2011年10月7日金曜日

首都圏の高校非進学率①

 文科省の『学校基本調査』によると,2010年春の公立中学校卒業者はおよそ113万人です。このうちのほとんどが高校進学者でしょうが,そうでない者もいるでしょう。文科省の統計では,中学校卒業者の進路のカテゴリーとして7つ設け,各々に該当する人数を集計しています。2010年春の進路構成は,下の表のようです。


 カテゴリーAの高校進学者が111万人ほどで,全体の97.9%を占めています。高校とは別の上級学校進学者(B~D)は0.4%です。それ以外の,E~Gの3カテゴリーに当てはまる者は,上級学校への進学を選択しなかった,いわゆる「高校非進学者」として注目される存在です。その絶対量は約1万9千人であり,全体に占める比率は1.7%となっています。

 ところで,高校非進学者の比率(高校非進学率)は,地域によって異なります。4月30日の記事では,東京都内49市区の高校非進学率が,各地域の教育扶助世帯率と強く相関していることを明らかにしました。このことは,貧困という外的な要因によって,高校に行きたくても行けない生徒が存在することを示唆します。最近の深刻な不況を思えば,首肯できるところです。2010年度より導入されている「高校無償化政策」は,こうした事態の解消を意図したものといえましょう。

 文科省の『学校基本調査』のサイトを何気なく眺めていたら,何と何と,中学校の卒業後の進路構成が,全国の市区町村別に集計されている表がアップされていることに気づきました。これを使えば,東京都以外の府県の市町村についても,高校非進学率を出すことができます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 私は,首都圏(埼玉,千葉,東京,神奈川)の213市区町村について,中卒者に占める高校非進学者の比率を計算しました。2010年春の数字です。東京には,私立中学が結構ありますので,他県と足並みをそろえるために,公立中学校卒業生のデータで計算しました。分子の高校非進学者とは,上表でいうE~Gの3カテゴリーに該当する者のことです。

 213市区町村の高校非進学率の分布を図示すると,下図のようになります。


 0%の地域もあれば,5%を超える地域もあります。4%を超える地域は6地域,5%を超える地域は3地域です。地域によって,高校非進学率はかなり異なるようです。

 なお,213地域のうち,144市区の率の平均値は1.7%,69町村のそれは1.3%です。都市的な地域のほうが,高校非進学率が高いことがうかがわれます。自地域に高校がないというような地理的な要因よりも,貧困といった社会的な要因の関与が大きいのでしょうか。

 次回は,4都県内の213市区町村を,高校非進学率の値に基づいて塗り分けた地図をご覧に入れようと思います。