2012年2月7日火曜日

外国人人口率

国際化・グローバル化が進行している今日,わが国でも,外国人人口が増えてきています。総務省『国勢調査報告』の時系列データによると,外国籍の居住者(以下,外国人)の数は,1965年では59万人でしたが,2010年では165万人になっています。

 外国人人口が全人口に占める比率の推移をとってみると,下表のようです。


 1985年までは6.0‰ほどで推移していましたが,90年以降,伸びに転じます。2000年には10.3‰になり,2010年には12.9‰に達します。12.9‰ということは,およそ78人に1人の割合です。

 なお,2010年の外国人165万人の国籍をみると,中国(27.9%),韓国・朝鮮(25.7%),ブラジル(9.3%),フィリピン(8.9%),が多くなっています。これらだけで,全体の7割を占めています。

 次に,外国人人口の比率を年齢層別に出してみましょう。2010年の私の年齢層(30代後半)の場合,外国人人口は17万人,ベースの人口は979万人ほどですから,求める比率は17.4‰になります。

 年齢層別の外国人人口率の時代変化を観察してみましょう。例の社会地図形式によって,結果を上から俯瞰してみます。


 1990年以降,生産年齢人口の部分に高率ゾーンが広がってきています。今日では,20代の外国人人口率が25‰(40人に1人)を超えています。おそらく,大学や大学院への留学生が増えているためでしょう。

 むろん,外国人の多くは就労を目的として来ていますから,30代や40代といった働き盛りの層でも,外国人人口率はじわりじわりと高まってきています。

 最後に,地域別の外国人人口率を計算してみます。2010年の『国勢調査』のデータから,外国人人口率を都道府県別に出すと,最も高いのは東京で24.2‰です。さすが大都市ですね。この大都市内部の地域別(市区町村別)に比率を出し,地図化してみると,以下のようです。


 外国人人口率は,東側の区部で明らかに高くなっています。黒色は,40‰(25人に1人)を超える区です。新宿区(78.9‰),港区(63.4‰),豊島区(62.8‰),荒川区(57.2‰),および台東区(44.8‰)が相当します。

 新宿区では,住民の約13人に1人が外国人です。うーん,分かるなあ。歌舞伎町のコンビニやファースト・フード店に行くと,商品名が日本語,中国語,そしてハングルの3言語で記されていたりするし。

 六本木ヒルズのある港区では,世界的なビジネスを手掛ける外国人が多く,荒川区や台東区では,製造業で働く外国人労働者が多いのではないかしらん。

 地域によっては,住民の多国籍化が進んでいるようです。となると,外国人の子弟の教育をどうするか,という問題が頭をもたげてきます。就学という最もプライマリーな次元でみると,外国人の子どもの不就学という問題が横たわっています。

 いくつかの自治体を対象とした,2006年度の文科省調査によると,就学年齢にある外国人の子弟のうち,不就学の者の比率は1.1%だそうです。日本人の子どもの不就学率よりはるかに高い水準です。不就学の理由としては,学校に行くお金がない(15.6%),日本語が分からない(12.6%),という理由が多いそうな。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/001/012.htm

 現在では,外国人向けの優れた日本語教材が開発されるなど,状況は好転しているものと思われます。取組のいっそうの進展が期待されます。

 ところで,今回は東京都内の地域別の外国人人口率を観察するにとどまりましたが,日本全国の市区町村でみれば,この値がもっと高い地域もあるのでは。東北の郡部では,労働力不足や嫁不足のため,外国人を積極的に受け入れている地域があると聞きます。

 下記サイトの表41から,全国の市区町村別の外国人人口を知ることができます。これを,各地域の全人口で除せば,それぞれの外国人人口率を計算できます。はて,その頂に位置するのはどこか。そこでは,どういう社会生活が営まれているか。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001034991&cycode=0

 この作業は,今後のわが国の行く末を占ううえでも,意義のあることといえましょう。社会数学の授業では,こういう課題を出すとよいのかもな。