2017年5月22日月曜日

あなたの世帯の貯蓄額はどの辺りか?

 先行き不透明な時代にあるためか,せっせと貯蓄に励む世帯が増えていると聞きます。

 20歳そこそこの学生に「俺らの頃は,年金もらえるんでしょうか?」と真顔で訊かれ,「今からそんなこと考えるな」とたしなめたことがありますが,社会人になった彼も,お給料の一部は貯金しているのでしょう。

 私はというと,収入は少ないですが,貯蓄は結構あるほうかなと思います。意識して貯め込んでいるわけではないですが,濫費をしないので自ずと貯まる。洋服なんてここ5年くらい買ってませんし,レジャーにしても週に1回(平日),電車に乗って近場に繰り出すくらいです。人付き合いをしないので,交際費もゼロ。

 これは私の主観ですが,同年代の貯蓄額分布の中で自分はどの辺りかを知りたくなりました。2013年の『国民生活基礎調査』のデータをもとに,世帯主が40代の世帯の貯蓄額分布をとると以下のようになります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html


 貯蓄額が分かる1393世帯の分布ですが,貯蓄ゼロの世帯が最も多くなっています。多くが単身世帯でしょう。その次は,500~700万円の階級となっています。

 なるほど,自分の位置が分かりました。他の年代はどうかも知りたいですが,上記のような細かい階級の分布を逐一とるのは煩雑です。そこで,簡易な四分位値を求めることにしましょう。

 全体を4つに等分する値で,Q1(25%値=75位),Q2(50%値=50位),Q4(75%値=25位)の3つです。Q2は,いわゆる中央値に相当します。

 右端の累積相対度数をみると,Q1は50~100万円,Q2は300~400万円,Q3は700~1000万円の階級に含まれることが分かります。按分比例の考えを使って,それぞれに該当する値を見積もってみましょう。

 Q1 (25.0-22.8)/(27.8-22.8)=0.438
    50.0万円+(50.0万円×0.438)=71.9万円
 Q2 (50.0-45.5)/(53.1-45.5)=0.590
    300.0万円+(100.0万円×0.590)=359.0万円
 Q3 (75.0-70.1)/(78.0-70.1)=0.622
    700.0万円+(300.0万円×0.622)=886.5万円

 世帯主が40代の世帯を貯蓄額が高いほうから並べたとき,Q3(25位)は886.5万円,Q2(50位=真ん中)は359.0万円,Q1(75位)は71.9万円,となるようです。

 貯蓄が886.5万円以上ある世帯は上位25%に入っていて,71.9万円に満たない世帯は下位25%未満であると。

 この四分位値は,個々の世帯の貯蓄額がどの辺りかを判別する目安になります。世帯主の年齢層別に,Q1~Q3の値を出してみました。また,男女の単身世帯だけを取り出した場合,どういう値になるかも計算してみました。下表は,その一覧です。


 どうでしょう。私は40代の男性単身世帯(赤色)ですが,Q1が19.6万円,Q2が277.3万円,Q3が971.9万円となっています。Q2とQ3の落差が大きいですねえ。一部の世帯がガッツリ貯め込んでいるってことです。私は,この2点の間です。

 世帯主が60代の総世帯でみると,Q2が667.2万円,Q3が2067.4万円です。退職して間もない年代で,退職金がガッポリ口座に入っているためでしょうが,くれぐれも振り込め詐欺などにはご注意を。

 上記の表は,あなたの世帯の貯蓄額が全体のどの辺りかを判別するのに使えます。その気になれば5分位値,10分位値なども出せますが,今回はラフな四分位値ということで…。

 個人の年収についても,こういう診断表を作るといいかもしれませんね。按分比をとる階級が層によって違うので計算に手間がかかるのですが,調査統計法の作業課題として,学生さんに分担させるのもいいのでは。これぞ,アクティブ・ラーニング! 高校でも,比を教える単元の題材としてもってこいでしょう。