2012年2月27日月曜日

教員の年齢構成の変化

団塊世代の教員の大量退職により,世代交代がなされているとはいえ,教員の高齢化が進んでいることは,まぎれもない事実です。2010年の文科省『学校教員統計調査』の中間報告によると,公立小学校の本務教員のうち,50代以上の者が38.4%をも占めています。約4割。教員の5人に2人が,50歳以上ということです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172

 しかるに昔は,状況はまったく違っていたことでしょう。昔といっても,人によってイメージする時代は異なるでしょうが,戦後初期の頃までさかのぼってみるとどうでしょうか。私は,1950年(昭和25年)における,公立学校の教員の年齢構成を調べてみました。「6・3・3・4」の新教育制度が発足してまだ間もない頃です。子どもは多いが施設は貧弱,教える内容の大転換・・・。混乱する現場を切り盛りする教員集団の組成は,どういうものだったのでしょうか。

 資料は,文部省『学校教員調査報告・昭和25年4月30日現在』というものです。表題の時点における,公立学校の年齢別の本務教員数を知ることができます。総務省統計局の統計図書館で本資料を閲覧したのですが,60年以上も前のものなので,もうボロボロでした。現物を痛めるといけないので,必要箇所の複写は,係員の人にやっていただきました。複写した頁の写真を掲げておきます。手前は総数表,後ろは女表です。
http://www.stat.go.jp/training/toshokan/4.htm


 まずは,公立小学校の本務教員の年齢構成を,1950年と2010年で比較してみましょう。下図は,両年について,1歳刻みの年齢人口ピラミッドを描いたものです。各年齢の教員が全体の何%を占めるかが分かります。性別の組成も読み取れるようにしました。全教員数(100%に相当)は,1950年は308,801人,2010年は384,702人です。


 この60年間の変化はドラスティックです。1950年では下層部が厚く,2010年では上層部が厚くなっています。10歳ごとの簡略図でみると,1950年はピラミッド型,2010年は逆ピラミッド型であるのが一目瞭然です。

 1950年では,30歳未満の教員が全体の63.0%を占めますが,細かくみると,10%(10人に1人)が20歳未満です。今なら,子どもと括られるような年齢です。教員は大学を出ないとなれないのに何で?と思われる方もいるでしょうが,おそらく助教諭という職種であると思われます。

 助教諭の資格要件は,臨時免許状(有効期限3年)を持っていることですが,この免許状は,各県が実施する教育職員検定に合格することで取得することができます。大学で教職課程を修めている必要はないわけです。深刻な教員不足にあった当時,若い助教諭を大量採用することで何とかしのいでいたのでしょう。事実,1951年の公立小学校の本務教員のうち,助教諭の占める比率は23.4%にもなります(文部省『日本の教育統計-新教育の歩み-』1966年,102頁)。ほぼ4人に1人です。

 あと一点,男女の組成ですが,まあ小学校ですので,昔も女性教員が多かったようです。しかし1950年では,年齢段階によって女性教員の比重が大きく異なります。20代は59.7%,30代は39.4%,40代は23.7%,50代は10.9%です。20代から30代にかけて20ポイントも落ちます。当時は,結婚退職をする女性教員が多かったのでしょう。定年まで職を全うする女性教員はかなり少なかったことがうかがわれます。現在では,そのようなことはないようです。

 次に,公立中学校の本務教員の年齢構成の変化をみてみましょう。上図と同様,1歳刻みの年齢ピラミッドをつくってみました。公立中学校の本務教員数は,1950年は175,193人,2010年は216,976人です。


 中学校段階でみても,1950年はピラミッド型,2010年は逆ピラミッド型という基本構造が観察されます。中学校では,小学校に比して女性教員率が小さくなりますが,昔に比べたら,赤色のシェアは拡大しています。公立中学校教員の女性教員率は,1950年では22.8%でしたが,2010年では41.4%まで増えています。

 予想はしていましたが,戦後初期の頃の教員集団は若かったのですね。小学校では,5人のうち3人が30歳未満。混乱の時代を,若いパワーで乗り切っていたことがうかがわれます。

 上記の文部省『学校教員調査』には,教員の担当授業時数や平均月給額のような勤務条件指標も掲載されています。この資料を活用して,昔の「せんせい」の状況を復元する作業を行ってみようと考えています。現代の教員の状況を逆照射してみるためです。

 週に1回くらいのペースで,統計図書館通いをしなければ・・・。「日本の古本屋」のサイトで,この資料を売っている古書店を見つけたのですが,目玉が飛び出るような額がついているので,購入は叶いません。まあ,これから暖かくなってくるので,自発的な「出勤日」を設けるのもよいかと思っています。