2017年8月15日火曜日

再分配政策の見直し

 自由主義・資本主義の社会では,人々が有している富の量には,著しい傾斜がつけられています。富める者もいれば,貧しい者もいる。

 当然のことですが,その度合いが過ぎると社会が不安定化するので,前者から後者への所得移転(再分配)が行われるのが常です。平たく言えば,富をたっぷり持っていて,生活に困っていない人が,生活に困っている人を助けると。

 しかるにわが国では,生活の困窮度に関係なく,下の世代が上の世代を助ける(支える)という構図が定着しています。制度上は,資産をどっぷり持っていて,高級ゴルフクラブに足繁く通う老人が社会保障給付の対象になり,非正規雇用でカツカツの若者は,彼らを支える側に回らないといけない。

 助ける側になるか助けられる側になるかは,年齢によって機械的に決まるわけです。年齢による役割規範が強い日本ならではのシステムだと思いますが,これはおかしいと思っている人は星の数ほどいるでしょう。

 一橋大学の小塩隆士教授は,そうした現行制度の問題を指摘し,目指すべき制度がどういうものかを,分かりやすい図で示してくださっています。下記内閣府レポートの22ページです。図を拝借させていただきましょう。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2015/__icsFiles/afieldfile/2015/07/16/27zen14kai5.pdf


 現行制度は,生活の困窮レベルに関係なく,若い世代が年老いた世代を支える(助ける)と。しかしこれは「不公平でしかも非効率」なので,年齢に関係なく,生活に困っていない人が困っている人を助ける制度に変えるべきである。こういう提言です。

 多くの人が腹の底で考えていることを,見事に代弁してくださっていますねえ。この図を紹介したツイートが広く拡散しているのも頷けます。

 私はこういう4象限の図を見ると,それぞれの象限に該当する人の数がどれほどかを知りたくなります。上記の図に説得力を添える「+α」の作業として,それを推し量ってみましょう。

 2016年の厚労省『国民生活基礎調査』では,世帯の貯蓄額分布が,世帯主の年齢層別に明らかにされています。下記サイトの表156です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001184705

 私はこのデータを使って,上図の4象限に該当する世帯量を見積もってみました。生活に困っていない世帯は,貯蓄2000万以上の世帯としましょう。生活に困っている世帯は,貯蓄50万未満としましょうか。病気や事故などに見舞われた場合,即座に生活破綻に陥るリスクを抱えている世帯です。

 貯蓄だけでなく収入(所得)も考慮したいのですが,貯蓄と所得のクロスのデータは,年齢層別に得ることはできません。ここでは,ラフな見積もりとして,貯蓄のみに注目することにします。

 世帯主が60歳未満と60歳以上の世帯に分けて,上記の基準を適用して,生活に困っていない世帯と困っている世帯の数(全世帯数を1万とした場合の数)を出しました。下図は,4象限の世帯量を正方形の面積で表現したものです。


 高齢世帯というと,乏しい年金でギリギリの暮らしをしている世帯が多数というイメージですが,そうでない世帯もある。数の上では,貯蓄50万未満の世帯よりも,貯蓄2000万以上の世帯のほうが多くなっています。

 昨日,ツイッターでグラフを発信しましたが,高齢世帯の貯蓄格差は凄まじい。スッカラカンの世帯と,どっぷり貯め込んでいる世帯にはっきりと分化(segregate)しています。後者は,振り込め詐欺の電話1本で何百万もポンと出せる世帯です。

 60歳未満の現役層では,上の富裕世帯よりも下の生活困窮世帯のほうがずっと多くなっています。年齢という軸だけで,これらの世代が「支える側」の位置につかされるのはキツイ。

 生活に困っていない人が,困っている人を助ける。支援の矢印は「上から下」に向くべきであって,「左から右」と年齢軸で決められるべきではありますまい。

 むろん,右上のガッツリ貯め込んでいる高齢世帯も,個別事情は多様でしょう。しかるに,機械的な「年齢主義」を見直す(撤廃する)時期に来ているのは確かです。日本は超高齢化社会のステージに達しているのですから。

 振り込め詐欺は,困窮若年層(左下)による,富裕高齢層(右上)に対するテロ行為のようなもの。振り込め詐欺のプレーヤー研修では,「富裕老人から数百万円巻き上げてもどうってことはない。むしろ,いいことだ」と思わせることに重きを置くそうですが(鈴木大介『老人喰い』ちくま新書),洗脳される側にすれば,妙に説得力を持って聞こえてしまうのも事実でしょう。現行制度において搾取されている,本来受け取るべきの支援を受け取れていない人も多いのですから。

 上記の面積図によると,量的に多数なのはこの2者(困窮若年層,富裕老人層)です。今後ますます,この2つの層は増えていくのではないでしょうか。再分配政策を見直さないと,両者の溝の深まり,葛藤は避けられないでしょう。

2017年8月13日日曜日

スマホだけ族

 2015年2月25日に,「パソコンを持たない若者」という記事を書きました。本ブログで最も読まれている記事の一つです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/02/blog-post_25.html

 日本の青少年のパソコン所持率が,諸外国に比してダントツで低い。若者の「パソコン離れ」を如実に示したデータとして,注目されているのだと思います。ソースは,内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年)です。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html

 本記事にはいろいろなコメントが寄せられましたが,「スマホで用が足りるので,パソコンを持たないのだろう」という意見が多数です。そうですよね。仲間との交信や情報収集はスマホで十分。メールをパソコンで打ったことがない学生もザラでしょう。

 まあ,冒頭の記事で分かるように,日本の若者はスマホの所持率も諸外国に比して低いのですが,パソコンは持たずスマホだけを持っている「スマホだけ族」はさぞ多いことでしょう。情報化社会を生き抜くツールを,もっぱらスマホに依存している人です。

 10代の青少年のうち,スマホだけ族は何%いるか。上記調査のローデータを加工して,国ごとのパーセンテージを出してみましょう。

 下表は,10代(正確には13~19歳)のうち,a)携帯・スマホを持っている者,b)パソコンを持っている者,c)両方持っている者の割合を,調査対象の7か国について計算したものです。


 日本と他の6か国の間に断層ができています。いずれの機器の所持率も,日本は格段に低し。スマホとパソコンを両方持っているのは,日本では半分以下ですが,スウェーデンでは9割もいます。

 「スマホだけ族」の割合は,aからcを差し引くことで得られます。74.6-48.0=26.6%,およそ4人に1人ですか。パソコンだけの者(b-c)は6.7%と,ごくわずかです。

 これらの数値をもとに,日本の10代の情報機器所持の様相を,正方形の面積図で表現してみましょう。下図をご覧ください。新刊『データで読む 教育の論点』(晶文社)の215ページにも掲載している図です。


 スマホだけが26.6%,パソコンだけが6.7%,両方所持が48.0%,両方なしが18.7%,という内訳です。これは日本の10代のデータですが,他国では,この4群の内訳がどうなっているか。最初の表の数値(a~c)をもとに算出すると,以下のようになります。


 スマホだけ族の割合は,日本がダントツで多くなっています。スマホもパソコンも持たない情報機器無縁者も18.7%で,他国よりも格段に多いことに注目。

 年齢を一段上がって20代になると,パソコン所持率が上がるので,両方所持が9割を占めるようになりますが,これは世代の要因でしょう。上表の10代が20代になったとき,パソコンを持つようになるとは考えにくい。

 今では,スマホのような小型機器でも大抵のことはできます。仲間との交信,情報収集,さらにはフリック入力でレポート作成をやってのける学生もいます。

 ツイッターで一回呟くのにも一苦労の私には到底無理なことですが,今の若い世代は違う。これからスマホはますます多機能になっていくと思いますが,10年後くらいには,「パソコンが使えない若者」ではなく,「スマホで仕事ができない中高年」が問題視されるようになるかもしれませんね。

 ただ現段階では,凝った創作物などを生み出すには,スマホよりもパソコンに分があるでしょう。ひろゆきさんの新刊『無敵の思考』(大和書房)に書いてありましたが,「パソコンに慣れている人のほうが,モノづくりの活動は上手くできます」(64ページ)。

 国際的にみて,日本の若者はネットで創作物を発信する頻度が低いのですが,こういう受動的な態度は,スマホ依存でもたらされているのかもしれません。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/02/post-7032.php

 パソコンを持たない人は「消費者のままでいるのですから,実は人生で損をしている」(ひろゆき氏,前掲書,65ページ)。インターネットという文明の恩恵を積極的な仕方で利用できるようなるためにも,子どもをして,パソコンに触れるよう仕向けることは必要でしょう。

 そのためには,パソコンを使う必要に迫られる環境を作ること。それこそ,教育の情報化に他なりません。学校において,提出物や書類のやり取りをネットで行う。これをするだけでも,事態は大きく変わるのではないでしょうか。絵空事に思われるかもしれませんが,ICT先進国のデンマークなどでは日常的な光景です。

 高度情報化社会という状況に置かれているのは,どの国も同じです。にもかかわらず,日本の子どものネット利用は,スマホという小型機器を介した,受動的・消極的なものになっている。それは,子どもの生活が社会から切り離されていることの証左ともいえます。

 子どもの主要な生活の場は学校ですが,かつてデューイは「学校とは陸の孤島のようなもの」と形容しました。日本の学校は未だに,このような状況なのかもしれません。高度情報化社会の波に揉まれるならば,パソコンのような機器を使う必要に迫られるわけですから。

 スマホだけ族という切り口から,学校と外部社会の関係という,大きな問題を抽出できるようにも思います。

2017年8月7日月曜日

戦争(戦場)体験世代の減少

 昨日は8月6日。今から72年前のこの日,広島に原爆が落とされた日です。

 この日には毎年,平和式典が開かれ,戦争を実際に体験した人の談話などが報じられます。戦争の記憶が風化しつつある現在,こうした取り組みの重要性はどんなに強調しても足りません。

