2012年7月10日火曜日

国民の悩みや不安

公的な世論調査のデータをもとに,1990年代以降の日本社会の状況を描く作業をしています。90年代以降,日本社会に暗雲が立ち込めてきたことに異論を唱える者はいないでしょう。その「暗雲」を,目に見える形で表現することを意図しています。

 前回は,「これから先,生活が悪くなっていく」と感じている,展望不良状態の者の比率を明らかにしました。今回は,悩みや不安を感じている人間がどれほどいるかをみてみようと思います。

 内閣府が毎年実施している『国民生活に関する世論調査』では,20歳以上の対象者に対し,「日常生活の中で悩みや不安を感じているか」と尋ねています。
http://www8.cao.go.jp/survey/index-ko.html

 この問いに対し,「感じている」と答えた者の比率は,1990年では51.0%,ちょうど半分でした。しかるに,世紀が変わった2001年には65.1%になり,2010年には68.4%と7割近くにまで上昇しています。

 さて,いうまでもないことですが,社会はさまざまな年齢層(age groupes)から成り立っています。悩みや不安は,どの層において蔓延しているのでしょう。また,いつ頃からそうなっているのでしょう。

 こうした「時代×年齢」のデータをグラフにする場合,例の「社会地図」図式が役に立ちます。「時代×年齢」のマトリクス上にて,観察しようとする現象の量を等高線的に表現するものです。悩みや不安を感じている者の比率の水準を,色の違いから読み取ってください。

 下図は,おおよそ2年刻みの動向を視覚化したものです。上記の調査は,1998年と2000年には実施されていないことを申し添えます。


 今世紀以降,40~60代のあたりに,怪しいグレーやブラックのゾーンが広がってきています。グレーは,悩みや不安がある者の比率が70%台前半,ブラックは75%超(4人に3人以上)であることを示唆します。

 上図から,社会のどの部分に暗雲が立ち込めているのかが分かります。具体的にいうと,近年の50代。悩みや不安の内実は,老後の不安やリストラされることへの恐れなどではないでしょうか。

 上記の世論調査では,悩みや不安があると答えた者に対し,複数回答でその内容も尋ねています。「老後の生活設計」,「自分の健康」,「日常の生活費」,「家族との人間関係」など,興味をひく選択肢がわんさと用意されています。次回以降,面白いものについて,同様の形式の図をつくってみようと思います。

 「日常の生活費」について悩んでいる者の比率を,上のような形でグラフ化したら,どういう模様になるでしょう。まだやっていませんが,乞うご期待。