2015年2月2日月曜日

東大生の家庭の年収分布

 1月31日,フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が東京大学で講演されたそうです。氏の大著『21世紀の資本』を読んでいるのですが,4分の1ほどで止まっちゃってます・・・。

 上記の記事に書いてあったのですが,『21世紀の資本』では,米国ハーバード大の学生の家庭の平均年収が,全米上位2%に相当するというデータが示されているそうです。これに触発されて,東大学生の家庭の年収分布図を今朝ツイートしたところ,見てくださる方がたくさんおられます。そこで,ブログにも載せておこうと思います。
https://twitter.com/tmaita77/status/562025488399364096

 図をそのまま転載というのは芸がないので,大学学部学生全体の年収分布も加え,①一般群,②大学学部生,③東大学部生,という3段階の比較をしてみましょう。

 ①は,世帯主が40~50代の世帯の年収分布です。大学生の子どもがいる世帯全体と見立てても大きな間違いはないでしょう。元資料は,厚労省の『国民生活基礎調査』(2012年)です。②は,大学昼間部の学生の家庭の年収分布です。日本学生支援機構の『学生生活調査』(2012年)に掲載されている数値を使います。③は,東京大学の『学生生活実態調査』(2012年)から知ることができます。東大学部学生の家庭の年収分布です。

 ただ,③の東大調査の年収区分はちょっと変わっていて,「350万未満」「350万~」「450万~」・・・「1550万以上」というような区切りになっています。②は,「300万未満」「300万~」「400万~」・・・「1500万以上」というようにノーマルなものです。①は細かい50万区切りになっていますので,どちらにも合わせることができます。

 そこで,①の一般群のカテゴリーを②と③に別個に合わせることにしました。「①×②」と「①×③」の2つの比較データをつくったわけです。双方とも,8つの年収階層を設けて比べてみました。下表は構成比の原表です。


 大学に子をやるにはやはりカネがかかるようで,学部生全体,東大生とも,家庭の年収は一般群よりも高い層に多く分布しています。マックスの階級をみると,学部生は31.8%,東大生では実に57.0%が該当します。

 東大生の6割ほどが,年収950万以上の家庭の子弟ということです。この層は,大学生くらいの子がいるとみられる世帯全体(一般群)では2割ほどしかいないことを考えると,かなりの偏りといえます。右端の倍率から,この層から東大生が出る確率は通常よりも2.6倍高いことも知られます。

 では,上表の構成比をタテの帯グラフにしてみましょう。年収区分のカテゴリーが違うので,グラフは2つに分けます。


 注目すべきは,一般群と東大生の家庭の隔たりでしょう(右側)。マックス階級の幅の違いが一目瞭然です。

 近年,東大では授業免除の枠が増やされるなど,貧しい家庭の子弟でも入れるような施策がなされていると聞きますが,現実は上図のごとし。やはり,幼少期からの通塾や早期受験をはじめとした,長期にわたる教育投資の差が出ているとみられます。

 それがどういう問題をはらんでいるかは随所で述べましたので,ここでは繰り返しません。昨年の『プレジデント・ファミリー』誌に掲載された拙稿をご覧いただけますと幸いです。