2017年1月1日日曜日

都道府県別の保育士の時間給

 年が明けました。お正月ですが,私の場合,過ごし方は普段と何ら変わりません。することがないので,ブログでも書きましょう。

 社会的需要が著しく高まっている保育士ですが,この職業が慢性の人手不足に陥っていることの最大の原因は,待遇がよくないこと,ズバリ言えば給与が激安であることはすっかり知られています。

 保育士の給与についてはこのブログで何度も紹介し,都道府県別の年収比較をしたこともあります。今回はもう一歩踏み込み,労働時間を考慮して,保育士の時間給を計算してみようと思います。一般に労働条件は,給与と労働時間の2要素から測られますが,双方を考慮した尺度として,時間給に注目してみようと考えました。

 依拠する資料は,2015年の厚労省『賃金構造基本統計』です。この資料から,以下のA~Dの値を職業別に知ることができます。10人以上の事業所に勤める,短時間労働者を除く一般労働者のデータです。数値は,保育士のものです。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

 A 残業代等込みの月収(2015年6月) ・・・ 21.92万円
 B 年間賞与額(2014年) ・・・ 60.30万円
 C 月間の所定内労働時間(2015年6月) ・・・ 171時間
 D 月間の超過労働時間(2015年6月) ・・・ 4時間

 これらを使って,保育士の年収と年間労働時間を割り出すと,次のようになります。

 年収 = 12A+B = (12×21.92)+60.30 = 323.34万円
 年間労働時間 = 12×(C+D) = 12×(171+4) = 2,100時間

 よって時間給は,年収を年間労働時間で除して,1,540円となる次第です。短時間労働者を除く,一般労働者の保育士の時給は1,540円なり。同じやり方で,全職業の一般労働者の時間給を計算すると,2,303円となります。予想通りですが,フツーの職業よりもかなり低いですね。

 しかるに,様相は地域によって違っています。私は,上記のデータを都道府県別に収集し,47都道府県の保育士と全職業の時間給を計算してみました。計算に使った分子(年収)と分母(年間労働時間)にも興味を持たれると思うので,これらの値も掲載した一覧表を掲げます。


 黄色マークは全県の最高値,青色マークは最低値です。保育士の時給をみると,最高は愛知の1879円,最低は鳥取の954円なり。鳥取の値には驚愕しますが,この県は調査対象のサンプルが著しく少なくなっていますので,値に歪みが出ていると思われます。参考程度にとどめてください。

 保育士の時給は,どの県でも全職業より低くなっています。保育士には若手や女性が多いこともありますが,都市部では差が大きいですね。

 東京をみると,保育士の年間労働時間は2088時間と,全労働者(2052時間)よりも働いているにもかかわらず,年収はたった352.9万円。それが時給の違いにもろに反映されています。東京の保育士の時給は1690円で,全体(3039円)の半分ほどです。

 保育士の時給が全職業に比してどうかという,相対倍率も出してみましょう。下表は,「保育士/全職業」の倍率が高い順に都道府県を並べたものです。


 どの県でも,保育士の時給は全体に比して低いのですが,その程度には幅があります。上位5位(赤字)は,全職業の8割には達しています。

 一方,対極の下位の県は悲惨で,大都市の東京の相対倍率は0.556となっています。保育士の時給は,全職業の半分ほどということです。保育士が抱いている相対的はく奪感も大きいことでしょう。

 まあ,年収で出した相対倍率とほぼ同じ結果ではありますが,今回はもう一歩深めて,労働時間を考慮した時間給で同じ分析をしてみました。むろん,他の職業でも可能です。たとえば,教員とかはどうでしょう。教員は,普通の職業に比して高給ですが,労働時間を加味した時間給では,別の面が出てくるかもしれません。面白い結果が出ましたら,ご報告します。

 では,よいお正月をお過ごしください。