2018年2月28日水曜日

アラフォー男性の年収中央値の変化

 前回は,アラフォー男性の貧困化が全国的に進んでいることを明らかにしました。1992年と2012年の年収比較によってです。

 しかるにそこで指標としたのは,平均年収です。平均値(average)はデータの傾向を端的に表す代表値ですが,分布の中の極端な値に引きずられる難点があります。年収の平均値は,メチャクチャ稼いでいる一部のスタープレーヤーに釣り上げられてしまうと。

 そこで今回は補足の作業として,中央値を出してみようと思います。中央値(Median)とは,データを高い順に並べた時,ちょうど真ん中にくる値です。計算に手間がかかりますが,年収分布を集約した代表値としては,平均値よりもこちらのほうがベターでしょう。

 度数分布表から中央値を出すやり方を説明します。下表は,2012年の『就業構造基本調査』から採取した,35~44歳男性有業者の年収分布です。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200532&result_page=1


 年収が分かるのは871万5200人。全体を100とした相対度数(%)にすると,中ほどが厚いノーマル分布であることが知られます。最頻階級(Mode)は300万円台です。むーん,近年では働き盛りの男性でも,最も多いのは年収300万円台なのですね。

 ここで明らかにしたいのは,ちょうど真ん中の値(中央値)ですが,右端の累積相対度数から,年収400万円台の階級に含まれることが分かります。中央値は累積相対度数が50ジャストの値ですが,それは何万円になるか。按分比例を使って推し量ります。以下の2ステップです。

 按分比 = (50.0-41.9)/(60.1-41.9) = 0.4444
 中央値 = 400.0 +(100.0 × 0.4444) = 444.4万円

 2012年のアラフォー男性の年収中央値は444.4万円と推測されます。前回出した平均値(479.6万円)よりだいぶ低くなっています。一部のスタープレーヤーの影響が除かれた結果です。

 20年前の1992年は497.0万円でした。この20年間で,アラフォー男性の年収中央値は50万円以上ダウンしたことになります。

 同じやり方で,47都道府県の35~44歳男性有業者の年収中央値を都道府県別に計算しました。平均値は計算式が一律なので一発なんですが,中央値の場合,それが含まれる階級うが県によって異なるので,結構手間がかかります…。

 下表は,1992年と2012年の年収中央値を高い順に配列したものです。


 500万円を超える県が減り,代わって400万円に満たない県が増えています。2012年では,後者の県が20にもなります。

 子どもの教育費がかさみ,介護保険などの負担も上乗せされるステージですが,年収400万円に満たないというのは,正直キツイでしょう。奨学金の返済どころではありません。ちなみに,上表のデータは税込みの額ですので,各種保険を差し引いた手取りはもっと少なくなります。

 この20年間で年収中央値が80万円以上減っているのは,埼玉,千葉,神奈川,京都,大阪,奈良です。奈良では,100万円も下がっています(547.2万円→447.0万円)。

 これらは子育て世帯の専業主婦率が高い県ですが,男性の年収がこうも下がっているとあっては,これまでのモデルも維持できなくなるでしょう。今日の朝日新聞によると,大阪市にいて,保育園落選者が「働かないと破綻します」と悲鳴を上げているそうです。
https://www.asahi.com/articles/ASL2H5JTDL2HPTIL01F.html

 平均値ではなく中央値でみると,アラフォー男性の貧困化がよりクリアーに見えてきます。いろいろな角度から眺めてみるものですね。

 今年の夏に公表される,2017年の『就業構造基本調査』のデータではどうなっているか。2017年といえば,私の世代(76年生まれ)が41歳の年です。世紀の変わり目の氷河期に大学を出た,ロスジェネ世代の悲惨さがますます露呈していると思われます。

 最近の好況で労働者の賃金はアップしているといいますが,正規のキャリアを積めていないロスジェネは蚊帳の外という指摘もありますし。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26847110T10C18A2EE8000/

 それはさておき,今回のデータでもって言いたいことは,前回と同じです。年功賃金を前提としたシステム(教育費の親負担,ローン奨学金…)は,もう成り立たなくなりつつある。こういうことです。