 東洋経済オンラインに「いま聞かないと戦争体験者がいなくなる」という記事が載っていました。これは自然の摂理です。時代が経過するにつれ,戦争体験世代はどんどん減少し,やがては皆無になります。
http://toyokeizai.net/articles/-/182215

 その様をデータで可視化してみましょう。そのためには,戦争体験世代を公的統計から拾い出すための操作的定義が必要になります。人によって意見は分かれるでしょうが,私は,1940年以前に生まれた世代がいいのではと考えます。

 終戦時(1945年)には5歳になっていたわけですので,物心はついていることになります。私の母親(故)は1940年生まれですが,1945年の春に鹿児島が空襲に見舞われた時,私の祖母に背負われて火の海を逃げ惑った記憶をよく聞かせてくれました。

 それと,戦場体験世代も取り出してみたいと思います。戦地に赴き,銃を握って戦った経験のある世代です。これは,終戦の1945年に成人になっていた世代でいいでしょう。1925年以前の生まれの世代です。

 2015年の『国勢調査』の年齢統計から両世代の量を明らかにする場合,戦争体験世代は75歳以上,戦場体験世代は90歳以上人口の数を取り出せばよいことになります。私が生まれた年の前年の1975年では,35歳以上,50歳以上の人口が該当することになります。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02100104.do?tocd=00200521

 両年の『国勢調査』の年齢統計(5歳刻み)から,戦争体験世代と戦場体験世代を取り出してみましょう。1975年のマックス階級は「85歳以上」でまとめられています。


 黄色マークが戦争体験世代,その中の赤字は戦場体験世代です。

 1975年では,前者が4761万人,後者が2360万人いました。総人口に占める比率は42.5%,21.1%です。私が生まれた70年代半ばの頃は,国民の5人に2人が戦争体験世代で,5人に1人が戦場体験世代だったと。

 しかし40年を経た2015年現在では,戦争体験世代が1613万人(12.7%),戦場体験世代に至っては177万人(1.4%)にまで減ってしまっています。

 こういう数字をみると,上記記事の「いま聞かないと戦争体験者がいなくなる」という警告が,真実味を帯びてきますねえ。戦場体験世代は,あと10年くらいで皆無になってしまうのではないか。

 今日の中日新聞に,中国の戦地で民間人を刺し殺した体験を懺悔したいという,102歳(1915年生まれ?)の戦場体験者の話が出ていました。「戦争は人の気を狂わせる。常識では分からないことをする」。体温が伝わるような形で,こうした体験を聞ける機会は,あと数年もしたら本当になくなってしまうかもしれません。

 それはいつ頃になるか。過去から現在,そして未来の予測も含めて,戦争体験世代と戦場体験世代の量変化を跡付けてみましょう。

 5年刻みの『国勢調査』と『将来推計人口』に当たって,先ほどの1975年と2015年と同じ要領で,両世代の人口を取り出しました。実数と構成比の変化を以下に掲げます。


 戦場体験世代は,2025年に13万2千人になると見込まれます。総人口の0.1%です。2030年には105歳以上ですが,将来推計人口のマックス階級は100歳以上ですので,この年以降は取り出せません。

 そうですねえ。2030年代の前半には,ほぼ皆無になってしまうのではないか。戦争体験世代は2040年までの推定量を拾えますが,この年で30万9千人(0.3%)ほど。2050年には,ほとんどいなくなってしまうでしょう。

 こんな細かい数字を整理せずとも分かることですが,この世代の証言をきちんと記録しておくのは大事なことです。

 夏休みは,子どもたちにはぜひ,戦争体験世代の話を直に聞いてほしいと願いますが,今の子どもは,祖父母もほとんどが戦争非体験世代ですので,なかなか機会を得るのも難しいでしょう。

 しからば,活字(本)ということになります。戦争体験の本は無数に出ていますが,私が勧めるのは,西村滋さん(故)の『お菓子放浪記』です。全3巻で,1巻が1976年,2巻(続編)が1994年,3巻(完結編)が2003年に,理論社から刊行とあります。


 作者は1925年の生まれで,戦間期を孤児として過ごしました。終戦時には成人になっていましたが,自身が在籍していた孤児院で,戦争孤児の世話をしたという人です。

 本書は,作者のそういう経歴(体験)が投影された,戦争孤児の物語です。戦争の悲惨さだけでなく,戦争が子どもの心にいかに深い傷をもたらすが,赤裸々に訴えられています。戦争孤児が焼け跡をたくましく生きるというような,美談モノではありません。

 それは,登場人物の以下のセリフを引くだけで分かります。世界中の首脳者に聞かせたい名言です。

戦争孤児が立派になってはいけない。戦争が好きな奴らが安心して,いつでも戦争をやろうとするから」。

 1976年に出た1巻は,全国の青少年読書感想文コンクールの課題図書にもなったそうです。当時から40年以上経ちましたが,この本のよさは,いささかも色あせてはいません。今の子どもたちにも,ぜひ読んでほしい。私が課題図書の選考委員なら,真っ先のこの本を推薦しますね。

 まあ,人から読めと言われた本なんて,8割方つまらないのが常なんで,自分が読みたい本を読んでもらえばいいのですが。ただし,戦争体験の本をね。

 ただ気が向いたら,ぜひお手にとってください。名著ですので,近くの図書館にあるかと思います。よい夏休みを。

2017年8月4日金曜日

都道府県別の大学進学率(2017年春)

 今年度の文科省『学校基本調査』の速報集計結果が公表されました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 タイトルのごとく,学校数,児童生徒数,卒業後の進路など,学校に関する基本データを載せた,公的な基本統計資料です。教育学,とりわけ教育社会学の研究者で,この資料を知らない人はいないはずです。

 児童数が過去最低になった,大学生の就職率が過去最高になったなど,いろいろなファインディングが報じられていますが,私が関心を持つのは大学進学率です。

 2017年春の,18歳人口ベースの浪人込みの大学進学率は52.6%で,前年度の52.0%を上回りました。今では同世代の半分が4年制大学に進学しますが,そのことの数値的な表現です。

 しかるにこれは全国の数値で,地域別にみれば値は大きく違っています。地方出身という身の上もあり,私はこの問題にずっと関心を持ってきました。毎年,『学校基本調査』のデータが公表されたら,都道府県別の大学進学率を計算することにしています。2017年春の大学進学率の地域格差は,どうなっているでしょうか。

 大学進学率とは,進学該当年齢(18歳人口)のうち,4年制大学に進学した者が何%かです。『学校基本調査』から出す場合,当該年春の大学入学者数を,3年前の中学校・中等教育学校前期課程卒業者数で除して算出します。

 分子には,過年度卒業生(浪人経由者)も含まれますが,当該年の18歳人口からも浪人を経由して大学に入る者が同程度出るであろうと仮定し,両者が相殺するとみなします。

 2017年春の大学入学者は62万9736人で,3年前(2014年春)の中学校・中等教育学校前期課程卒業者は119万8290人ですので,今年春の大学進学率は上述の通り,52.6%となる次第です。

 都道府県別に出す場合は,分子は,当該県の高校出身の大学入学者数を充てることになります。

 以上が,18歳人口ベースの浪人込みの大学進学率の計算方法です。これは私が独断で考えたものではなく,公的に採用されている計算方法であることを申しておきます。

 このやり方で,2017年春の47都道府県の大学進学率を計算してみました。ジェンダーの違いも見たいので,男女別の数値も出しました。下表は,その一覧です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値,赤字は上位5位です。


 左端の男女計の数値をみると,全国値は52.6%ですが,県別にみると東京の72.8%から大分の36.9%までの開きがあります。前者は後者のほぼ倍です。同じ国内とは思えぬほどの格差ですね。

 最下位の県は男女で違っていて,男子は沖縄,女子はわが郷里の鹿児島です。毎年のことですが,鹿児島はジェンダー差が大きくなっています。男子の進学率(42.7%)は,女子(32.5%)の1.3倍以上です。2015年に,本県の知事が「女子に三角関数を教えて何になる」と発言したことが思い出されます。

 表の右端には,このジェンダー倍率を掲げています。大学進学率の性差が最も大きいのは山梨,その次が鹿児島,3位は北海道です。

 しかし東京と徳島は,男子より女子の大学進学率が高くなっています。女子の場合,一人暮らしをさせるのを躊躇う親御さんが多いでしょうが,東京は,自宅から通える大学が多いという条件があるためでしょうか。徳島は,どういう事情でしょう。県内に大きな女子大があるというわけではなさそうですが…。

 毎年のことですが,大学進学率には凄まじい地域格差があります。都市部で高く,地方で低い。大学が都市部に偏在しているためですが,住民の階層構成とも強く相関しています。

 県民所得と強い相関関係にあるのは,大学進学には多額のコストがかかり,経済的理由で進学を断念する生徒が地方に多いことの表れです。しかるに,親の意識も大きいようで,親世代の大卒人口比率は,所得よりももっと大学進学率と強く相関しています。

 下図は,18歳人口の親世代(45~54歳)の大学・大学院卒比率と,上表の男女計の大学進学率の相関図です。


 スゴイですねえ。相関係数は+0.8698にもなります。費用負担のような経済要因よりも,親が大学進学をどう考えるかという意識や価値観,言うなれば文化資本的な要因が効いているようです。

 まあしかし,大学進学チャンスの地域格差の是正に際しては,経済的支援が大きな位置を占めるのは疑いようがありません。

 日本は大学進学率が50%を超えており,幅広い階層に高等教育機会が開かれた社会ですが,それは家計に大きな費用負担を強いていることで成り立っており,ここで見たような凄まじい地域格差を内包していることを,決して忘れてはいけません。

 教育基本法第4条が規定している「教育の機会均等」の理念が,全く持って実現されていない。そのための「奨学の措置」が,有利子の金貸し事業(名ばかり奨学金)というのは通用しません。*給付型の奨学金が導入される運びにはなりましたが。

