2016年11月30日水曜日

2016年11月の教員不祥事報道

 紅葉も散ってきました。11月も今日でおしまいです。

 今月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は50件ジャストです。寒くなってきたので,酒がらみの不祥事が多くなっていますが,驚くべき事案も見受けられます(赤字)。

 一番下の事案に「保育教諭」という聞きなれない職名がありますが,幼保連携型の認定子ども園には,幼稚園教諭免許と保育士資格を共に持った「保育教諭」を置くことが義務づけられています。

 明日から師走です。私はヒマですが,みなさん,忘年会など,さぞお忙しくなるでしょう。酒がらみのトラブルにはご注意を。

 ブログの背景を,師走バージョンに変えます。2016年もあと1か月,無事に年を終えることができますように。

<2016年11月の教員不祥事報道>
暴行:特別支援学校の教諭が生徒に 容疑で逮捕(11/1,毎日,兵庫,特,男,57)
女子生徒と性的行為 仙台南高元教諭の男起訴(11/1,河北新報,宮城,高,男,47)
酒気帯びの高校教諭逮捕 (11/2,和歌山放送,和歌山,高,男,52)
中学臨時講師が飲酒運転し当て逃げ(11/2,神戸新聞,兵庫,中,男,20代)
授業中、65歳の男性講師が女児の顔にバケツ投げつけ
  (11/2,テレ朝,兵庫,小,男,65)
警官突き飛ばした容疑、中学教諭の男を逮捕(11/2,サンスポ,福岡,中,男,40)
児童にわいせつ行為 帯広の小学教諭免職(11/3,北海道新聞,北海道,小,男,48)
上田市立中学の男性教諭、酒気帯び運転の疑い(11/3,信濃毎日,長野,中,男,24)
県教委が2人懲戒処分 休暇不正取得と盗撮(11/4,伊勢新聞,三重,盗撮:高男34)
<セクハラ>50歳教諭処分 同僚の手つかみ「なぜ彼氏が」
 (11/5,毎日,兵庫,中,男,50)
広島の特別支援学校教諭を酒気帯び運転容疑で逮捕(11/6,産経,広島,特,男,57)
同僚女性教諭の胸触る 京都府教委が男性教諭を停職1カ月に
 (11/9,京都新聞,京都,高,男,46)
修学旅行中に風俗嬢を自室に招きトラブルに(11/10,サンスポ,徳島,小,男,28)
横浜市立小学校の教諭 痴漢容疑で逮捕(11/11,テレビ神奈川,神奈川,小,男)
小学校教諭を酒気帯び運転の疑いで現行犯逮捕(11/12,産経,長野,小,男,49)
小学校教諭、酒気帯び運転容疑 歩道乗り上げる(11/13,朝日,北海道,小,男,55)
トイレで女子大生を押し倒し腹蹴り、顔殴る…高校教諭を暴行容疑で逮捕
 (11/14,サンスポ,東京,高,女,29)
仮面女子の文化祭ライブを勝手に企画 都立高の主幹教諭を減給処分
 (11/14,サンスポ,東京,高,男,56)
男子高生を買春容疑=高校教諭を逮捕-(11/15,時事通信,神奈川,高,男,30)
発達障害ある女子生徒、教諭に髪切られ不登校に(11/15,読売,山梨,中,女)
懲戒処分:部活で県立高教諭体罰 県教委、今年度3件目
 (11/16,毎日,岩手,高,男,30代)
校舎の機械室が「喫煙所」、教諭3人隠れタバコ(11/16,読売,大分,小)
元ろう学校臨時講師を強制わいせつ容疑で逮捕(11/16,産経,奈良,特,男,33)
「風俗店で働いている」と中傷ビラまき 風俗店通い千葉の中学教頭逮捕
 (11/16,産経,千葉,中,男,48)
公衆浴場で男性の体触る 中学教諭停職処分(11/17,河北新報,宮城,中,男,47)
ひき逃げ容疑、教諭逮捕 菊川署、自転車の男性軽傷
 (11/17,静岡新聞,静岡,中,男,53)
通勤電車でスカート内動画盗撮 小学校教頭を逮捕
  (11/18,神戸新聞,兵庫,小,男,55)
女子生徒や保護者にわいせつ行為 川口市の男性高校教諭
 (11/18,テレ玉,埼玉,高,男,54)
札幌市の中学教諭がまた逮捕(11/19,NHK,北海道,中,男,26,わいせつ)
小学校の女子トイレにカメラ 侵入容疑で教諭逮捕(11/19,朝日,山形,小,男,25)
窃盗の高校教諭を懲戒免職 県教委が処分発表(11/19,山陽新聞,岡山,高,男,29)
藤枝の中学教諭 万引容疑、逮捕 静岡中央署(11/20,静岡新聞,静岡,中,男,50)
名古屋市立小教諭が強制わいせつ容疑 保護者から告訴状
 (11/21,朝日,愛知,小,男,36)
強制わいせつ:銭湯で男子中学生被害、27歳教諭逮捕(11/22,毎日,大阪,中,男,27)
女性教諭、生徒に侮蔑的あだ名 西宮市が解決金(11/22,神戸新聞,兵庫,中,女,58)
小学校教諭、酒気帯び運転で懲戒免職(11/22,東奥日報,青森,小,男,35)
部活指導メール 主将に1年600件 神戸の高校(11/23,神戸新聞,兵庫,高,男,50代)
家に侵入し強姦か 小学校教諭を逮捕 (11/23,日テレ,長野,小,男,38)
長良高生40人の家庭調査票紛失 男性教諭(11/23,岐阜新聞,岐阜,高,男,30代)
強要未遂容疑で小学校教頭逮捕=女性脅し面会求める
 (11/24,時事通信,滋賀,小,男,50)
教諭平手打ち 小3一時難聴に(11/25,神戸新聞,兵庫,小,男,30代)
児童盗撮で49歳教諭免職=担任クラスで―福島教委(11/25,時事通信,福島,小,男,49)
懲戒処分:「勤務中に飲酒」県立高教諭減給 修学旅行の昼食時
 (11/25,毎日,山梨,高,男,49)
教え子の児童にわいせつな行為などした疑い 小学校講師逮捕
 (11/26,フジテレビ,茨城,小,男,26)
生徒と淫行の疑いで40代女性教諭を免職 沖縄県教委
 (11/26,沖縄タイムス,沖縄,高,女,40代)
小学教諭が女子児童の下半身を触る、抱きつく(11/28,サンスポ,東京,小,男,32)
愛知県尾張旭市の教諭を公然わいせつで処分(11/29,CBCテレビ,愛知,中,男,63)
学校のトイレや駅…3年間盗撮、40代教諭を免職(11/29,産経,兵庫,男,40代)
女児の体に触った疑いで教諭を逮捕 愛知県(11/30,CBCテレビ,愛知,小,男,45)
懲戒免職:同僚らの金盗み、保育教諭処分 静岡市
 (11/30,毎日,静岡,認定子ども園,男,30)

