しています。雇われの小売店主としては,たとえば,コンビニやファーストフードチェーン店の店長さんなどが考えられます。

 さて,学校の教員はとえいば,幼稚園と小学校の教員は全体の分布のほぼ中央,中学・高校・大学の教員はそれよりもやや右上に位置しています。学校教員の就業時間は,平均的な水準よりも長いようですが,それを上回る職業がちらほらあるのも事実です。

 もっとも,仕事の「キツさ」というのは,就業時間だけで測れるものではありません。今回は,ある一面だけからの相対化をしたまでのことです。