2016年1月27日水曜日

学校の職員数

 日本の学校のセンセイは忙しいのですが,その業務の多くは,授業以外の雑務です。それを担ってくれるスタッフが学校にいない,というのも大きいと思います。

 学校には,教員と子どものほかに,職員がいます。文科省の『学校基本調査』では,本務教員数に加えて,本務職員数の計上されています。内訳は,事務員,学校栄養職員,図書館事務員,給食調理員,用務員,警備員,といったものです。

 これらのスタッフの多寡も,教員の多忙度に影響するのではないでしょうか。

 私は,本務教員100人あたりの本務職員数という指標を計算してみました。2015年度の統計をひくと,公立小学校の本務教員は410,397人,本務事務職員は69,423人です。よって,前者100人あたりの後者の数は16.9人となります。公立中学校は12.0人,公立高校は19.3人です。

 法規定によると,高校には事務職員を必ず置かねばならない,とされていますから,高校では相対的に多いですね。

 はて,この値は過去からどう推移してきているのか。『学校基本調査』のバックナンバー(下記サイトの学校種別総括表2~4)から分母と分子を採取し,時系列グラフをつくってみました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001015843&cycode=0


 数が多い小学校に注目すると,60年代までは増え続けますが,70年代以降は低下の傾向です。今世紀になってからは,右下がりの傾斜がきつくなっています。中学校と高校も,減少の傾向は同じです。

 むうう。本日公開のプレジデントオンライン記事で,教員の病気離職率について書いているのですが,この指標は今世紀になってから急上昇しています。教員あたりの職員数の低下と,教員の病気離職率の上昇が同時に生じているのですが,これは偶然でしょうか。
http://president.jp/articles/-/17154

 21世紀の初頭は,いろいろな改革が矢継ぎ早に実施され,現場は翻弄されています。それでいて,雑務をサポートしてくれる職員(事務員など)は減っていると。教員が疲弊するのも,分かる気がします。

 次に,地域比較をしてみましょう。上記の指標は,都道府県によって値が違っています。量的に多い公立小学校について,本務教員100人あたりの本務職員数を県別に計算してみました。下図は,最新の2015年度のマップです。


 全国値は16.9人ですが,最高の34.2人から最低の8.9人までのレインヂがあります。およそ4倍の開きです。首都圏は軒並み白くなっています。

 秋田や福井は色が濃くなっていますが,これら2県は,子どもの学力上位常連県です。教員が雑務から解放され,授業に集中できる,というようなことがあるのでしょうか。

 上記の指標は,『全国学力・学習状況調査』(2015年度)の公立小学校6年生の平均正答率と,少し相関しています。国語Aとは+0.300,国語Bとは+0.356,算数Aとは+0.361,算数Bとは+0.163,理科とは+0.280,という相関です。

 国語Bと算数Aの平均正答率とは,5%水準で有意なプラスの相関です。学力の規定要因分析には,こういう人的サポート資源の指標も取り入れるべきかなと思います。

 昨日,「チーム学校」の導入方針についてまとめた中教審答申が出ましたが,これが導入されれば,教員あたりの職員数はうんと上がるでしょうね。

 2014年12月23日の記事でも書きましたが,日本の学校は,補助スタッフの不足感をとても強くしています。こうした状況を是正し,教員が授業という領域で己の専門性を発揮できるようにすることは,重要なことです。

 今知ったのですが,OECDの国際教員調査(TALIS 2013)にて,今回出した,教員あたりの職員数の国際比較をできるようです。国内の時系列比較・地域比較に続き,国際比較も手掛けてみようと思います。