2016年11月27日日曜日

年齢別の結婚チャンス

 私は,40歳の未婚男子です。生涯結婚はしまい(できまい)と思っていましたが,前回の記事で出した配偶関係別の死亡率をみると,「これでいいのか」という気になったりします。

 それと,今見入っている「あずきちゃん」では,小学校高学年児童の積極的な恋愛が描かれているのですが,こういうのを見ると,「恋っていいなあ」と思います。このアニメはNHKで放映されていたものですが,恋の素晴らしさを子どもに伝えよう,というメッセージが込められているのかもしれません。
http://www.nhk.or.jp/anime/azuki/

 「今からでも遅くはない」。こう思いたいものですが,私のような40の未婚オトコが結婚できる確率は,どれほどなのでしょう。

 厚労省の『人口動態統計』によると,2015年中の40歳男性の初婚件数は7585件(①)です。先日公表された,2015年の『国勢調査』のデータによると,同年10月時点の40歳の未婚男性は28万2217人(②)。

 よって40歳の未婚男性のうち,めでたく結婚できた者の割合は,①/②=2.69%となります。約分すると,37人に1人です。

 予想通り狭き門ですが,晩婚化の進行により,以前よりは高まっているのでしょうね。

 他の年齢ではどうでしょう,1歳刻みの年齢ごとに分子と分母の数値を揃え,結婚率(%)を計算してみました。下表は,その一覧です。申し忘れましたが,分子・分母とも,日本人の数値であることを申し添えます。


 結婚率は,20代後半辺りで高くなっています。男性のピークは28歳の8.36%,女性は29歳の11.28%です。晩婚化の進展により,現在では,ピークは30歳近辺にあります。

 結婚率は加齢とともに低下し,私の年齢(40歳)では,男女とも2.69%なり。50歳になると,男性は0.47%,女性は0.32%まで下がります。

 統計上,生涯未婚率は50歳時点の未婚率とされるのですが,確かに,この年齢以降で結婚する人は少ないですね。妥当な仮定です。

 上表の男女の結婚率を,グラフにすると,下図のようになります。鮮やかな年齢曲線です。


「今からでも遅くはない」。無理にでも,こう思いたいものです・・・。

2016年11月25日金曜日

オトコは弱きもの

 小林製薬が「中年男性の食生活の実態調査」を実施し,データを公表しています。40~50代男性310人に対する,ネット調査の結果です。
http://blogos.com/outline/199436/

 想像がつくことですが,中年男性は食生活が乱れがちであるとのこと。ご飯を大盛にする,重ね食いをするなど。重ね食いとは,主食を複数食べることです。まあ私も,日高屋に行った時は,ラーメンとチャーハンをセットで頼むことが多いですが。

 こういう食生活を継続していると,健康にはよくないでしょう。生活習慣病のリスクも高くなります。今では,日本人の死因の6割は,がん,心臓病,脳梗塞といった生活習慣病です。