 上記のような大学進学機会の地域格差は,個人にとっての「不平等」の問題にとどまりません。地方に埋もれた有能な才能を放置することになり,社会にとっても損失となります。子どもの学力上位の秋田や福井は,大学進学率が低いのです。学力テストの平均正答率と大学進学率の相関図を描くと,何とも奇妙な図柄になります。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/10/blog-post_20.html

 ヒトしか資源のない日本にとって,このような事態は看過できますまい。有能な人材を掘り出すための費用(給付奨学金,学費減免枠の拡大…)を,ケチっている場合ではないでしょう。

2017年8月3日木曜日

『データで読む 教育の論点』が出ました

 拙著『データで読む 教育の論点』が晶文社より発刊されました。アマゾンでの発売が開始され,全国の大きな書店には置かれている模様です。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364

 表紙写真と中身ちょい出しの写真を載せておきましょう。編集担当のA氏がツイッターで発信されているものを拝借いたします。
https://twitter.com/andorakia


 タイトルの『教育の論点』とはよく言ったものですが,本ブログの一部書籍化です。1)子ども,2)家庭,3)学校,4)若者,5)社会,という5つの柱を立て,72本の記事を精選し,一冊の書物として筋が通るよう配列し,文章やデータもリファインしています。

 印象やフィーリングで語られている教育事象を,データを使ってできるだけ丁寧に「見える化」しています。各地の議員さんから「議会質問に使いたい」というリクエストをいただいた,保育所在所率と児童虐待の相関図(102ページ)なども載せています。

 盛られている内容の詳細は,冒頭の出版社HPをご覧ください。教育関係者の方々の実務に寄与する部分もあるかと存じます。

 難しい理屈や数式を並べ立てた本ではありませんので,教育や社会に関心を持つ一般の方々に読んでいただけたらと思っております。統計がたくさん載っていますが,使われているのは四則演算だけです。中学校レベルの数学力で十分理解できる内容です。ひるむなかれ。

 本書に載っているデータは,公開されている公的統計資料から作成したものです。計算のプロセスについても仔細に説明していますので,読者はその気になれば,データの再現可能性を追試することができます。億劫な作業かもしれませんが,それをやってくれる人が出てくることを願います。公的統計を使いこなせる人が増えるからです。大学の調査統計法の作業課題としても,いいのではないでしょうか。

 社会現象を数で可視化する技法の手引きにもなるかと思いますが,私のやり方はかなり「自己流」です。したがって,反面教師として使っていただく用途もあろうかと思います。

 書店に平積みになっているという,うれしい情報提供もあります。夏休みの読み物として,多くの人に手にとっていただけたらと願っております。
https://twitter.com/kumiko_a_o/status/893065367848865792

2017年8月2日水曜日

治安と未婚単身女性比の相関

 ソロ社会研究者の荒川和久氏が,興味深いデータをツイッターで発信されています。
https://twitter.com/wildriverpeace/status/891639494104842241

 40代の単身未婚者数の男女差を都内23区別に出したところ,男性は北東の下町ゾーンが多いのに対し,女性は世田谷や目黒など,家賃が高いエリアで多いのだそうです。これをもって,「男女未婚者の貧富の差」が出ていると指摘されています。

 なるほど。男性は未婚者ほど年収が低いが,女性はその逆であることは,私も繰り返しデータを提示してきました。確かに,「男女未婚者の貧富の差」の表れともいえましょう。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/09/post-3882.php

 荒川氏は,2015年の『国勢調査』からデータを採取されたそうです。私も同じ資料にあたって,データを揃えてみました。年齢は一段下がって,35~44歳のアラフォー年代にすることにしましょう。

 以下に掲げるのは,都内23区別の35~44歳の未婚単身者数です。正確にいうと,単独世帯の世帯主の数です。下記リンク先の表6から得ることができます。ピンク色のDBボタンを使って,「地域×性別×年齢×配偶関係×世帯類型」のクロス表を作るとよいでしょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001077451&cycleCode=0&requestSender=search


 男性が多いか女性が多いかは,区によって違っています。右端に「女性/男性」の倍率を出しましたが,最も高いのは目黒区で1.39倍です。この区のアラフォー未婚単身者は,女性のほうがかなり多くなっています。

 その逆は足立区で,同じ倍率は0.49倍です。男性が女性の倍以上となっています(男性5739人,女性2812人)。

 赤字は,この倍率が1.0を超える区,つまり女性のほうが多い区を指します。中央区,港区,文京区,目黒区,世田谷区,渋谷区,そして杉並区ですか。なるほど。男女の対比でみる限り,荒川氏の言われるように,家賃(所得水準)が高い区で,未婚の単身女性は多いように見受けられます。

 反対の特性を持つ城東エリア(足立,葛飾,江戸川)では,この倍率は0.6に達しません。アラフォーの未婚単身者は,女性より男性がうんと多くなっています。

 以上は荒川氏のデータの「再現」ですが,上記のジェンダー倍率(未婚単身女性の相対量)は,地域の治安とも相関しているでしょう。独り身の女性の場合,治安を考慮して居住地を選択するといいますし。

 私は前に,都内23区別の犯罪発生率を計算したことがあります。2015年中の刑法犯認知件数を,各区の昼間人口で除した値です。都内23区は通勤・通学の移動が激しいので,定住人口に流入人口を加えた昼間人口をベースにするほうがよいでしょう。計算方法の詳細は,下記リンク先の記事をお読みください。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/05/23.html

 アラフォーの未婚単身者の「女性/男性」倍率と,2015年の犯罪発生率の相関をとると,下図のようになります。


 犯罪発生率と「女性/男性」倍率の間には,マイナスの相関関係が観察されます。相関係数は-0.6164であり,1%水準で有意です。

 犯罪発生率が低い区は,未婚の単身女性が多く住まう傾向があると。予想はしていましたが,治安との相関関係は出てくるものですね。完全にきれいな傾向ではないのですので,オートロック物件の比重など,他にもファクターはあるでしょうけど。

 都内23区の統計をいじってみると,いろいろな側面の地域分化(regional segregation)を浮かび上がらせることができます。

2017年7月31日月曜日

2017年7月の教員不祥事報道

 いやあ,暑くなりました。快晴の日が続きますが,昼食後の散歩は暑くてできません。7月も今日で終わりです。今月,私がネット上で把握した教員不祥事報道は40件です。

 赤字は珍事案。ツイッターでの問題投稿,掲示板への書き込みでわいせつ行為発覚とありますが,SNSをやる先生も多いかと思います。最近の教員採用試験では,不祥事防止の問題がよく出るのですが(大阪は毎年),ネットルールの問題も出るようになるかもしれません。

 埼玉の小学校教諭の「窓から飛び降りろ」発言。私の頃は,「ここ(4階)から突き落としてやろうか」とか「簀巻きにして屋上から放り投げるぞ」とか,ポンポン言われたことを思い出します。世代別に,私が聞いた「先生のトンデモ発言集」みたいのを編集して本にしてほしい…。

 アンケートの書き直し強要事案(兵庫,小学校)。今は評価の時代ですが,児童・生徒のアンケートもやるんですね。指導材料にするため実名制にするのでしょうが,自身の指導改善のための事情聞き取りならいいですが,回答改竄は論外。

 明日から8月,いよいよ夏本場です。ここ横須賀の夏は,前住の多摩市よりも暑そう。でも海辺ですので,心地よい海風が吹き,嫌な暑さではないです。

 今週の木曜(8/3),新刊『データで読む 教育の論点』が晶文社より刊行されます。夏休みの読み物として,広く一般の方々に読んでいただけることを願っております。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364

<2017年7月の教員不祥事報道>
<忘れ物>多い児童の名前ランキング掲示 教諭に注意 長野
 (7/1,毎日,長野,小,女,50代)
無免許運転の教諭 停職6か月(7/4,日テレ,大分,男,58)
高校教諭が下半身映った動画投稿(7/3,京都新聞,京都,高,男,31)
県立高校教師が書類を不法投棄し 書類送検
 (7/3,朝日放送,滋賀,高,男,31)
強制わいせつ:小学校臨時講師を再逮捕(7/5,毎日,愛知,小,男,29)
懲戒免職:覚醒剤譲受で逮捕 小学教諭を処分
 (7/7,毎日,鹿児島,小,男,35)
23歳女性の服に手入れ胸触る 37歳保育教諭を強制わいせつで逮捕
 (7/9,産経,滋賀,幼,男,37)
「援交募集」女子生徒なりすまし投稿容疑 高校教諭逮捕
 (7/10,朝日,滋賀,高,男,35)
わいせつ行為 中学講師を免職処分 岡山市教委
 (7/11,山陽新聞,岡山,中,男,29)
「首相殺してもらうしかない」ツイッターで高校教諭が投稿
 (7/12,神戸新聞,兵庫,高,男,60)
児童の成績一覧表など挟んだノート紛失(7/13,産経,大坂,小,男,20代)
公然わいせつの男性講師を「停職1か月」の懲戒処分
 (7/13,岩手放送,岩手,高,男,20代)
女性はね死亡させる…県教委が女性教諭処分 男性教諭も別事故で処分
 (7/14,埼玉新聞,埼玉,小女57,高男33)
教師が小4児童に「窓から飛び降りろ」(7/17,日テレ,埼玉,小,男,40代)
中学校男性教師がサバイバルナイフ“所持”で逮捕
 (7/19,テレ朝,青森,中,男,49)
高校教諭が個別指導時に女子生徒の胸触る(7/19,サンスポ,千葉,高,男,26)
2歳娘にかみつく、虐待か=傷害容疑で教員逮捕
 (7/19,時事通信,大阪,小,男,22)
思い込みで無実の児童を平手打ち 宮古島の小学校教諭
 (7/19,沖縄タイムス,沖縄,小,男,50代)
女子中学生に淫行容疑で小学校教諭逮捕(7/20,産経,広島,小,男,26)
酒気帯び運転で男性教諭を懲戒免職処分(7/20,日テレ,長野,高,男,47)
理科実験で爆音、18人病院へ 教頭が水素の量ミスか
 (7/20,神戸新聞,兵庫,小,男,51)
教諭2人を懲戒免職 盗撮、路上で女性の体を触る
 (7/21,日刊スポーツ,山口,盗撮:小男52,わいせつ:特男24)
授業中に児童の骨折る 担任の講師を懲戒処分(7/21,朝日,福岡,小,男,30)
県立高女子サッカー部の顧問 部員名簿なくす
 (7/21,毎日放送,滋賀,高,男,48)
教諭がアンケの書き直し強要か(7/22,神戸新聞,兵庫,小,男,30代)
飲酒運転疑いで教諭逮捕 群馬・渋川(7/22,産経,群馬,高,62)
懲戒処分:免停講習後当日に運転の男性教諭(7/24,毎日,大分,男,58)
女子高生スカート内撮影で逮捕の小学校講師を免職 
 (7/24,日刊スポーツ,奈良,小,男,23)
盗撮で伊勢市の中学教諭を懲戒免職(7/25,CBCテレビ,三重,中,男,34)
男児にわいせつ 臨時講師を逮捕(7/25,CBCテレビ,愛知,小,男,29)
サンダルにカメラで盗撮の中学講師を免職(7/26,産経,福岡,中,男,46)
「事故に遭えばいい」 教諭が児童たちに発言
 (7/26,西日本新聞,熊本,小,男,50代)
住居侵入の疑い 今治西高教諭の男を逮捕(7/26,愛媛新聞,愛媛,高,男,42)
相模原市立中教諭を逮捕=同僚の財布窃盗容疑
 (7/27,時事通信,神奈川,中,男,51)
「一緒に飲みませんか」電車内で男性に痴漢(7/27,産経,東京,高,男,53)
女性教諭1200万円着服で免職 夫にせがまれ 親の医療費のはずが競馬代に
 (7/28,産経,大阪,高,女,29)
小学校教頭、女性下着持ち帰り免職「楽しみになっていた」
 (7/28,サンスポ,長崎,小,男,59)
教諭懲戒処分:女児に手紙「恋愛感情が抑えられなかった」
 (7/28,毎日,埼玉,小,男,28)
体罰で中学教諭を停職3カ月 奈良県教委(7/31,京都新聞,奈良,中,男,53)
女子生徒と淫行容疑、中学校講師を逮捕 書き込みで発覚
 (7/31,産経,大阪,中,男,24)

