2012年5月18日金曜日

年齢層別の就業状態の変化

3月5日の記事では,『国勢調査』(2010年)の栃木県のデータを使って,年齢層別の就業状態を明らかにしました。現在は,産業等基本集計結果が全県分公表されていますので,全国について,同じ統計を作成することが可能です。

 『国勢調査』の産業等基本集計の全国結果は,下記サイトで閲覧できます。表1-2から,15歳以上の国民の労働力状態を年齢層別に知ることができます。表5-1からは,就業者の従業上の地位構成(正規,派遣,バイト・・・)を,同じく年齢層別に明らかにできます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001038689&cycode=0

 私はこれらのデータを使って,就業状態で塗り分けた年齢ピラミッドをつくってみました。最近の変化もみるため,最新の2010年ものと,10年前の2000年のものを作図しました。この10年間で,各年齢層の就業状態はどう変わったのでしょう。まずは,男性のピラミッドをみていただきましょう。


 図の目盛の単位は万人です。左側は2000年,右側は2010年のピラミッドです。10代や20代前半では学生(通学)が多く,60代以降では,どのカテゴリーにも該当しない「その他」が多いことについては,説明は要りますまい。

 両年次のピラミッドの模様を比べると,全体的にみて,青色の正規雇用の領分が減り,代わって赤色の非正規雇用(派遣・バイト)が広がっています。就労の「非正規化」が進行していることがうかがわれます。黒色の状態不詳者(回答拒否者)が増えていることも気がかりです。

 この10年間の変化は,女性でみると,もっとドラスティックです。下図は,女性の就業状態ピラミッドです。


 女性の場合,オレンジ色の家事(専業主婦)の領分が大きいのですが,それは脇に置いて,赤色の非正規雇用の広がりが男性にもましてクリアーであることに注目ください。現在では,働く女性の半分以上が非正規雇用です。

 次に,私の年齢層である30代の後半に焦点を当ててみます。図の点線で挟まれた年齢層の部分を拡大してみましょう。


 30代後半人口は,この10年間でかなり増えています。団塊ジュニアの世代がこの年齢層にさしかかっているからです。

 その組成の変化をみると,男性でも女性でも,正規雇用が減り,その分,非正規雇用が増えています。女性では,全体の3割近くが派遣・バイトです。女性では,家事(専業主婦)のウェイトが減っていることにも注目。共働きでないとやっていけない状況が強まっていることを教えています。

 なお,どのカテゴリーにも該当しない「その他」は,30代後半の場合,いわゆるニートに近い輩と思われますが,このグループの比率は低下しています。しかし,回答を拒否した状態不詳の者の比率が大幅に増えていることを考えると,実態は逆なのではないか,という懸念が持たれます。上表の数字は,30代の非正規化,脱社会化の進行をうかがわせるものとも読めます。

 しかし,状態不詳の者(回答拒否者)の増加が気になりますねえ。自分のみじめな状態を知られるのが嫌で回答を拒否するのか,忙しすぎて回答をする暇がないのか。『国勢調査』への回答拒否の深層を知るには,回答拒否率がどういう地域で高いのかを調べることも必要かと存じます。

 社会階層による棲み分けが明確な東京都の地域別データを使って,この課題を手掛けてみようと思っております。