 この調査は,40~50代の男性を対象にしていますが,配偶関係によって結果はかなり異なると思われます。私のような未婚者は,結婚している有配偶者よりも,食生活の乱れは大きいのではないか。一人だと,好きなものばかり食べちゃいますからね。

 事実,男性の死亡率は配偶関係によって大きく違います。2015年中の40代前半男性の死亡者は3133人。同年10月時点の同年齢の男性人口は140万4593人。よって,2015年の40代前半男性の死亡率は,前者を後者で除して,ベース1万人あたり22.3人となります。

 しかるに同じ40代前半の男性でも,妻がいる有配偶者の場合,死亡率はわずか6.6です。未婚者の死亡率は,有配偶者の3倍以上なり。この差は,食習慣をはじめとした,生活の乱れの差に起因する部分もあるでしょう。

 ちなみに,妻と分かれた離・死別者でみると,死亡率はもっと高くなります。下図は,各年齢層の死亡率を線でつないだ,死亡率の年齢曲線です。外国人は含まない,日本人のデータであることを申し添えます。


 死亡率は加齢と共に上昇しますが,男性の場合,配偶関係による差が大きくなっています。どの年齢層でも,有配偶者より未婚者の死亡率が高く,離・死別者のそれはさらに高くなっています。女性には見られない,男性固有の傾向です。

 男性の離・死別者の場合,これまで妻に依存する部分が大きかっただけに,その支えが消失するや否や,急坂を転げ落ちるように,生活が乱れるのではないでしょうか。

 以上は,全死因のひっくるめた死亡率ですが,死因によって,様相は異なります。25~44歳の男女を取り出して,主な死因の死亡率を配偶関係別に計算してみました。

 下表は,算出された数値の一覧です。先ほどと違い,ベース人口10万人あたりの死亡者数にしています。


 どの死因の死亡率も,「有配偶 < 未婚 < 離・死別」ですが,男性ではその差が大きくなっています。

 右端は,離・死別者の死亡率が有配偶者の何倍かですが,男性は倍率が高い。自殺率は,実に10倍を超えます。

 「人は集団に属さずして,自分自身を目的にしては生きられない」。デュルケムの自己本位的自殺に関わる有名なテーゼですが,男性の場合,家族を喪失することは痛手となるようです。わが国では,離婚した場合,男性は妻と子どもの双方を失うことが大半ですし。

 上記のデータは,男性がいかに家族(女性の献身)に依存しているか,それを喪失した男性がいかに弱い存在かを示唆しているようにも思えます。デュルケムの『自殺論』でも,離婚の影響は男女で違い,男性では苦痛の源泉になるが,女性はその逆ということが述べられてます。

 私は,40歳ジャストの独身男です。結構,荒んだ生活をしていますが,こんな私でも,結婚して共に暮らす伴侶を得れば,少しは変わるのかしら。生涯,結婚はするまい(できまい)と考えてきましたが,これから10年の間に,考えが変わらないとも限らない,という気がしてきました。

2016年11月24日木曜日

有業女性の稼ぎの国際比較

 女性の社会進出が以前よりは進み,働く女性は増えています。しかしフタを開けると,増えているのは非正規雇用ばかりだったりする。私は前に,日本の女性の社会進出を「非正規依存型」と形容したことがあります。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=5728

 給与も多くはありません。男性に比べると,かなり低くなっています。この点のデータはたくさんありますが,国際比較をするとどうでしょうか。今回は,有業女性の稼ぎの国際比較をやってみようと思います。

 用いるのは,OECDの成人学力調査「PIAAC 2012」のデータです。この調査では,有業の対象者に年収を尋ねています。有業者全体の年収分布の中で,どの辺に位置するかを問う形式です。日本の場合,以下の6つの選択肢からチョイスしてもらっています。
http://www.oecd.org/skills/piaac/publicdataandanalysis/

 ①:10%未満  (192万円以下)
 ②:10%~   (193万円~)
 ③:25%~   (241万円~)
 ④:50%~   (315万円~)
 ⑤:75%~   (431万円~)
 ⑥:90%以上  (581万円以上)

 他国も同じです。それぞれのカテゴリーの年収幅を各国通貨で提示し,選択してもらう設問です。

 働き盛りの35~44歳の有業男女を取り出し,この設問の回答分布をとってみました。①~②を「下位25%未満」,③~④を「中間」,⑤~⑥を「上位25%以上」とし,3つの群の内訳をグラフにしてみましょう。下図は,主要6か国のものです。「瑞」は,スウェーデンを指します。

 データの計算は,下記サイトのリモート集計を使ったことを申し添えます。
http://nces.ed.gov/surveys/international/ide/


 男性は国際差はあまりないですが,女性はそれが大きくなっています。日本の女性でみると,下位25%未満の層が63%もおり,高収入層は11%しかいません。家計の補助的なパート就労が多いためでしょう。