2017年7月29日土曜日

卑怯者よ

 先ほど更新の記事「相関と因果について」に,以下のコメントが書き込まれました。公開拒否にしてますが,スクショを掲げます。


 画像が見にくいですので,転写しましょう。

**********
舞田先生,いつもブログを楽しみにしています。
また,新刊の発売,おめでとうございます。

さて,1ファンとして,1つ懸念がございます。

舞田先生は,プレジデント社やコンサルの方などについて,ブログで言及していらっしゃいますが,あのような記事は早めに削除したほうがよいのではないでしょうか。

と言いますのも,8月3日になれば,誰でも,アマゾンで新刊のレビューを書くことが出来てしまいます。

舞田先生のお気持ちは分かりますが,できるだけ敵を減らしておいた方が,アマゾンレビューに変なことを書き込まれなくてよいのではないか,と思った次第です。

特に,最近,下記のブログ記事が,少しずつ拡散しているようでございます。
★匿名の誹謗中傷ブログのURL(転写者)

↑のような記事が,アマゾンレビューに掲載されてしまいますと,先生の名誉が地に落ちてしまうのではないか,と危惧いたしております。

そのような理由で,老婆心ながら,先生にとって,まずいことにならないよう,コメントさせて頂いた次第です。

それでは,暑い日が続きますが,お体ご自愛くださいませ。

かしこ
**********

 匿名ですが,発信者が誰かは容易に推測されます。末尾に「かしこ」とつけて女性を装っていますが,何とも滑稽です。

 いやあ,コンサルさん。例の事件の記事で仕事が減って困っているとはいえ,ここまでやりますか。「当該記事を削除しろ,さもなくばアマゾンに誹謗中傷レビューを書き込む」ですか?

 正論で叶わないとなると,陰(匿名)でコソコソ人を陥れるようなことをする。あなたは,どうしようもない卑怯者ですね。

 あなたには何としても,人様に物を教えるような仕事は退いてもらわないといけません。例の記事は永久に公開することといたします。恥を知れ,卑怯者よ!!

相関と因果について

 つまらないことをベチャベチャ言っている人がいますので,私の考えを示しておきましょう。面倒なので,間もなく出る新刊『データで読む 教育の論点』(晶文社)の一部で替えさせていただきます。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364

 コラム「見かけの相関に注意」のゲラのスクショです。改ページしてますので,行間が空いてますが気にしないでください。


 慎重なのは結構ですが,それが過ぎて何も言わない(言えない),というのはつまらないと思います。生煮えでもいいから情報(アウトプット)を出して,議論のタネにしてもらったほうがいい。私は,こういう考えでいます。

 風変わりな発言をして叩かれる著名人がいますが,そういう人に私は敬意を表します(他人への人格攻撃などは論外ですが)。私は,「面白い人」が好きです。

 「舞田はいい加減なデータで社会を惑わす犯罪者だ」と言われたことがありますが,実に光栄です。お礼に,次の言葉を贈りましょう。「犯罪は,社会にとって有益である」(デュルケム『社会学的方法の規準』)。

2017年7月28日金曜日

学歴社会の可視化

 学歴別の年収・労働時間を,一風変わったグラフで表現してみました。ツイッターで発信したところウケているようですので,元データも添えてブログにも載せておきましょう。

 労働者のお給料を学歴別に知れる公的な資料は,厚労省の『賃金構造基本統計』です。最新の2016年調査には,同年6月の月収と,前年(2015年)の年間賞与額が記載されています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

 月収(諸手当込)を12倍して年間賞与額を足すことで,年収を推し量れます。この資料には,月の所定内労働時間と超過労働時間も出ていますので,両者の合算を12倍して,年間の労働時間としましょう。

 私の年代(40代前半)の一般労働者について,学歴別の年収と年間労働時間を計算すると,以下のようになります。一般労働者とは,パート等の短時間労働者を除く労働者です。フルタイム労働者に近いとみてよいでしょう。

 10人以上の民間企業に勤務する,一般労働者のデータです。原資料では,学歴は4つの区分になっています。


 バリバリの働き盛りですが,男女とも年収は学歴によって大きく違っています。男性の中卒の年収は449万円ですが,大卒は720万円。女性の中卒と大卒は,倍近くの開きです。学歴社会ニッポン,未だに健在なり。

 性差も大きいですね。男性の高卒(519万円)と女性の大卒(533万円)が同じくらいです。学歴差よりも性差に憤る人がいてもおかしくないでしょう。

 労働時間にも学歴差があります。低学歴ほど長い傾向です。これは知らなかった…。

 高学歴ほど年収が多く,労働時間が短いですので,前者を後者で割った時間給(a/b)は学歴ときれいに比例しています。男性では,大卒であるかどうかで違いが大きくなっています。

 右端は,該当する労働者の推定数です。70年代生まれの私の世代では,中卒はマイノリティです。ただ今ほど大学進学率は高くなかったので,数としては男女とも高卒が最も多くなっています。20代だったら,大卒が最も多い「逆ピラミッド」になっているでしょう。

 さて,上表のデータをグラフにしてみましょう。2次元の平面を駆使して,年収,労働時間,時間給,労働者数の4要素を軒並み表現してみます。


 男女とも低学歴になるほど,労働時間が長く,年収が少ない右下にシフトしてきます。時間給も,男性の中卒は2000円,女性の中卒は1500円を割ります(斜線)。

 アラフォーの学歴格差の可視化ですが,いかがでしょう。高学歴の労働者は生産性が高いのだから,高い給与を得て当然。ベッカー流の人的資本論に基づくコメントがツイッターで多数寄せられましたが,この古典理論を支持する人は今はそう多くないでしょう。

 「大卒なら間違いない,地頭がいいので訓練可能性に富む」。こういう見方をとっている大企業が,人材選抜の(手軽な)シグナルとして学歴を使っているだけのこと。企業が大卒者を好んで雇うのは,彼らが大学で身に付けた知識やスキルに期待してのことではない。訓練可能性を見込んでのこと。こうした「シグナリング理論」が現実を言い当てているように思えます。

 ただ上記のグラフは,学歴格差よりもジェンダー格差を如実に表しているともいえます。同学歴でも,男性と女性のドットの距離が大きい。労働時間を加味した時間給も,男性のほうがずっと多くなっています。諸外国のデータで同じグラフを作ったら,こんなふうになるでしょうか。

 当人の仕事の質(何ができるか)よりも,性や学歴といった属性(何であるか)がモノをいう。近代社会が否定したはずの属性主義が生き長らえることを,われわれは見逃すべきではありません。

2017年7月26日水曜日

強い町田市

 「子どもの転入超過数全国3位,子育てしやすい町田」という記事を見かけました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170725-00000059-minkei-l13

 転入超過数とは,1年間の転入者数から転出者数を差し引いた数で,人口流入の度合いの指標としてよく使われます。町田市は,2016年の15歳未満人口の転入超過数が808人で,全国3位であったとのこと。

 私はこれまで,親年代(25~39歳など)の転入超過数をもとに,「子育てに選ばれる街はどこか?」という主題を考えたことがあります。しかるに,この中には未婚者も含まれますので,事態を読み違える危険もあるでしょう。

 考えてみれば,子ども人口の動きに着眼するのがベストかもしれません。上記の記事に触発され,首都圏(1都3県)の市区町村について,年少人口の転入超過数を拾ってみました。

 資料は,総務省『住民基本台帳人口移動報告』です。最新のデータは2016年のものですが,ちょっと前の2010年との比較もしましょう。もっと前まで遡りたいのですが,年齢別の転入超過数を市区町村レベルで知れるのは,2010年調査からのようです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000000070001

 両年について,1都3県の市区町村の年少人口の転入超過数を採取し,高い順に並べてみました。上位20位までを示すと,以下のようになります。言わずもがな,年少人口とは15歳未満人口のことです。


