2017年8月2日水曜日

治安と未婚単身女性比の相関

 ソロ社会研究者の荒川和久氏が,興味深いデータをツイッターで発信されています。
https://twitter.com/wildriverpeace/status/891639494104842241

 40代の単身未婚者数の男女差を都内23区別に出したところ,男性は北東の下町ゾーンが多いのに対し,女性は世田谷や目黒など,家賃が高いエリアで多いのだそうです。これをもって,「男女未婚者の貧富の差」が出ていると指摘されています。

 なるほど。男性は未婚者ほど年収が低いが,女性はその逆であることは,私も繰り返しデータを提示してきました。確かに,「男女未婚者の貧富の差」の表れともいえましょう。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/09/post-3882.php

 荒川氏は,2015年の『国勢調査』からデータを採取されたそうです。私も同じ資料にあたって,データを揃えてみました。年齢は一段下がって,35~44歳のアラフォー年代にすることにしましょう。

 以下に掲げるのは,都内23区別の35~44歳の未婚単身者数です。正確にいうと,単独世帯の世帯主の数です。下記リンク先の表6から得ることができます。ピンク色のDBボタンを使って,「地域×性別×年齢×配偶関係×世帯類型」のクロス表を作るとよいでしょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001077451&cycleCode=0&requestSender=search


 男性が多いか女性が多いかは,区によって違っています。右端に「女性/男性」の倍率を出しましたが,最も高いのは目黒区で1.39倍です。この区のアラフォー未婚単身者は,女性のほうがかなり多くなっています。

 その逆は足立区で,同じ倍率は0.49倍です。男性が女性の倍以上となっています(男性5739人,女性2812人)。

 赤字は,この倍率が1.0を超える区,つまり女性のほうが多い区を指します。中央区,港区,文京区,目黒区,世田谷区,渋谷区,そして杉並区ですか。なるほど。男女の対比でみる限り,荒川氏の言われるように,家賃(所得水準)が高い区で,未婚の単身女性は多いように見受けられます。

 反対の特性を持つ城東エリア(足立,葛飾,江戸川)では,この倍率は0.6に達しません。アラフォーの未婚単身者は,女性より男性がうんと多くなっています。

 以上は荒川氏のデータの「再現」ですが,上記のジェンダー倍率(未婚単身女性の相対量)は,地域の治安とも相関しているでしょう。独り身の女性の場合,治安を考慮して居住地を選択するといいますし。

 私は前に,都内23区別の犯罪発生率を計算したことがあります。2015年中の刑法犯認知件数を,各区の昼間人口で除した値です。都内23区は通勤・通学の移動が激しいので,定住人口に流入人口を加えた昼間人口をベースにするほうがよいでしょう。計算方法の詳細は,下記リンク先の記事をお読みください。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/05/23.html

 アラフォーの未婚単身者の「女性/男性」倍率と,2015年の犯罪発生率の相関をとると,下図のようになります。


 犯罪発生率と「女性/男性」倍率の間には,マイナスの相関関係が観察されます。相関係数は-0.6164であり,1%水準で有意です。

 犯罪発生率が低い区は,未婚の単身女性が多く住まう傾向があると。予想はしていましたが,治安との相関関係は出てくるものですね。完全にきれいな傾向ではないのですので,オートロック物件の比重など,他にもファクターはあるでしょうけど。

 都内23区の統計をいじってみると,いろいろな側面の地域分化(regional segregation)を浮かび上がらせることができます。