 日本は,ジェンダー差が大きいですね。伝統的性役割観の残存を見て取れます。

 アメリカとスウェーデンは,女性であっても,低収入層(青色)よりも高収入層(緑色)のほうが多し。働き盛りの女性の稼ぎは,社会によって違うものです。

 上図は主要国のものですが,他の対象国のデータも散りばめた散布図をつくってみましょう。35~44歳の有業女性のうち,年収が「下位25%未満」の者の比率を横軸,「上位25%以上」の者の比率を縦軸にとった座標上に,17の国を配置すると,下図のようになります。


 左上は,低収入層が少なく高収入層が多い,つまり女性の稼ぎが相対的に多い社会です。右下は,その反対なり。

 斜線は均等線ですが,このラインより上にある4つの社会(カナダ,アイスランド,アメリカ,スウェーデン)は,低収入層よりも高収入層が多くなっています。

 日本は,東欧諸国と並んで,右下にあります。しかし,これから先は,徐々に左上に上がっていくのでしょうね。社会全体では人手不足,個々の家庭でみても,夫婦「二馬力」でないとやっていけない状況になりますので。

 今回は,35~44歳の有業女性という括りで見ましたが,未婚/既婚,子の有無といった条件により,稼ぎの水準は大きく異なると思われます。日本の場合はおそらく,「未婚」→「既婚」→「既婚・子持ち」という地位の変化につれ,稼ぎはガクンガクンと減っていくのではないでしょうか。

 リモート集計では,ここまで細かい変数統制はできませんが,ローデータを使えばそれは可能だと思います。今後の課題といたしましょう。

2016年11月21日月曜日

小学生のプアとリッチの比較

 11月5日の記事では,中年男性のプアとリッチで,属性,読書嗜好,自己イメージなどがどう違うかを比較しました。どの項目も大きな差があり,たとえば「今の生活に満足している」の割合は,プアが21.4%に対し,リッチは62.1%です。

 しからば,子どもではどうか。自我が未熟で稼得能力のない子どもの場合,生活行動や意識は家庭環境に強く規定されるとみられます。

 たとえば,勉強の得意度(自己評定)の一つをとっても,家庭の年収と非常に強く相関しています。国立青少年教育振興機構の『青少年の体験活動等に関する実態調査』(2014年度)では,小4~小6の対象児童に限り,家庭(世帯)の年収も把握しています。保護者調査票の問14です。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/107/

 これを,勉強の得意度(本人回答)とクロスさせると,結果は下図のようになります。年収群ごとの回答分布です。どの群も,サンプル数は十分です。ローデータをもとに作成したグラフであることを申し添えます。


 年収200万未満のプアでは,「とても思う」の割合は10.0%ですが,1200万以上のリッチでは32.8%います。前者は10人に1人ですが,後者は3人に1人。逆に,「まったく思わない」と答えた勉強ギライの児童は,年収が低い層ほど比率が高くなっています。

 ツイッターでも発信したグラフですが,ここまで明瞭な傾向が出ることに驚かされます。

 基本的な生活習慣や自己イメージについても,明瞭な階層差がみられます。小学生調査票の問5~問9の項目について,年収200万未満のプアと1200万以上のリッチの肯定率を比べてみましょう。

 最も強い肯定の回答割合を拾っています。問5は「必ずしている」,問6は「よくある」,問7は「とてもよく当てはまる」,問8は「とても思う」の回答比率です。問9は,得意な教科として選択した児童の割合をさします。無回答を除いた,有効回答ベースの比率です。

 繰り返しますが,ローデータから独自に計算した数値です。


 赤字は,リッチの回答比率がプアよりも1.5倍以上高い項目です。2倍を超える項目は,黄色マークも付しています。

 差が最も大きいのは,先ほどみた勉強の得意度です。リッチはプアの3.28倍! その次は,政治や選挙への関心となっています(プア9.0%,リッチ22.4%)。家庭で政治の話をするか,新聞を購読しているかなどによるでしょう。

 自発性や自尊心の階層格差も大きいですね。後者は,家で褒められる頻度の差にもよると思われます。

 教科の得意度は,実技教科は差がありませんが,主要教科には階層差があります。最も大きいのは算数で,プアは27.4%ですが,リッチは55.8%です。算数は高学年になると内容が難しくなりますが,家庭でサポートが得られるか,通塾の費用が賄えるかなどの条件が効いていると思われます。

 学力の階層格差がよくいわれますが,それが最も顕著なのは算数。この教科では念入りなテコ入れが求められるところです。補充的な指導など,個に応じた指導が必要でしょう。

 「人の話を聞く」という項目の肯定率の差も大きいなあ。社会階層による言語コードの違いを論じた,バーンスティンの言語社会化論が想起されます。労働者階級の子弟は,(即物的でない)抽象的な話を長く聞かされることに慣れていない。まあ私も,人の話を途中で遮る悪癖がありますけど。

 友だちの多さも,プアとリッチで違っています。これなどは,スクールカースト論に通じますね。ちなみに,この傾向は女子で顕著です。交際におカネがかかるためでしょうか。
https://twitter.com/tmaita77/status/800579467995271168