 子ども人口の流入度を指標とした,「子育てに選ばれる街」の一覧です。ほう,2010年と2016年とも,トップは町田市ではないですか。東京南端のこのエリアは,一貫して強いのですね。

 黄色マークは,両年とも上位10位にランクインしている地域で,安定して子ども人口を吸い寄せていることが知られます。東京の町田と八王子,千葉北西の3エリアです。「母(父)になるなら流山」のフレーズで知られ,駅前保育を展開している流山市も入っています。

 赤字は,両年とも上位20位に入っている地域。黄色マークの最強5エリアには及びませんが,これらも安定して子育てに選ばれている地域といえましょう。さいたま市や,神奈川の茅ヶ崎市が顔を見せています。

 しかし,町田市がこんなに強いとは知りませんでした,一時,ヤンキーが多いとか,都内で少年非行の発生率が最も高いとか言われたことがありますが,ここまで安定して子ども人口を引き寄せているとは。

 冒頭の記事によると,駅チカの子どもセンター,子育て支援サイトできめ細やかな情報発信をし,今年10月には駅から保育所までの送迎サービスも開始するとのことです。来年には小田急線も複々線化し,都心へのアクセスがさらに快適になります。「伸びしろ」も多く残しています。

 1都3県の全市区町村の転入超過数を拾いましたので,それを地図にしておきましょう。最新の2016年のマップです。4つの階級を設け,242の市区町村を塗り分けてみました。


 白色は転入超過数がマイナス,つまり子どもが出て行っているエリアです。東京の都心は,ほぼ真っ白ではないですか。それを濃い色が円状に取り巻いていて,小学校の社会科で習った「ドーナツ化現象」のような模様になっています。

 都心を取り巻く濃い色は,子育てに選ばれる地域で,千葉の北西部,さいたま市,町田・八王子,そして湘南エリアが該当します。

 親年代の転入超過数のマップは都心が濃い色になり,「子育ても都心回帰」という印象を与えるのですが,この中には未婚者が含まれるので,誤解が生じる恐れがあります。子ども人口の動きに着眼した,上記のマップのほうがベターでしょうね。

 冒頭の記事に接したおかげで,認識を改めることができました。今は,ネットでいろいろな記事を読めますので,とてもありがたい。それを参考に,自分が作ったデータを絶えず精緻化させていこうと思っています。

2017年7月22日土曜日

共働き男性のWLB,家事分担度

 昨日,共働き男性の家事・家族ケア時間の国際比較を,ツイッターで発信しました。横軸に5時間未満,縦軸に20時間以上の者の割合をとった座標上に,それぞれの国を配置したグラフです。

 日本の外れっぷりが一目瞭然。横軸の値(≒妻ワンオペ率)が飛び抜けて高く,縦軸は最も低し。見てくださる方が多いようです。

 しかるに,男性の家事・家族ケア時間だけを切り取ってみるだけでは不十分でしょう。男性の生活時間の多くを占める仕事時間(①),またパートナーとの分担度という点から,女性の家事・家族ケア時間(②)との対比もしないといけません。

 ①との対比から男性のワークライフバランス度,②との対比から妻との家事分担度が分かることになります。この点のデータも見たいという要望が多数でしたので,それを作ってみることにしましょう。

 ISSPの『家族と性役割の変化に関する意識調査』(2012年)では,各国の成人男女に対し,週間の家事・家族ケア時間と仕事時間を問うています。

 本調査のローデータを加工して,子がいる共働き男性の家事・家族ケア時間(A),仕事時間(B),同じ条件の女性の家事・家族ケア時間(C),の週間平均時間を計算しました。この3つから,以下の指標を割り出すことができます。

 男性のワークライフバランス度=A/(A+B)
 男性の家事・家族ケア分担度=A/(A+C)

 単位は%で出しましょう。下表は,37か国の結果の一覧表です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。カナダ,インド,韓国は共働き男性(女性)のサンプル数が50人に満たないので,分析対象から外したことを申し添えます。


 日本の共働き男性の家事・家族ケア時間は8.6時間で,飛び抜けて低くなっています。仕事時間は51.9時間で,中国に次いで長し。家事・育児時間が短く,仕事時間が長いので,WLB度は14.1%と低くなっています。37か国で最低です。

 同じ共働き女性の家事・家族ケア時間との対比により,妻との分担度を推し量るとわずか16.0%(6分の1)で,こちらも世界で最低です。

 日本の男性の生活構造の歪みが数字で表れていますねえ。共働きといっても,日本の女性は多くがパートで,就業時間が短いということもあるでしょうが,これはヒドイ。

 算出された,共働き男性のWLB度と家事・育児分担度の布置図を描いてみましょう。下図は,横軸に前者,縦軸に後者をとった座標上に,37の社会を配置したものです。点線は,37か国の平均値です。


 ぐうの音も出ません。日本のパパは,自身のワークライフバランス(仕事と生活の調和)が悪く,妻との家事分担もできていない。

 この要因を,日本の男性の長時間労働だけに帰すことはできますまい。日本国内の共働き男性のサンプル(63人)でみると,就業時間と家事・家族ケア時間に相関関係は認められません。長時間労働の男性ほど家事・育児時間が短い,という傾向はない。

 当人の家事スキル,妻の意識など,いろいろな要因が交じり合っていると思われますが,平均値でみた国際的な位置は上記のようになるのは事実です。これでは少子化に歯止めがかかりません。日本の「働き方改革」,待ったなしです。

2017年7月17日月曜日

ワンオペ家事

 「ワンオペ」という言葉が流布しています。人手不足のファーストフード店の夜勤を,店員1人で切り盛りする。こういう状況を問題視したフレーズです。

 しかるにワンオペは,職場だけではなく家庭でも蔓延っています。よく聞かれるのは,ワンオペ育児です。夫が育児をせず,もっぱらその負担が妻に課せられる。現在,日経デュアルでこの問題の特集が組まれており,読者の関心を集めています。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=10851

 私も同Web誌で連載を持っていますので,この問題に関するデータを提示できないかと前から思っていました。基本事項として,共働き夫婦のうち,妻のワンオペ育児の状態にある夫婦が何%くらいか。ワンオペ育児の量を可視化したい。

 こういう関心のもと,『社会生活基本調査』の統計表を細かくみたところ,ワンオペ家事の夫婦の比率を捻り出せることを知りました。2011年の同調査の生活時間統計によります。

 生活時間統計(A)の表64では,共働き世帯の数が,夫と妻の家事関連時間(1日あたり)の階級別に集計されています。家事関連時間とは,家事と買い物時間の合算です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001040666&cycode=0

 手始めに,0歳の乳児がいる共働き夫婦のクロス統計表をみてみましょう。下表は,カテゴリーを簡略化した「5×5」のクロス表です。表側(タテ)は夫,表頭(ヨコ)は妻の家事関連時間(平日1日あたり)の階級です。各セルには,該当する世帯の数(千世帯)が示されています。


 合計30.5万世帯ですが,夫の家事時間がゼロの世帯が多いですねえ(一番上の行)。夫の家事時間がゼロで,妻がそうでない「妻ワンオペ家事」世帯は,黄色マークのセルに該当します。その数13.4万世帯で,全体の43.9%に該当します。

 妻はパートないしは時短勤務という世帯が大半でしょうが,これは酷い。手のかかる赤ちゃんがいる共働き世帯の半分弱が,妻ワンオペ家事の世帯であると。せいぜい2~3割くらいかと思ってましたが,ここまで多いとは驚きです。

 これは平日のデータですが,土曜や休日になると,さすがに少しは比率が下がります。しかるに,子どもが大きくなるにつれ,事態は悪化してきます。

 私は同じやり方で,共働き世帯に占める「妻ワンオペ家事」世帯の割合を,曜日別,末子の年齢別に計算してみました。下図は,結果をグラフにしたものです。


 子どもが大きくなるにつれて,妻ワンオペ家事世帯の比率が高くなっていきます。平日でみると,末子が学齢(6歳)に達した以降は,およそ8割で推移します。土曜は6割,休日は半分ほどです。子どもが加勢するようになるからかもしれませんが。

 これは共働き世帯のデータです。夫婦ともフルタイム勤務の世帯では状況は違うでしょうが,妻が一手に家事を担っているワンオペ世帯がここまで多いとは,看過できることではありません。

 ここでみたのはワンオペ家事の世帯割合ですが,ワンオペ育児の世帯量も,同じようなものかもしれません。

 最新の2016年調査のデータでは,何%くらいになるでしょう。2016年の生活時間調査の結果は,9月に公表されます。はて,ここ数年のワークライフバランス政策の効果が実証されるかどうか…。

 その前に,国際比較もやってみたいところ。ISSPの「家族と性役割の変化に関する意識調査」(2012年)で,家事・育児時間を訊いていたような。「夫ゼロ,妻その他」のワンオペ世帯率が国によってどう違うか。日本の位置はどうか。あまりやりたくない分析ですが,避けては通れない課題です。

2017年7月15日土曜日

子どもの読書実施率の変化

 2016年の『社会生活基本調査』のデータが公表されました。本調査は,生活行動の調査と生活時間の調査の2本立てからなり,昨日公表されたのは前者のデータです。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.htm

 生活行動調査は,過去1年間に**をやった人が何%か,というものです。生活時間調査では,**の1日あたりの平均時間は何分か,という数値が示されます。後者の結果公表は,9月とのことです。

 今回は,生活行動調査のデータ分析の第一報といきましょう。テーマは,タイトルにあるように,子どもの読書実施率の変化です。学校に在学している児童・生徒・学生のうち,過去1年間に,趣味としての読書をした者は何%か。各地で子どもの読書活動推進に向けた取組がされていますが,その成果を数値で垣間見てみましょう。

 ここでみるのは,趣味としての読書ですので,自発的な意志によるものに限られます。よって,学校の朝の10分間読書のような,強制的な意味合いのものは含まれないと思われます。

