2016年3月16日水曜日

業種別のブラックバイト率

 3月も中盤ですが,いかがお過ごしでしょうか。入試を突破し,4月から大学生という方は,さぞ希望に満ち溢れていることでしょう。大学生活を存分に楽しむぜー,と。

 大学生の生活は,大雑把に勉強,サークル,バイトに区切られますが,最近はバイトの比重が増してきているといいます。それは昔も同じですが,最近は遊興費目当てではなく,学費や生活費稼ぎのバイトが増えているといいます。家計が厳しくなり,親に頼れない学生さんも多いことでしょう。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/11/post-4152.php

 そうである以上,バイトも仕方ありませんが,学業に支障のない程度にとどめたいものです。しかし,人手不足のバイト先にメチャクチャこき使われ,勉強とバイトの比重が逆転してしまう学生もいます。試験前も休めない,辞めさせてくれない・・・。いわゆるブラックバイトの問題が,全国の至る所で噴出しています。

 こうした不当行為の被害に遭っている学生は,データで見てどれくらいいるのか。ブラックバイト被害の公的調査がないか,ちょっと探してみたら,あるではありませんか。昨年の11月に,厚労省の調査結果が公表されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000103577.html

 バイト経験(週1日・3か月以上)のある大学生等を対象とした調査です。具体的な対象は,大学生,短大生,専門学校生,大学院生です。

 これらの学生に,バイト先で不当労働行為の被害に遭った経験を尋ねています。複数の項目を提示し,該当するものを全て選んでもらう形式です。私は,被害事例の多い2項目の被害経験率を業種ごとに整理してみました。「合意した以外の仕事をさせられた」と「合意した以上のシフトを入れられた」の経験率です。


 赤字は人数上位5位の業種ですが,コンビニ,個別指導塾,スーパー,居酒屋,チェーン飲食店でのバイト経験者が多くなっています。学生のメインバイトです。

 2項目の被害経験率をみると,合意以外の仕事は洋菓子店,合意以上のシフトはファミレスで最も高くなっています。ファーストフードは,両方とも値が高くなっています。

 上表のデータをビジュアル化してみましょう。横軸に合意以外の仕事,縦軸に合意以上のシフトの被害率をとった座標上に,28の業種をプロットしてみました。

 この図は,昨日ツイッターで発信したのですが,もう一工夫加え,ドットの大きさで人数も表現してみました。エクセルのバブルチャート機能で,このような図も簡単に作れます。


 右上にあるのは,ブラック度が高い業種です。円が大きいメインバイト(ファーストフード,コンビニなど)は,このゾーンに位置しています。

 これからバイトしようという新入生に注意を促す意味で,大学の学生支援課等で,こういう図を配布してはいかがでしょう。各業界の自浄作用を促すうえでも,効果があるかと思います。

 上記の厚労省調査では,他の不当行為被害率も調査されています。商品買取強制,賃金不払いなど。後者は,学習塾業界で飛びぬけて高くなっています。私の教え子にも,「初めの2週間は研修期間なので,給与は出ない」と言われた,という子がいました。そんなバカげたことはありません。

 当然,辞めるのも自由。2週間くらい前に「辞めます」と予告して,期限を務めたら,後は行かなければいいだけのこと。「損害賠償だ!」なんてのは脅しです。ただし,雇用期限の定まった契約の場合は,病気等の正当な理由がない限り,契約不履行ととられるそうです。大学非常勤講師は,これに該当するとのこと。

 大学の新入生オリエンテーションでは,こういう労働法規のガイダンスも行ってほしいものです。