 あと一点,道徳意識(行為)にも階層差があることに注意。

 教育格差の問題がいわれますが,学力だけでなく,自我や道徳志向にも,家庭の経済力とリンクした階層差が出ている。対策に際しては,どの部分の格差が深刻なのかを突き止め,資源をそこに傾斜配分をすることも求められるでしょう。

 今回みたのは小学校4~6年生のデータですが,中高生になるとどうなるか。赤字や黄色マークが減るか,逆に増えるか。こういう点も,教育の効果を測る重要な視点です。

2016年11月20日日曜日

人生100年の時代

 リンダ・グラットン著『ライフ・シフト-100年時代の人生戦略-』東洋経済新報(2016年)を,キンドルで読み始めています。就業形態の未来予測をした『ワーク・シフト』に次ぐ,話題作です。
http://store.toyokeizai.net/books/9784492533871/

 寿命の延びにより,人生100年の時代になる。それに伴い,人々の生活は大きく変わる。人生100年という時間を,苦役ではなく恩恵に変えるにはどうしたらいいか。こういうテーマを扱った本です。

 まだ最初のちょっとを読んだだけですので,内容については話せませんが,人生100年の時代というのを統計で表現してみたくなりました。同一世代の何%くらいが,100年を生きる時代になるのか。国連の人口推計サイトのデータを使って,この問題に接近してみましょう。
https://esa.un.org/unpd/wpp/

 上記の資料には,5年間隔で,5歳刻みの人口統計が載っています。1950年から2100年までの長期統計です。

 1950年の日本の0~4歳人口は1099.8万人(①)です。1946~50年生まれ世代ということになります。この世代が全員100歳を超えるのは,100年後の2050年。この年の100歳以上人口は44.1万人(②)。よって当該世代が100歳まで生きる割合は,②/①=4.0%と算出されます。およそ25人に1人。

 これは,戦後初期に生まれた団塊世代のデータですが,世代を下るにつれ,値はどんどん高くなっていきます。その様相を整理すると,下表のようになります。


 100歳以上生きる人間の割合は,1946~50年生まれ世代では4.0%でしたが,前世紀の末(96~00年)に生まれた世代では,15.5%にもなります。およそ7人に1人です。

 データを出せませんが,今世紀以降に生まれた世代は,この値はもっと高いことでしょう。

 表の上段には世界全体の数値も掲げましたが,わが国がいち早く「人生100年の時代」に突入することが見て取れます。冒頭の書物でもいわれていますが,日本が先例を提供することになるわけです。

 私は長生きしたいなどと思ってませんので,厄介だなという印象ですが,人生100年という時間を厄災ではなく恩恵に変える術もある。それは,生活のステージの再編です。

 現在では,人の一生は,教育期,仕事期,引退期の3つに分けられ,左から右のステージへと直線的に進む型ですが,これを変えないといけない。現状維持のままだと,空疎な引退期がべらぼうに長くなり,人生100年は苦役にしかならなくなります。

 リンダ・グラットン教授がいう処方箋は,それぞれのステージの間を,いつでも自由に往来できるようにすることです。引退した後でも,学び直したり,(軽度)の仕事に戻れるようにする。仕事期の途中でも,プチ引退をし,時代の変化に即した職業訓練を受けるなど・・・。

 老化防止薬の開発により,高齢者の就業も今よりは容易になるでしょう。また社会の変化が速まる中,同じ仕事だけで生涯メシを食える時代は終わります。人は,絶えず「変身」することを迫られる。そのための戦略は,仕事期から教育期へと再び舞い戻る,リカレント教育です。

 なるほど。リンダ・グラットン教授がいう処方箋が実現する条件は出てきているように思えます。ただ,硬直した直線型のライフコースが支配的な日本では,他国に比して,いろいろ障害が多い。この点をどう克服して,人生100年の時代を恩恵に変えるのか。『ライフ・シフト-100年時代の人生戦略-』を,これからじっくり読み進めようと思います。

2016年11月17日木曜日

核家族世帯率と結婚の幸福度の相関

 婚活支援を手掛けている,パートナーエージェントという会社が,「結婚の幸福度指数」という興味深いデータを公表しています。アルファベットの略称は,QOM(Quality of Marriage)です。
http://www.qom.jp/

 80の質問に答えてもらって,回答者の結婚の幸福度を測定するもの(1000点満点)ですが,レポートでは都道府県別の平均値が明らかにされています。20~60代の既婚者の平均値です。

 トップは,私の郷里の鹿児島(632.0点)。2位は宮崎,3位は東京,4位は沖縄と,南九州の県が上位に挙がっています。逆に下位には,島根,石川,福井,秋田など,日本海沿岸の県が多し。

 日本海沿岸の県で,QOMが低いことについて,報道記事では「より家族の絆や家のつながりを大切にするエリアであり,結婚で新しい家族の一員になることで,馴染めないといった不安や不満が幸福度の低さにつながったのかもしれません」といわれています。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161116-00010000-suitsw-life&p=1