 小・中・高校生とその他の在学生(≒大学生)の,趣味としての読書実施率(過去1年間)を,2006年調査と2016年調査で比べてみます。結果をシンプルなグラフでお見せしましょう。


 どの段階の読書実施率も,この10年間で下がっています。上の学校ほど減少幅が大きく,高校生はマイナス5.6ポイント,大学生はマイナス9.7ポイントです。10年前は,小中高と大学の間に落差があり,「さすがは大学生」という感じだったのですが,今では大学生と小学生が接近してしまっています。

 まあ,ネットのニュースやブログなどで知識を得る者が増えたこともあるでしょうが,それらは薄っぺらであるのがしばしば。私は4月に,プレジデント社とケンカ別れしましたが,この会社の紙の雑誌(書籍)とネットニュースの温度差があり過ぎることを,肌身で感じました。
http://tmaita77.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

 深み(厚み)のある本を読まない。お手軽なネットニュースのリード文だけみて,意見を形成してしまう。これでは,物事を深く考える習慣はつきますまい。かくいう私も,今は1日の大半をパソコンの画面に向かって過ごしており,学生時代に比して読書時間はうんと減りました。夜の8時以降は,ツイッターは止めにして本を読もうと考えているのですが,なかなかできない…。ヤバいなと思っています。

 これは全国の数値ですが,様相は地域によって違います。都道府県別にみると,全国的傾向とは裏腹に,子どもの読書実施率が上がった県もありますし,全国データよりも減少幅が大きい(残念な)県もあります。

 私は,小・中・高校生の読書実施率が,2011年と2016年でどう変わったかを,都道府県別に調べました。先ほどと同じく2006年と2016年の比較をしたいのですが,2006年の県別データを揃えるのはちょっと厄介なようですので,ここ5年間の変化を見る,ということでお許しください。

 下表は,結果の一覧です。黄色マークは47都道府県の最高値,青色は最低値です。赤字は,上位5位を意味します。


 子どもの読書実施率には,かなりの地域差があります。2016年のデータをみると,小学生は34.7%~54.7%,中学生は33.5%~59.6%,高校生は29.1%~56.7%,のレインヂです。

 小学生(10歳以上)をみると,秋田と福井は低いのですね。2016年調査に載っている,過去1年間の読書実施率は,秋田が35.4%,福井が34.7%で,ワースト2になっています。子どもの学力上位県ですが,これは意外。秋田では,「自宅学習ノート」という宿題に時間を取られているのではないか,という意見がありましたが,そうなのでしょうか。
https://twitter.com/jmx_shima/status/885977423795204096

 私が住んでいる神奈川は,読書県なのですね。赤字が多くついています。小・中・高とも,この5年間で減っているのが気になりますが。

 全国統計では,この5年間でどの段階の読書実施率も減っていますが,それとは逆の県もあります。小学校でいうと,13の県で率が上がっています。それが最も顕著なのは岡山で,44.2%から53.5%への増です。

 この県の取組をちょいと拝見すると,本を読むたびにシールを貼れる「読書手帳」を小中学生に配布するなど,ユニークな実践をしています。「読書手帳は,素敵な本との出会いを記録していくもの」。年少の児童は収集癖があるのですが,そういう心理を突いているなと思います。
http://www.pref.okayama.jp/site/16/462779.html

 上記の表は,各県の読書活動推進政策の成果を見て取る,参考資料としてご覧ください。最後に,県別の小学生の読書実施率をグラフで「見える化」しておきましょう。横軸に2011年,縦軸に2016年の実施率をとった座標上に,47都道府県を配置してみました。


 細い斜線は均等線で,この線より上にある県は,この5年間で小学生(10歳以上)の読書実施率が上がった県です。先ほどみた岡山は,このラインとの垂直距離が最も大きくなっています。

 しかるに,数としてはこの線よりも下,つまりこの5年間で読書実施率が下がった県が多くなっています。太い斜線(Y=X-10)より下の黄色ゾーンにあるのは,10ポイント以上下がってしまった県です。静岡は最も下落が大きく,61.6%から38.2%と,23.4ポイントの減なり。

 上記の図にすると,自県の現在の相対位置と,過去5年間の変化位置が分かりやすいかと存じます。

 ちなみに,各県の読書実施率は,県民所得や住民の階層構成といった,社会経済指標とは無相関です。これは,各県の政策によって,子どもの読書実施率を高めることができるという,希望的事実です。

 間もなく夏休みですが,子どもが本を取るように仕向けたいもの。宿題をちょっと少な目にしたっていいでしょう。8月3日に刊行される,拙著『データで見る・教育の論点』(晶文社)は,中高生にも読んでもらえたらなと思います。難しい理屈や数式を並べ立てた本ではありません。四則演算しか使ってませんので,中学校レベルの数学力で十分理解できる内容です。社会現象を数で可視化する。数学(算数)と社会の総合学習の手引きとしても使えます。どうぞ,お手に取ってください。

2017年7月13日木曜日

助教諭依存率

 人手不足がいわれて久しいですが,教員の世界までそれが及んできました。産休の代替などに,普通免許状を持つ教諭を採用できないため,助教諭を雇ってしのいでいる自治体が多いとのこと。
https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2017_0711.html

 助教諭とは,普通免許状を持つ教諭を採用できない場合に限り置くことができる職で,要件は臨時免許状を有していることです。この臨時免許状は,大学等で教職課程を終えていなくても,教育職員検定試験に合格することで得ることができます。任命権者の都道府県内でのみ,3年間有効です。

 上記の記事では,幼稚園の免許しかない女性に小学校の臨時免許状を付与して,音楽を教えさせている事例が紹介されています。全国をくまなく探せば,大学を出ていない人が教壇に立っているケースもあるかもしれません。

 しかるに戦後初期の頃は,助教諭への依存度は今よりずっと高いものでした。敗戦後の教育の民主改革により,新たな学校が雨後の竹の子のごとく次から次にできたのですが,校舎や教室だけでなく,教員も不足していました。

 その様は数字にはっきりと出ています。1950(昭和25)年の公立小学校の本務教員は30万4414人でしたが,そのうちの7万7548人が助教諭だったと記録されています(『学校基本調査』)。率にすると25.5%,全教員の4人に1人が助教諭だったわけです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 中学と高校はどうだったか,今現在はどうなのか。小・中・高の助教諭比率を,1950年と2016年で比べた表を作ってみました。


 1950年の助教諭比率は,小学校が25.5%,中学校が11.0%,高校が2.6%となっています。今とは比べものにならない高さです。

 これは全国の数値ですが,地域別にみるともっとスゴイ値が出てきます。1950年の公立小学校本務教員の助教諭比率を都道府県別に出し,高い順に並べると,以下のようです。


 マックスは埼玉の50.2%,この県では小学校教員の半分は助教諭であったと。スゴイですねえ。隣接している東京が9.8%にとどまっていたのとは,大違いです。

 群馬と茨城が40%台,岩手,青森,北海道,和歌山,秋田が30%台後半です。こういう県では,勉強ができる若者を捕まえては,じゃんじゃん臨時免許状を付与して,教壇に立たせていたのでしょう。その中には,20歳に満たない少年だっていました。当時の小学校教員の年齢ピラミッドをみると,10代の教員が1割を占めています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/02/blog-post_27.html

 今なら考えられないことですが,こういう時代もあったのですねえ。現在,地域に開かれた学校運営が志向されていますが,ある意味,昔の学校のほうが開放性が高かったといえるかもしれません。教員不足という外的な要因の故とはいえ,地域人材が教壇に立っていたのですから。

 ピンチはチャンス。教員不足になりつつある状況を逆手にとって,地域人材をどんどん学校に呼び込んでもいいのではないか。教員免許がない人でも,学があったり一芸に秀でたりしている人には,特別免許状や臨時免許状を授与することで,教壇に立たせることができます。教員の多忙化の解消にもなるでしょう。

 歴史を振り返れば,全教員の4人に1人,地域によっては半分が急ごしらえの助教諭という時代もあったわけです。まんざら突飛な提案でないことは,歴史が証明しているように思うのですが,いかがでしょうか。

2017年7月10日月曜日

県別のアラフォー正社員男女の平均年収

 8月3日に,新刊『データでみる・教育の論点』が晶文社より刊行されます。400ページほどの厚さで,価格は1800円(税別)。何とか千円台に収まってよかった。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364

 本ブログの一部書籍化ですが,一冊の本としての筋を通すべく,記事の選定・配列に気を配っています。「子ども」「家庭」「学校」「若者」「社会」の5つの章構成です。

 いろいろなグラフを盛り込んでますが,その一葉をお見せしましょう。第4章「若者」において,未婚化を扱った個所で載せたグラフです。正社員男女の平均年収の年齢曲線を,未婚者と既婚者で分けて描いたものなり。

 2012年の『就業構造基本調査』に載っている,年収の度数分布表から,階級値の考えを適用して算出した平均年収です。


 未婚者と既婚者の差が,男女で違うことに注目。男性は「未婚者<既婚者」ですが,女性はその逆です。女性の場合,結婚するといろいろ縛りが出ますので,正社員でもガシガシ稼ぐのが難しくなるのでしょう。

 しかるに,未婚者の折れ線(青色)をみると,男女の型がほぼ同じです。未婚者では,正社員男女の年収の差はほとんどありません。

 正社員であっても年収に男女差があるのは常識となってますが,それは未婚者と既婚者をひっくるめた話で,未婚者に限るとそうではないのですね。結婚がキャリアに及ぼす影響に,残酷なまでのジェンダー差があることが知られます。

 ちなみに都道府県別にみると,未婚の正社員の平均年収が「男性<女性」の県もあります。この県別のデータは,上記の新刊には載せていません。ここで紹介する,オリジナルデータです。

 働き盛りのアラフォー(35~44歳)の正規職員を取り出し,平均年収を県別・性別・配偶関係別に計算しました。チョー複雑な作業をしてみるみたいですが,今は「e-stat」で任意の変数のクロス統計表(↓)を自前で作れますので,何のことはないです。この機能を使いこなせるようになったら強い。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001058052&requestSender=search


