2017年9月15日金曜日

夫の家事・育児分担率の変化(2011~16年)

 本日,2016年の『社会生活基本調査』の生活時間統計が公表されました。1日あたりの各種行動の平均時間が分かるデータです。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.htm

 このデータが公表されたら,真っ先にやろうと思っていた作業があります。共働き夫婦の夫の家事・育児分担率がどう変わったかです。このデータは何度も出してきましたが,ここ数年の変化をみてみましょう。

 『社会生活基本調査』は5年間隔ですので,2011年のデータとの比較を行います。この年以降,女性の社会進出の促進と並行して,男性の家庭進出(家事・育児参画)を促す取り組みもなされてきました。この問題に対し,最も熱心に情報を発信している『日経DUAL』が創刊されたのは,2013年のことです。さて,成果が見られるかどうか。
http://dual.nikkei.co.jp/

 観察対象は,6歳未満の乳幼児がいる共働き夫婦です。手のかかる幼子がいる夫婦ですが,夫婦の家事・育児時間の総計のうち,夫がしている分は何%を占めるか。これが,家事・育児分担率の概念です。

 では,原資料から採取したデータをご覧いただきましょう。各曜日の1日あたりの平均時間です。


 平日と土日をひっくるめた週全体の数値をみると,夫の家事・育児の平均時間(1日あたり)は,2011年が54分,2016年が67分です。13分増えています。妻のほうは,329分から327分へと微減です。

 その結果,夫の分担率は14.1%から17.0%にちょっと上がっています。家事・育児の8割以上を妻がやっている状況は変わりませんが,よい方向に向かってはいるようです。曜日ごとにみると,土曜日の増加幅が大きくなっています(21.0%→25.1%)。

 これは全国のデータですが,続いて,47都道府県別のデータもみてみましょう。結論を先取りすると,この5年間の変化の様相は県によって多様です。全国トレンドより増加傾向が顕著な県もあれば,悲しいかな,夫の分担率が下がってしまっている県もあります。

 週全体でみた1日あたりの平均時間をもとに,同じ指標を都道府県別に計算してみました。計算式は,夫/(夫+妻)です。全国値は上表にあるように,2011年が14.1%,2016年が17.0%ですが,県ごとにみると大きな地域差があります。


 黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。2016年でみると,東京の25.2%から福岡の9.6%までのレインヂがあります。東京の夫の分担率は4分の1ですが,福岡は10分の1にも満たないと。

 この5年間の変化をみると,東京は16.7%から25.2%と,かなりアップしていますね。全国値でみた伸び幅を上回っています。逆に陥落が大きいのは,2011年にトップであった島根です。22.4%から13.2%に落ちています。

 はて,この分岐は何によるのか。夫の仕事時間の変化でしょうか。同じ属性の男性(6歳未満の子がいる共働き夫婦の夫)の平日1日あたりの平均仕事時間をみると,東京は2011年の573分から,2016年の529分へとかなり減っています。逆に島根は,488分から534分に増えています。なるほど,合点がいきますね。

 ただこれは両端で,仕事時間の増加倍率と,家事・育児分担率のそれ(上表の右端)との間には,有意な相関関係はありません。「男性が家事をしない要因は,仕事時間だけではない」と言いますが,他にもファクターはあるでしょう。

 良好なアチーブメント?を出している県は赤字にしてみました。2016年の数値が全国値(17.0%)を上回っており,かつ,この5年間の増加倍率が1.5を超える県です。この基準でノミネートされるのは,東京,兵庫,奈良,山口,宮崎の5都県なり。

 これらの都県では,この5年間にどういうことをやったのか。5都県の男女共同参画関係のHPに当たって,政策の一覧表を作るのもいいですね。その作業は,他日を期すことにいたしましょう。

 ひとまず,客観的な数値の提示まで。上記の47都道府県の変化表をみて,「わが県の変化は,こういうことではないか」という意見を頂戴できれば幸いです。ここで紹介させていただこうと思います。