 なるほど,分かるような気がします。三世代世帯率が高い地域ですが,同居している親と反りが合わない,という夫婦も多いでしょう。

 家族のしがらみが多い県では,QOMは低い傾向にあるのではないか。こんな仮説が浮かびますが,データでみるとどうでしょう。都道府県別の核家族世帯率と,上記のQOMの相関図を描くと,下図のようになります。前者は,2015年の『国勢調査』から計算したものです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001080615&requestSender=search


 核家族世帯率とQOMは,有意なプラスの相関関係にあります。換言すると,核家族世帯以外の世帯,三世代世帯などが多い県ほど,結婚の幸福度は低い傾向がみられます。左下にある,日本海沿岸の県です。

 私にすれば「やはり」という感じですが,どういう感想を持たれるでしょうか。上記の相関が因果関係とは限りませんが,当局の「三世代同居推奨」の施策が,よからぬ結果をもたらす恐れがあることを警告するデータのように見えますね。

 女性のQOMに絞ったら,上記の相関はもっと強くなるのではないかしら。

 個票データを使って,性別・年齢を統制したうえで,家族類型とQOMの関連をとったらどうなるでしょう。データをお持ちの,パートナーエージェントさん。ぜひ,そういう分析もやってみてください。

2016年11月16日水曜日

過剰サービスをやめよう

 アマゾンが,食品や日用品の「1時間配達」の範囲を,都内23区に拡大するそうです(プライム会員限定)。遅れた場合は,送料890円は返金とのこと。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/161115/bsd1611151611010-n1.htm

 朗報だと喝采を叫ぶ人もいるでしょうが,私はその逆です。「時間内に届けねば」というドライバーの焦りから,重大事故が起きやしないかと心配になります。

 運送業の過労にも拍車がかかるのではないか。下図は,年間就業日数と週間就業時間の区分け図ですが,全産業に比して,過重労働のゾーンが広くなっています。


 右上のブラックは,「年間300日以上・週60時間以上」働いている,過労死予備軍です。運送業の正社員では全体の9.0%,1割ほどいます。全産業でみた場合の1.2%よりも,はるかに出現率が高くなっています。

 わが国では,仕事に対する要求水準がとても高い。商店の24時間営業,宅配便の無料再配達は当たり前。加えて,都内23区は「1時間配達」などが導入されると。働く人は追い詰められる一方です。

 労働力人口の減少(高齢化)により,このやり方がいつまでも続かないことは明らか。不要な過剰サービスをなくし,「ゆるい」働き方を普及させていくことが求められるでしょう。生活の利便性が落ちても,労働者の精神疾患や過労自殺が頻発する社会よりはずっといい。

 成熟のステージに入っている日本社会は,この方向に進むべきと考えているのは,私だけではないでしょう。

 本日公開のニューズウィーク連載記事では,日本人の労働観が80年代から変わっていないことをデータで示しています。お読みいただけますと幸いです。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/11/post-6339_1.php

2016年11月13日日曜日

トモちゃんの夢

 いやー,いけません。「あずきちゃん」鑑賞が止まりません。全117話まで飛ばしで観ましたが,気に入った話をリピートで観ています。おかげで,仕事のほうは最低限・・・。

 前回書いた通り,私が選ぶベストは第25話「がんばって!トモちゃんの初デート」ですが,第45話「リサーチ!トモちゃんの夢」もなかなかいい。

 トモちゃんとは,クラス委員の秀才肌の女子ですが,このキャラが登場する話が個人的には好きです。自分の夢を書いた作文を読むシーンがあるのですが,トモちゃんは次のように述べています。

私の夢は,ジャーナリストになって社会の敵を告発することです。悪人どもを懲らしめ,そのために苦しんでいる人々を救ってあげたいと思っています。

 ジャーナリストというと,胡散臭い職業というイメージもありますが,自由に飛び回って世の悪を突き止め,告発するのが使命です。当然,リスクを伴うことも多々で,危険な地に出向き,命を落とす人も数多くいます。死亡率が高い職業の一つではないでしょうか。

 私の任は,既存統計を使って,社会の病理を抉り出すことです。高校の数学教師が「数字はウソをつかない。社会の不正を暴くには,統計が一番だ」と言っていました。

 トモちゃんの夢を聞いて,自分の原点をふっと思い出したような気がします。

2016年11月10日木曜日

「あずきちゃん」に見入る

 昨日から,アニメ「あずきちゃん」に見入っており,最低限の仕事しかしていません。55話まで観ましたが,まだ先は長し。全部で117話です。

 90年代初頭のアニメですので,私よりもちょっと下の80年代半ば生まれの世代が観たアニメだと思います。NHKで放映されたとあって,教育的色彩も強し。

 といっても,すっかり官製道徳アニメになり下がった「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」などとは違い,小学校高学年の「リアル」が描かれています。メインのテーマは「恋」です。