 以下に掲げるのは,算出された平均年収の県別一覧表です。煩雑さを避けるため,小数以下を四捨五入した整数値で示しています。


 一番下の全国値をみると,ジェンダー差は未婚者より既婚者で大きくなっています。男性が女性の何倍かを示す倍率(a/b)は,未婚者は1.10倍ですが,既婚者は1.53倍になり。

 しかるに,様相は県によって多様です。未婚正社員の年収の性差が,かなり接近している県も多し。赤字は,ジェンダー倍率(男/女)が1.10未満の県です。結構あるじゃないですか。

 それを通り越して,未婚正社員の平均年収が,男性より女性で高い県もあります。黄色マークの奈良,高知,沖縄です。年収は「男性>女性」という常識を覆すケースが出てきました。未婚者同士で比べると,こういうケースもあるのですね。

 なお,上記の表は別の見方もできます。女性の年収を,未婚者と既婚者で比べることです。全国値をみると,未婚女性は380万円,既婚女性は354万円なり。同じアラフォー正社員女性ですが,結婚の損失でしょうか。東京などは,それがデカイっすねえ。

 しかし,未婚者と既婚者の年収があまり変わらない県もあります。てか,目を凝らすと,未婚女性より既婚女性のほうが稼いでいる県もあるじゃないですか。黄色マークの3県はどれもそうですし,秋田は未婚女性が288万円,既婚女性が310万円と,「未婚<既婚」の度合いが比較的大きくなっています。

 結婚による損失がない県もあるのですね。上記の表は,他にもいろいろな見方ができるかと存じます。全国値の傾向(常識)を覆すケースを発掘し,その詳細を明らかにする。そういう作業も求められるでしょう。何かファインディングスがありましたら,お教えいただければと存じます。

 冒頭の新刊には,この手のデータを多く盛り込んでいます。難解な理屈や数式を並べ立てた本ではありません。夏休みの読み物として,多くの方が手に取ってくださることを希望いたします。

2017年7月7日金曜日

20~44歳(25年間)の稼ぎ総額の都道府県比較

 私は7月12日生まれで,もうすぐ41歳になります。早いもので,伝統的な意味合いでいう生産年齢期間(20~59歳)の半分を過ぎたことになります。

 まあ私は,28歳まで学生をやり,その後も定職に就いたことがない風来坊ですが,何とかこの地点まで来れました。しかるに,これまで稼いだお金といったら微々たるもの。中学の同窓会に顔を出したら,間違いなく平均額を下回っているでしょう。

 私は今,40代前半なのですが,このステージまでの稼ぎ総額の平均って,どれくらいなんでしょう。前に,1961年生まれの男性を例に,年収の累積を跡付けたことがありますが,地域による違いも気になります。ずっと東京で働いた人と,私の郷里・鹿児島で働いた人では,かなり違うでしょうから。

 総務省『就業構造基本調査』から,正社員の平均年収を年齢別・都道府県別に出すことができます。県別の統計は,1992年調査からネットで見れるようです。この年に,入職して間もないピチピチの20代前半だったのは,1968~72年生まれ世代です。量的に多い団塊ジュニアの世代じゃないですか。この世代に焦点を当てましょう。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index2.htm#kekka

 この世代は,92年に20~24歳,97年に25~29歳,02年に30~34歳,07年に35~39歳,12年に40~44歳,となります。この5つの時点の平均年収をつなぎ合わせることで,20代前半から40代前半までの収入総額の見当をつけられるでしょう。ここでの分析のミソは,都道府県別のデータをはじき出すことです。

 性別と雇用形態の影響を除くため,男性の正規職員に対象を絞ります。下表は,5つの時点における平均年収を都道府県別に計算したものです。原資料に載っている年収の度数分布表から,階級値の考えを使って割り出しました。計算の仕方の詳細は,下記のリンク先記事でもご覧ください。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/10/blog-post_3.html


 同一世代の年収変化の追跡です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。

 やはり県によって年収は違い,加齢に伴い差が開いてきます。東京と沖縄を比べると,20代前半の時点では100万円ちょっとの差だったのが,脂ののった40代前半になると283万円もの差に拡大しています。

 ここでの関心は,20代から40代前半までの稼ぎ総額を出すことですが,上記の5時点(5年間)の合算を出すと,東京は2490万円となります。これを5倍すれば,20~44歳の25年間の年収総額の近似値になるでしょう。それによると,東京は1億2450万円,沖縄は7671万円なり。

 20~44歳までの稼ぎ総額の試算値ですが,この時点で1.6倍もの差がついています。59歳までの累積総額(生涯賃金)だと,差は凄まじいものになるでしょう。40代後半から50代にかけて,年収の地域差はもっと大きくなりますので。

 このやり方で,20~44歳までの稼ぎ総額を都道府県別に出し,ランキングにすると以下のようになります。


 当然ですが,都市部で高く,地方では低くなっています。

 稼ぎの絶対額をみると,東京は1億2450万円,鹿児島は9119万円ですか。うーん,郷里の鹿児島でも,私くらいの男性の正社員は,これまでに9000万円稼いできているのだなあ。私などは,その3分の1くらいかしら…。

 59歳までの現役時の稼ぎ総額は,単純に2倍して,東京が2億4900万円,鹿児島が1億8239万円,沖縄が1億5343万円ってとこでしょうか。全国値は2億1477万円です。退職金を加味すれば,巷でいわれている額に近いと思います。

 稼げる額は,地域によって違うものだなと感じます。全国各地の男性正社員(団塊ジュニア世代)の皆さん,自分の稼ぎ額の位置の見当をつけてみてください。

 ちなみに,同じ値を女性の正社員についても出せます。同じ正社員でも,女性の場合,出産・育児などいろいろ縛りが出ますので,20~44歳までの稼ぎ総額の性差は大きくなります。しかるに,その程度は県によって異なるでしょう。

 稼ぎの総額のジェンダー差が,県によってどう違うか。気が向いたら,次回,このテーマを取り上げようと思います。

2017年7月3日月曜日

褒められ経験と自尊心

 いよいよ暑くなってきましたが,いかがお過ごしでしょうか。横須賀では,久しぶりの晴れ空が広がっています。

 さて,日本教育新聞の連載『数字が語る・日本の教育』ですが,5月22日のコラム「褒められ経験」を,宮城県大和町の教育委員会広報(2017年7月号)に転載していただきました。公的機関の広報に載せていだけるのは,うれしく思います。
https://www.town.taiwa.miyagi.jp/soshiki/syogai/4281.html

 家で褒められる頻度と自尊心が,学年を上がるにつれてどんどん低下するというデータです(資料は,国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する意識調査』2014年度)。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/107/

 そこでは,2つの指標を切り離して観察しましたが,両者を関連づけてみると,さもありなんという傾向が出てきます。家で褒められる頻度と自尊心のクロス集計結果を,小学校4年生と高校2年生の断面で比べると面白い。

 家で褒められる頻度は,「よくある」と「時々ある」をまとめて「褒められる」群とし,その他を「褒められない」群としましょう。自尊心は,「自分が好き」という項目に「とても思う」ないしは「少し思う」と答えた者を「自分が好き」群,それ以外を「自分が好きでない」群と括ります。

 小4と高2の2時点について,この「2×2」のクロス集計結果を図示すると,以下のようになります。横幅で褒められ経験,縦幅で自尊心の群分けをしたモザイク図です。


 小4では「自分が好き」という児童(白色)のほうが多いですが,高2になると逆転します。「自分が好きでない」という児童生徒(青色)の領分が広がります。全体に占める比率は,小4では37.6%ですが,高2になると65.3%に増えます。

 これには褒められ経験の減少も寄与しているようで,褒められないという者の比重も,高2になると高くなります(横軸)。

 日本の子どもも自尊心は低く,発達段階を上がるにつれてそれが顕著になっていくのはよく知られていますが,褒められ経験の減少というのも,その原因になっているのではないか。

 小さいうちは,前にできなかったことができるようになり,褒められることが多いのですが,大きくなり自我が芽生えると,親の意向と衝突する。また,成績の些細な相対水準で小言を言われることも多くなるでしょう。

 いつしか叱れることが当たり前になり,たまに褒められると戸惑う子どもも出てきます。これは,自尊心が破壊されていることの証拠で,自信をもって社会に参入できず,後々になって,ニートや引きこもりといった社会不適応にもつながりやすくなります(これらがよくないと断言はしませんが)。

 自分に対する好意的な評価,すなわち自尊心は,積極的に外部に出て行って,いろいろな経験を積もうという意欲の基盤です。生きていく上で欠かせない心性ですが,褒めることで,それを伸ばすことはできます。

 「叱るより褒めよ,叱る前に褒めよ」。多くの育児書に書いてあることですが,これは正しいのです。不自然になってはいけませんが,お子さんを褒めましょう。難しいことではなく,どの親御さんにもできることです。

 ちなみに上記のモザイク図の模様は,家庭環境によっても違っています。貧困層と富裕層の子どもの図を左右に並べると,これが結構違っている。家庭環境とリンクした,自尊心格差という現象にも注意を払わねばなりません。この点については,今月20日頃公開の日経デュアル記事で触れることにいたします。お楽しみに。

 急に暑くなってきました。もう,昼食後に歩いてコミュニティセンターに行くことはできません。夏の間は,図書館の本はファミリーマート荒崎入口店に取り寄せ,涼しくなった夕方に自転車で取りに行くことにします。

 みなさまも,熱中症などにはご注意を。

2017年6月30日金曜日

2017年6月の教員不祥事報道

 天気が良くない日が続きますが,6月も今日でおしまいです。恒例の教員不祥事報道の整理ですが,今月私がキャッチした事案は52件です。いつもより多めです。

 赤字は珍事案。LGBTへの差別発言(埼玉,小,年齢非公開)ですが,何歳くらいの教師の発言でしょうか。最近の教員採用試験では,性的少数者に対する配慮について述べた文科省の通知がよく出ますが,昔に入職した教員は,こういう児童生徒に関する知識が不足しているのかもしれません。

