2017年9月2日土曜日

同一条件の夫婦の家事・育児分担率

 夫婦の家事・育児分担率については,何度もデータを出してきました。共働き夫婦でみても,夫の家事・育児分担率はきわめて低い。一貫したファインディングは,コレです。

 しかるに共働きといっても,夫と妻では働いている時間が違うだろう,雇用(勤務)形態が違うだろう,という疑問が度々寄せられました。

 この疑問に答えられず歯がゆい思いでいたのですが,『社会生活基本調査』(2011年)の公表統計を丹念に見たら,夫婦の働き方を揃えることができるデータが出ているではありませんか。下記サイトの表20~22です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001040666&cycode=0

 これらを使うことで,同じくらい働いている夫婦,双方とも正社員(フルタイム就業)の夫婦に限定して,家事・育児分担率を計算することができます。はて,このように就業の条件を揃えた場合,夫婦の家事・育児分担率はどうなるか。ちょっとはマシな数値が出てくるでしょうか。

 1)就業時間,2)雇用形態,3)勤務形態,の3つを統制して,夫の家事・育児分担率を出してみましょう。夫婦の平均時間の合算に占める,夫の割合(%)です。就学前の乳幼児がいる夫婦に注目します。

 下の表は,平日・土曜・日曜の平均時間から算出した,夫の家事・育児分担率の一覧表です。


 双方とも週35時間以上働いている夫婦の平日でみると,夫が43分,妻が284分。就業時間を揃えても,違うものですねえ。夫の分担率は,43/(43+284)=13.1%となります。およそ8分の1です。

 まあ,「夫有業+妻無業(主婦)」の伝統的夫婦の5.2%に比したら高いですが,大きな差とはいえません。雇用形態や勤務形態を統制しても,正社員(フルタイム)夫婦の数値は,伝統的夫婦のそれと大差なしです。

 むろん,条件をもっと統制する余地はあるでしょうが,基本的な就業条件を揃えても,夫の家事・育児分担率は低い,という事実は知っておくべきでしょう。

 なぜ夫は家事(育児)をしないか。仕事時間と当人の意識のクロスから導き出した,「家事をしない夫の4類型」を,先日公表の日経デュアル記事で提示しました。仕事時間を短くすれば,夫は家事をするとは限らない。こういう問題提起です。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=11011

 今月の半ばに,2016年の『社会生活基本調査』の生活時間統計が公表されます。上記の同じデータを作ったら,どういう数値になっているでしょうか。事態の改善が見られるでしょうか。ここ数年の「ワーク・ライフ・バランス」施策の評価にもなります。データの公表を,期して待つことにいたしましょう。