 私は,第25話の「がんばって!トモちゃんの初デート」に感動しました。ブログを3日以上も放置するのは気持ち悪いので,こういう記録をつけておくのもよいでしょう。

2016年11月7日月曜日

若年人口の国際比較

 若年人口はガツガツ働いて社会を支えると同時に,消費性向も強く景気を活性化させてくれる存在でもあります。

 日本の若年人口の時系列カーブを描いてみると,大まかには,景気動向と重なっていることが分かる。将来予測も含む,20~40代人口の長期カーブは,下図のようになります。国連の人口推計サイトのデータより作成したグラフです。
https://esa.un.org/unpd/wpp/


 青色が日本のカーブですが,60年代までは増え続けていました。高度経済成長は,人口ボーナスという条件に支えられていた,といえるでしょう。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/fujitamasayoshi/20161106-00064154/

 70~80年代は高止まりです。安定成長の時期と一致しています。

 そして90年代以降は,坂を転げ落ちるように減っていきますが,不況の深刻化の時期と見事に一致しています。

 購買意欲旺盛な若者の存在がデカいってことですね。その若者人口は今後は減少の一途と見込まれ,2020年にはフィリピンに抜かれると予測されます。躍進可能性を秘めた市場の選手交代というところでしょうか,

 20~40代人口は,高度経済成長の最中の1960(昭和35)年では3943万人で,世界で5位でした。それが近未来ではどうなるか。下表は,1960年と2030年の上位20位の顔ぶれです。


 日本は2030年には,17位に落ちると予測されます。対して,インドやインドネシアなど,アジア諸国の躍進がスゴイ。上記の表は,経済勢力地図の時代変化といえるかもしれません。

 縮むニッポン。人口減少と高齢化により,国内市場ではモノが売れなくなります。お隣の韓国では,一流企業に入るには英語力と海外留学経験が必須といいますが,日本も近いうちにそうなるのではないか。否が応でも,企業は国外への進出を余儀なくされるのですから。

 欧米並みに人口を多国籍化することで,消費意欲旺盛な若年人口をキープすることになるのか。あるいは空洞化が進む一方なのか。これからの日本には,いまだかつてない大変化が待ち受けていることは間違いありません。

2016年11月5日土曜日

中年男性のプアとリッチの比較

 私は今年で40歳。働き盛りの時期ですが,ガツガツ稼いでいる人とそうでない人の分化も,さぞ大きいことと思います。

 これは年齢現象であると同時に,世代現象ともとれるでしょう。私の世代は,大学卒業時に就職氷河期に直面したロスジェネです。学卒時に正規就職が叶わず,不安定な非正規雇用に留め置かれている人が相対的に多い世代でもあります。

 働き盛りの年代における,持てる者と持たざる者の分化。われわれの世代では,これがひときわ顕著なのではないかと推察されます。

 それは収入の多寡によりますが,そうした経済条件に違いにより,生活意識や将来展望などにも分化が起きているのではないか。今回は,その様をデータで可視化してみようと思います。

 分析したのは,国立青少年教育振興機構『子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究』(2013年)のローデータです。読書の設問がメインですが,20歳以上の成人を対象に,諸々の生活意識についても問うています。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/72/

 私は,30~40代男性のサンプルを取り出し,年収の多寡によって,目ぼしい設問への回答がどう違うかを明らかにしました。自分の世代に絞った分析です。

 まずは,年収の分布をみてみましょう。年収の設問に有効回答を寄せたのは1008人です。この1008人の年収分布をヒストグラムにすると,下図のようになります。


 おおむね,真ん中辺りが厚いノーマル分布です。最頻階級は年収500万円台ですが,30~40代男性の年収だと,こんなところでしょうか。私は,これよりもずっと低いです。

 この分布を参考に,プア(貧困層)とリッチ(富裕層)を取り出すとしたら,どこで区切るのがよいでしょう。思うに,前者は年収200万未満(青色),後者は750万以上(赤色)とするのがベストではないでしょうか。サンプルの数は,前者が145人,後者が140人と,ほぼ同じくらいになります。

 この2つの群について,既婚率などの属性,読書嗜好,自己イメージ,学校時代の運動部経験,朝食摂取頻度を比較してみました。どの設問も無効回答はなく,%の母数は,プアが145人,リッチが140人です。ただし,運動部経験のみ,当該の学校に通った経験のある者がベースとなっています。


 働き盛りのプアとリッチの比較ですが,いかがでしょう。既婚率はプアが23.5%,リッチが77.9%と,大きな差があります。男性が結婚するには経済力が求められる。これは本ブログでも,何度もデータを提示したことです。

 大卒率も大きく違っています。こうした学歴の差が収入の差につながっているのは明らか。

 秋にちなみ,読書嗜好も比べてみましたが,これもリッチのほうが有意に高くなっています。現在のみならず,子ども時代の読書嗜好にも差があり。ダイレクトな因果とはいいきれませんが,子ども期の読書の重要性は,否定できますまい。

 自己イメージの違いも大きいですねえ。生活満足度はプアが21.4%,リッチが62.1%と,3倍近くの開きが出ています。将来展望や人生の主体性の差も大きい。客観的な経済条件の差により,意識にこうも違いが出るとは。学校体験の違いも引きずっているようです(2番目)。