 カビが生えたパンを食べさせた事案。私の頃は,落としたパンや唐揚げも「大丈夫だ」と無理に食わされましたが,今考えると恐ろしい。「ぶち殺す」とかいう発言も,私なんかの頃は,教師の口からポンポン飛び出ていました。

 どういう行為が咎められるかは,時代によって違うものです。幅広い世代に,「私が出会ったトンデモ先生」という体験を寄せてもらったら面白いだろうなと思います。今はネットがあるので,こういう体験を募るのも難しくはないと思うのですが…。この手の企画を考える出版社とか,ないのかしら。

 興味本位のゴシップ趣味だけでなく,教師の教育行為の社会的規定性という,教育社会学的関心にも沿うと思います。

 明日から7月。夏もいよいよ本場です。今は梅雨ですが,あと少ししたら,晴れやかな夏空が広がります。横須賀の夏,楽しみです。一足先に,ブログの背景だけでも晴れ模様にしましょう。

<2017年6月の教員不祥事報道>
生徒に体罰、事情説明中の母にもけがさせる 長野の教諭
 (6/1,朝日,長野,中,男,60)
児童買春罪で略式命令 教諭免職(6/1,NHK,北海道,男,53)
酒気帯び容疑で中学の男性教諭逮捕(6/2,産経,兵庫,中,男,28)
体罰の男性教諭を減給処分(鳥取県)(6/2,日テレ,鳥取,高,男,38)
元教え子に淫行容疑 私立中教諭の男逮捕(6/4,産経,愛知,中,男,47)
女子生徒の着替え盗撮容疑、埼玉の中学校教諭逮捕
 (6/5,TBS,埼玉,中,男,45)
児童転倒させた教諭を減給処分(6/5,サンスポ,大阪,小,男,33)
準強制わいせつ:教え子に抱きつく、中学教諭逮捕
 (6/7,毎日,和歌山,中,男,50代)
小学校で同僚女性の着替えを盗撮疑い(6/7,サンスポ,茨城,小,男,51)
県立高校 男性教諭 学校の灯油盗む(青森県)
 (6/7,日テレ,青森,高,男,52)
中学生に金品、性行為しようとした教諭を停職処分
 (6/8,朝日,愛知,高,男,27)
男児たたいた飲酒教諭 停職3月(6/8,NHK,大坂,小,男,38)
女子高生にみだらな行為 岡山市の中学校講師を逮捕
 (6/8,山陽新聞,岡山,中,男,29)
小学校教諭、薬物無許可輸入の疑い(6/9,朝日,埼玉,小,男,47)
無免許運転で逮捕 24歳男性教諭を懲戒免職処分
 (6/9,テレ玉,埼玉,小,男,24)
体罰でさいたま市小学教諭減給処分 打撲のけが負わす
 (6/10,産経,埼玉,小,男,28)
三ノ宮駅で盗撮容疑 洲本の小学校教諭逮捕 
 (6/12,神戸新聞,兵庫,小,男,27)
コンビニで下半身露出 公然わいせつ容疑で県立高校講師を逮捕
 (6/12,岩手放送,岩手,高,男,29)
17歳少女のショートパンツを盗撮 容疑の小学校教諭を逮捕
 (6/12,産経,富山,小,男,28)
下関・強制わいせつ容疑で臨時教諭の男逮捕(6/12,TYS,山口,特,男,24)
女性の着替えをスマホで盗撮した疑い 中学教諭を逮捕
 (6/14,朝日,三重,中,男,34)
勤務先の幼稚園に放火未遂の疑い 教諭の女を逮捕
 (6/15,朝日,大阪,幼,女,31)
部下女性へ繰り返しキス 成田市立小教頭を停職
 (6/15,千葉日報,千葉,小,男,48)
県教委、体罰した甲府工高教諭を処分(6/15,山梨新聞,山梨,高,男,43)
酒気帯び運転疑い南信の高校教諭処分へ(長野県)
 (6/15,日テレ,長野,高,男,47)
外国人女性に暴行、バッグ奪った疑い 都立高教諭を逮捕
 (6/16,朝日,東京,高,男,52)
小1女性担任講師が児童にカビ生えたパン食べさせる
  (6/16,日刊スポーツ,福島,小,女,20代)
図書室蔵書に扇情的ライトノベル 大阪の市立中学校、女性教諭が公費で注文
 (6/16,産経,大阪,中,女)
男性はねられ重体 運転の小学校長を逮捕(6/18,神戸新聞,兵庫,小,男,57)
授業中、男児にナイフ出し注意 20代小学校教諭
 (6/18,神戸新聞,兵庫,小,男,20代)
小学校で児童下着撮影疑い、30歳教諭を逮捕
 (6/19,日刊スポーツ,富山,小,男,30代)
「誰だオカマは」 授業でLGBT差別発言か(6/20,産経,埼玉,小,男)
下着窃盗で逮捕の教諭免職 奈良、万引の栄養士も
 (6/20,京都新聞,奈良,特,男,44)
生徒にアダルトグッズ贈った疑い 元講師「卒業記念に」
 (6/20,朝日,中,男,32)
女性教諭が児童に「ぶち殺す」 以前にも「ばか」発言
 (6/21,スポニチ,愛媛,小,女)
校長が没収後も別カメラで盗撮 容疑の中学教諭再逮捕
 (6/21,産経,埼玉,中,男,45)
脅迫容疑で逮捕の教諭 停職処分(6/22,NHK,北海道,男,54)
ネットで女性中傷、高校講師を逮捕(6/22,福井新聞,福井,高,男,42)
小学校講師逮捕 盗撮試みたか(6/22,NHK,奈良,小,男,23)
女子生徒とみだらな行為=高校教諭を懲戒免職
 (6/23,時事通信,大阪,高,男,37)
架空領収書で生徒会費など51万円着服 教諭を懲戒免職
 (6/24,朝日,大坂,高,男,63)
小学校教諭を逮捕、女児に体液かけた疑い
 (6/24,日刊スポーツ,神奈川,小,男,22)
体罰教諭が4度目処分 同僚の歯折った教頭も減給
 (6/27,神戸新聞,兵庫,体罰:高男48,傷害:特男59)
淫行容疑で小学校教諭逮捕、女子中学生に(6/27,産経,広島,小,男,26)
女子高生に現金、児童買春の疑い 茨城の高校教諭逮捕
 (6/28,朝日,茨城,高,男,51)
小学教諭、女性の胸触った疑い 「酒飲み記憶ない」
 (6/28,朝日,東京,小,男,29)
懲戒処分:生徒の頭たたいた教諭を減給6カ月(6/28,毎日,兵庫,高,男,48)
女子生徒の体を触る 和歌山市の中学生教諭を再逮捕
 (6/29,テレビ和歌山,和歌山,中,男,50代)
教え子10人前後わいせつ被害か 京都、小学講師逮捕
 (6/29,京都新聞,京都,小,男)
懲戒処分:飲酒暴行などで教諭を停職処分(6/30,毎日,奈良,中,男,49)
給付金未払いで養護教諭処分(6/30,神奈川新聞,神奈川,特,女,52)
小学校の校長、児童3人に体罰 日田市(6/30,日本テレビ,大分,小,男,56)

2017年6月27日火曜日

人生のお悩み一望図(2016年)

 2016年の厚労省『国民生活基礎調査』のデータが公表されました。毎年実施されている調査ですが,2016年調査は3年に1度の大調査で,国民の健康状態についても調べられています。

 年齢層別の健康意識や喫煙・飲酒率など,面白いデータをひねり出せるのですが,私がまず興味を持つのは,悩み・ストレスの原因です。悩みやストレスがあると答えた人に対し,その原因を複数回答で問うています。

 収入・家計,病気や介護,育児,家事,自分の仕事…。選択肢はいろいろありますが,寄せられた回答の内訳を年齢層別にグラフにしてみると,人生の各時期の「お悩み一望図」が出来上がります。

 『国民生活基礎調査』の大調査のデータが公表されたら,最初にこの統計図を作ることにしています。本ブログを長くご覧いただいている方はお分かりでしょうが,2010年,2013年のものは既に作りました。では,最新の2016年のグラフを作ってみましょう。

 グラフの元データは,下記サイトの表13から採取しています。紙の報告書には載っていない,閲覧公表用の内部統計です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001184847


 私としては,すっかり見慣れた図柄ですが,初めての方は「おお」と思われたでしょう。人生の各時期の悩みが,実によく表れています。

 10代は受験,20~40代は仕事や子育て,高齢期は病気や介護の比重が高くなると。収入や家計の悩みは,どの時期もついて回るようです。

 言わずもがな,男女で分けて同じ図を作ると模様はかなり違っています。20~40代の女性にあっては,赤枠で囲った3つの悩みの比重(育児,家事,子どもの教育)の比重がうんと大きくなります。男性は,収入や仕事のウェイトがさらに大きくなると。

 こうしたジェンダーの差もみておきましょう。悩み・ストレスの原因として,「家事」ないしは「育児」を選んだ男女の人数を比べてみます。下図は,20~50代の年齢層別の折れ線グラフです。


 男性の曲線は寝そべっていますが,女性はアラフォーの層に鋭利な山がある型です。家事・育児の負担が女性に偏していることの表れに他なりません。北欧の諸国でみたら,おそらくこういうグラフにはならないでしょう。

 毎度言いますけど,統計というのは本当に正直です。まあ,今回お見せしたデータは,誰もが感じている当たり前のことですが,それをデータで可視化する(地味な)仕事も意義あることと思っています。それが,私のライフワークです。

 8月上旬刊行予定の新刊は,その一部を選りすぐって編集したものです。400ページほどの厚みのある本で,タイトル(仮)は『データでみる・教育の論点』。夏休み中に,教育関係者の方々に読んでいただければと思います。どうぞ,お楽しみに。