2014年10月30日木曜日

マンガ

 読書の秋ですが,私は今週,ある本に読みふけりました。その本には文字よりも絵がいっぱい。そう,マンガです。「ど根性ガエル」の全27巻セットをネット古書店で購入し,全巻読破しました。1970年代初頭の作品です。


 「いい年して…」と笑われそうですが,ストーリーを絵入りで分かりやすく伝えるマンガは,日本発祥の誇るべき文化。私は38歳の成人ですが,子どもにあっては,マンガの嗜好率はもっと高いことでしょう。私も子どもの頃は,よく読みました。私の世代の男子だと,キン肉マン,キャプテン翼,ドラゴンボール,スラムダンクあたりでしょうね。

 はて,今の子どもはマンガをどれほど読んでいるのか。データで知りたくなりました。OECDの国際学力調査PISA2009に該当する設問があるようなので,それへの回答結果を集計してみましょう。
https://pisa2009.acer.edu.au/

 本調査の対象は,各国の15歳の生徒です。2009年調査のQ25では,①マガジン,②コミック,③フィクション,④ノンフィクション,⑤新聞,をどれほど読んでいるかを問うています。5段階で頻度を問う形式ですが,マックスの「週に数回読む」の回答比率(%)を出してみました。無回答を除く有効回答の中での比率です。

 下の図は,日・米・独の結果をチャート図にしたものです。


 ほう。日本は米独に比して図形が大きいではないですか。15歳の子どもですから,評論などのノンフィクションは読まないにしても,それ以外の媒体は結構読んでいます。他の2国と差をつけているのは,コミック,すなわちマンガです。やっぱりですね。日本の生徒は49%,ほぼ半分が「週に数回読む」と答えています。

 PISA2009の対象は74か国ですが,日本の子どものマンガ嗜好は,これら全体の中でもトップでしょうか。比較の対象を拡大しましょう。マンガだけではつまらないので,小説などのフィクションの嗜好度も比べてみます。

 横軸にマンガ,縦軸にフィクションを「週に数回読む」と答えた生徒の率をとった座標上に,74の社会を位置づけてみました。


わが国は右の外れた位置にあります。日本の子どものマンガ嗜好は世界でトップです。マンガ発祥の国ですから当然といえばそうですが…。

 一方,他の先進国の多くは左側にあります。これらの社会では,マンガよりも小説のほうが好んで読まれています。斜線は均等線ですが,数としては「マンガ<小説」の国のほうが多いですね。

 これをどうみるか。先にも述べたように,絵入りで物語を分かりやすく伝えるマンガは,日本が生んだ優れたカルチャーです。この中には活字も含まれています。一概に悪いとは言えますまい。中学の頃の国語教師が「マンガでもいいから読め」とよく言っていたのを思い出します。

 しかし,親切な絵ばかりに頼っていると想像力が訓練されない,また直観(印象)依存型の思考回路ができてしまうともいいます。何かの本で,マンガばかり読んでいる子どもは短気で人の話を長く聞けない,という趣旨のことを読んだ記憶がありますが,私なんかは当てはまるかもな…。

 日本は,マンガだけでなく小説を読む頻度も他の先進国よりは高いようですが,上図での位置がもっと上方にシフトすると素晴らしい。学校図書館の利用時間を延長する,子どもの生活に時間的なゆとりを与えるなど,いろいろな術があります。上から強制される,朝の「10分間」読書だけではありますまい。

 また大人がモデルを示すことも必要でしょう。現在は「読書週間」の真っただ中。われわれも本を手に取ろうではありませんか。