 次に運動部経験ですが,リッチには,学校時代に運動部に属していた経験のある人が,プアに比して多くなっています。まあ企業は,上の命令を従順に聞く体育会系の学生を好んで採るといいますからね。大企業には,体育会系の採用枠もあるそうな。
https://twitter.com/masa_mynews/status/794733841915052033

 生活習慣の代表指標の朝食摂取頻度も,プアとリッチでは違っている。プアには,昼夜逆転など,不規則な生活をしている者が多いためでしょう。

 量的にほぼ等しい,プアとリッチの生活意識を比較してみましたが,結構な違いがあることに驚かされます。われわれの世代では,30~40代のステージになっても,年収200万未満のプアは少数派ではないです。この層が高齢期に到達したとき,今の「暴走老人」以上に,社会を脅かす危険因子になる可能性は大といえましょう。

 人手不足の深刻化から,われわれロスジェネにも正社員化の道を開こうということですが,こういう施策をぜひ進めてほしいと思います。随所で書いていますが,新卒も既卒も,われわれのようなロスジェネも同じ人間。何も違う所はありません。

2016年11月4日金曜日

首都圏243市区町村の大卒人口率

 先日の日経デュアルの記事「子の学力は親の経済力より,親の学歴が影響」にて,首都圏の大卒人口率マップと,上位50位までのランキング表を紹介しました。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=9299

 スペースの関係上,当該記事では,大卒人口率が上位50位までの市区町村しかお見せできませんでした。そこで,「後日,私の個人ブログで全市区町村のデータをアップする」という約束の文言を書いたのですが,「それを見たい」という要望がメールで寄せられました。

 うう,すみません。うっかり失念していました。

 約束はちゃんと果たしましょう。私が明らかにしたのは,首都圏の243市区町村の大卒人口率です。15歳以上の住民のうち,大学以上の学歴保有者が何%かです。学生と学歴不詳者は,分母から除いて率を計算しています。資料は,2010年の総務省『国勢調査』なり。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001039448&requestSender=search

 掲げるのは,大卒人口率が高い順に,243市区町村を並べたランキング表です。資料として,ご覧いただければ幸いです。


 上位3位の区では,住民の半分以上が大卒であると。青色マークは,私が住んでいる多摩市です。ご自身がお住まいの地域は,どこに位置しますか。マークしてみてください。

 各地域の大卒人口率は,子どもの学力ととても強く相関しています。都内49市区を取り出して,小学校5年生の算数平均正答率との相関をとったところ,相関係数は+0.9を超えています。冒頭の日経デュアル記事に載せた図を,ここに再掲します。


 地域の教育計画の立案・評価に際しては,こういう基底的な条件を考慮したいものです。それは何度も繰り返し,私が申し上げていることでもあります。

2016年11月2日水曜日

所得別の未婚率の出し方(実演)

 来年の1月に,某官庁の統計研修の講師をお受けすることになり,昨日,打ち合わせをしてきました。そこにて,「先生の作品を紹介するだけでなく,原資料の数値の羅列からグラフにするまでを実演してほしい」というリクエストを受けました。

 なるほど,そういう要望もあるでしょうね。私は必ず,作ったグラフの末尾に資料名を記していますが,それだけでは「再現」はなかなか叶わないでしょう。独自の加工をかなり施していますし,統計表も探しにくいですよね。

 そこで,これまでの作品の中で注目度の高い「男性有業者の所得別の未婚率」を例に,作成のプロセスを仔細に公開しようと思います。省略は一切ナシです。

 何度も書いているように,グラフの元データは,2012年の総務省『就業構造基本調査』から採取したものです。ではご一緒に,統計局HPを開いた段階から作業を始めましょう。
http://www.stat.go.jp/

①『就業構造基本調査』のページを開く。

②「調査の結果」をクリック。

③「調査の結果」の統計表一覧をクリック。

④「都道府県編」をクリック。

⑤全国の「人口・就業に関する統計表」をクリック。

⑥目当ての表は,「表23」です。エクセルを開きましょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048182&cycleCode=0&requestSender=search

⑦男性のシートを開き,分母(総数)と分子(未婚者)の所得別有業者数を,自分のエクセルにコピペしましょう。黄色マークの部分です。私の年齢層の40代前半を拾ってみます。

⑧所得の階級を100万円刻みに揃え,割り算をし,未婚率を出しましょう。

⑨グラフにして完成! ヨコの棒グラフとかでもいいっす。

 いかがでしょう。私は毎回,こんなプロセスを踏んで,いろいろなグラフを作っています。慣れれば,ものの5分くらいでできるようになります。

 私が学生の頃は,図書館に行って分厚い資料をくくり,該当箇所のコピーをとり,さらにエクセルに入力しないといけませんでした。量が多いとなると,もう一日仕事です。それが今では,エクセルファイルでデータが公開されてますので,コピペ一発です。便利になったものです。

 1月の研修では,注目度の高い作品を例に,原資料からの作成プロセスを実演し,「数値の羅列から,こういう作品ができる」ということを知っていただけたらな,と思っております。